2015年6月23日 更新
小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げや、日食や月食、流星群といった天文ショーのニュースなどから宇宙への関心が高まり、天体観測を始める人が増えています。
天体観測と言えば、空気が澄んでいて星のキレイな立地で行う
印象が強いのですが、条件さえ整えば、自宅で天体観測を楽しむこともできます。
夕食後や就寝前のちょっとした時間に星空を見上げたい人や、小さな子ども連れで夜間に外出しにくいご家庭でも、自宅で天体観測ができるようになれば宇宙を身近に感じられるはずです。
天体観測の初心者は、初めにどのような天体望遠鏡を買ったらよいのか悩んでしまいがち。けれども天体望遠鏡がなくても、身近な双眼鏡で代用する方法もありますし、流星群のように望遠鏡ではなく肉眼で広範囲を眺めたほうがよい場合もあります。まずは自宅の窓やベランダから、肉眼で夜空を見上げてみましょう。惑星や星雲、星団など、自分が見たいと思う対象がハッキリしてから天体望遠鏡を購入してはいかがでしょうか。
天体観測を始めるなら、まずは次のような道具を用意しましょう。これだけでも、宇宙を身近に感じられるようになりますよ。
星座の観測時に使われる道具です。日付、時刻、緯度を合わせると、今、どの方角にどんな星座が見えるか分かります。見たい星座がある時には、いつ頃よく見えるのかチェックすることもできます。
星座早見盤の時刻を合わせる時に使います。
星が見える方角をチェックします。
天体観測は暗い場所で行うため、懐中電灯を照らして手元や星座早見盤を確認します。星を見る時は暗闇に目を慣らす必要がありますが、懐中電灯のそのままの光では明るすぎて暗闇に慣れた目が元に戻ってしまうので、赤いセロハンを貼って明るさを抑えます。
自宅のベランダや庭先で観測する場合でも、防寒具を持参して寒さ対策を行いましょう。
繁華街から離れた住宅地や郊外なら、ある程度の星が見えるもの。都心であっても、月や明るい惑星を観測することができます。自宅の窓やベランダから、視界の開けた方角の空を見上げましょう。その際、部屋の明かりは暗くして、目が慣れるまでしばらく空を眺めてください。
天体望遠鏡は持ち運びや重さがネックになる場合もありますが、双眼鏡は軽くて使う場所を選ばないため、小さな子どもにもおすすめです。倍率6~12倍の双眼鏡なら月のクレーターがくっきりと見えます。長時間観察したい時は双眼鏡を三脚で固定しましょう。
天体望遠鏡は、初心者向けのリーズナブルなものからアマチュア天文家向けの高性能なものまで、価格帯や性能がまちまちです。ネットショップやホームセンターなどで購入することもできますが、初心者の方は、できれば知識の豊富なスタッフがいる専門店で購入するようにしましょう。
天体望遠鏡の専門店では、展示してある望遠鏡を実際に覗いて、感触をつかんでから購入できます。また、スタッフに製品選びのアドバイスを受けたり、購入後も質問したりできるので、なるべく相談しやすい雰囲気の店を選ぶとよいでしょう。
アウトドアコーナーに初心者向けの天体望遠鏡が販売されています。ただし専門店より製品の種類が少なく、購入時や購入後のスタッフのアドバイスが期待できないのがネック。
インターネット通販の場合、実店舗より安価で天体望遠鏡が手に入るケースもありますが、初心者が実物を見ずに購入するのは危険。身近に天体望遠鏡に詳しい知り合いがいてアドバイスを受けられるなら話は別ですが、できれば避けたほうが無難でしょう。
月や惑星、星雲、星団など。見たいと思う対象によって、必要とされる倍率や口径などが異なります。
初心者向けの場合、価格の目安は5万円前後~。将来的に観測したい星や、天体写真にチャレンジしたいといった希望に沿った望遠鏡やオプションを選ぶなら専門店のスタッフに相談しましょう。
庭先で観測するなら、持ち運びしやすい軽くてコンパクトな望遠鏡を。時には野外で観測する場合や、保管場所などによっても製品の選び方が変わってきます。
天体望遠鏡には、レンズを利用して光を集める「屈折望遠鏡」と反射鏡を利用して光を集める「反射望遠鏡」の2種類があります。
…初心者でも取扱いやお手入れが簡単。筒内の空気と外気の温度差が生じにくい構造になっており、見たいと思った時にすぐ使える。一方で、レンズの種類によって価格帯に大きなばらつきがある。 |
…見た像に色のズレが少なく、軽量で持ち運びが楽。ただし筒内の空気と外気に温度差が生じるために像がずれることがある。また取扱いが少々難しいので上級者向き。 |
気流の影響を受けやすいのと取扱いが少々難しいので上級者向き。
初心者は、比較的安価なレンズを使った屈折望遠鏡からスタートする場合が多いのですが、どちらのタイプにも一長一短があるため、店頭で実物を覗いてから判断するようにしましょう。
初めて自宅で天体観測をする時には、次の点に注意しましょう。
明るい部屋から観測すると、夜空の暗さに目が慣れず、星が見えにくくなってしまいます。そのため室内の照明を消して、暗さに目を慣らしてから星を眺めましょう。
失明のおそれがあるので、望遠鏡で太陽を直接見てはいけません。
望遠鏡や双眼鏡の向きによっては、ご近所のプライバシーを侵害してしまう可能性があります。迷惑にならない場所や方角を選んでください。
自宅の窓、ベランダ、庭先など、視界の開けたところであればどこでも天体観測を楽しめます。望遠鏡を設置する場所は、揺れなどの心配がない半畳ほどのスペースを確保してください。保管時には、レンズや鏡は乾燥材とともにビニール袋に入れて箱の中へ、望遠鏡はホコリよけのビニールをかけて風通しのよい場所に立てておきます。
自宅での天体観測は、住宅事情により視界が悪かったり、周囲が明るくて観測の邪魔になったりすることも。けれども天文観測所のようなドームがあれば、周囲の光をシャットアウトすることができるため、天文ファンの中には、自宅に小型のドームを設置して観測をする人もいます。
建物の条件や価格などの問題もありますが、自分だけの天文観測ドームでいつでも好きな時間に星空を見上げることができるのは魅力的と言えます。自宅に天文観測ドームを設置する際に気を付ける点は次のとおり。
た希望に沿った望遠鏡やオプションを選ぶなら専門店のスタッフに相談しましょう。
天文観測ドームのメーカーや販売店に依頼して、大きさや設置条件に合うドームの見積もりを提示してもらいましょう。建物の補強工事や基礎工事などは工務店にお願いします。新築であれば、ドームのメーカーなどと建物の施工会社が協働して効率よく工事を進めてくれます。
自宅にドームを設置する場合、視界を確保しやすい屋根を選ぶ人が多いようです。ほかにも屋上やベランダに設置することもあります。地上に設置すると振動の影響を受けにくいため、視界が開けた庭先を選ぶ人も。いずれも高さや方角の制約が少ない、視界の開けた場所を選びましょう。また、ドームそのものが建築基準法に触れる可能性があるため、事前にドームのメーカーや販売代理店、お住まいの市町村の建築課に問い合わせておきましょう。
どちらを選ぶかは、メーカーや代理店と相談して、設置スペースや望遠鏡のサイズや種類、見た目の好みなどを考慮する必要があります。
家庭用の2.5m前後の小型のドームであれば、ドームと観測室を併せて200~300万円ほど。これに内外装費や、設置費用などの実費が加わります。
ドームの開閉部分や回転部分などを1年に1回以上は点検を行いましょう。
日ごとに変化する星空では、年間を通じて流星群や惑星現象といったさまざまな天文ショーが繰り広げられます。このような天文ショーの日時や観測のポイントなどをいち早くチェックできるのが、国立天文台WEBサイトの「ほしぞら情報」。リアルタイムで見える星や、注目の天体ショーを調べてから星空を見上げれば、観測がもっと楽しくなるはずです。
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