2016年4月7日 更新
空き家トラブルが社会問題として注目されるようになった2010年頃から、全国の市町村で、空き家の所有者に適切な管理をうながす「空き家条例」が制定されるようになりました。
けれども空き家は本来、個人の所有物で、所有者がきちんと責任を持って管理するものという考えから行政の取り組みは消極的になりやすく、さらに空き家トラブルに詳しい職員がいないなどの理由で対応は遅れがちになるといった問題も指摘されています。
そこで、各市町村の空き家対策を推し進めるために2015年5月に施行されたのが「空き家対策特別措置法」という法律です。
この法律では、空き家を「1年にわたって使用されていない建物」と定義し、主に次のようなことを定めています。
市町村は空き家の調査を行い、実態を把握する 市町村は対策のレベルに応じて「特定空き家」に指定する 市町村は「特定空き家」に対して適切な管理の指示をする
では、それぞれの詳しい内容を見ていきましょう。
- 市町村は空き家の調査を行い、実態を把握する
前述のように、これまで空き家に対する行政の取り組みは消極的なものでしたが、空き家トラブルが近隣住民の生活に影響を及ぼす可能性があることから、行政側も空き家の実態を把握する必要が生じてきました。
「空き家対策特別措置法」では、行政が空き家調査のために所有者の許可なく敷地に立ち入ることや、所有者を確認する目的で固定資産税情報などの個人情報を利用してもよいと定めています。
- 市町村は対策のレベルに応じて「特定空き家」に指定する
「空き家対策特別措置法」では、空き家の管理はすべて所有者が責任を持って行うものと定めています。
けれども所有者の管理が行きわたらず、空き家調査によって「対策が必要」と判断された空き家があれば、市町村は所有者に対して適切な管理をうながすための情報の提供や指示などを行います。
さらに空き家の中でも、特に劣化が激しく、近隣住民の生活に影響が出るおそれのある(または、既に影響が出ている)空き家の場合、市町村はその空き家を「特定空き家」に指定して、早急に対策をとります。
下記の1)~4)のいずれかに該当する状態の空き家
- そのまま放置すると倒壊など著しい危険が及ぶおそれがある
- 衛生環境が著しく悪化して有害となるおそれがある
- 適切な管理が行われていないため、著しく景観を損なっている
- 周辺の生活環境を守るために、そのまま放置できない
- 市町村は「特定空き家」に対して適切な管理の指示をする
「特定空き家」に指定されたからといって、いきなり建物の撤去などの強制処分が行われる訳ではありません。「空き家対策特別措置法」では、市町村が「助言」「指導」「勧告」「命令」の4段階に沿って行政指示や行政処分を行い、空き家の適切な管理をうながすと定めています。
最初に、手紙などで「木の枝が伸び放題になっているので伐採してください」というような「助言」が行われます。所有者が助言に応じないと、市町村の職員が直接電話や訪問を行い、適切な管理の「指導」をします。 | |
★特定空き家指定 ★固定資産税・都市計画税の優遇措置の対象外に市町村から助言や指導を受けても所有者が管理状況を改善しない場合、次に行われるのは「勧告」です。勧告を受けると、その住宅は「特定空き家」に指定されたことになり、管理状況が改善されるまで固定資産税・都市計画税の優遇措置の対象から除外されます。 | |
★50万円以下の罰金 ★行政代執行の可能性も市町村からの勧告を無視し続けていると、今度は管理状況の改善を強く求める「命令」が下されます。命令に従わない場合、50万円の罰金を支払うことになります。また、所有者に代わって市町村が解体や修繕などの対処を行い、その費用を所有者に請求する「行政代執行」が行われる可能性もあります。 |
上記の「市町村による4段階の手続き」で説明したとおり、行政指示や行政処分は段階的に行われるため、いきなり罰金や行政代執行に及ぶことはありません。しかし市町村から「助言」や「指導」などの連絡があった時点で、その空き家はなんらかのトラブルを抱えているはずなので、なるべく早く対処しましょう。
例えすぐに改善できない事情があっても、連絡を無視し続けていると「改善の意思がない」とみられ、行政指示や行政処分の段階が上がってしまうかも知れません。そのような事態を防ぐために、まずは市町村の空き家相談窓口に問い合わせることが大切です。
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