不動産の売却の流れ(1)
不動産を売却するには、いつ、どのような手続きをすればよいのでしょうか。ここでは不動産売却の流れを3つのステップごとに見ていきましょう。
「売却準備」「販売活動」「引渡し」の3ステップを紹介
不動産の売却のステップは、大まかに「1.売却準備」「2.販売活動」「3.引渡し」に分けられます。 それぞれのステップの細かな手続きや、手続きにかかる期間は次のとおりです。
Step.1 売却準備
・Step.1ではどれくらいの期間がかかる?
目安は2週間程度。(2)の簡易査定はインターネット上で即日~2日間程度で査定結果が出ますが、(3)の訪問査定では査定から結果が出るまで1週間~10日間程度かかります。
Step.2 販売活動
・Step.2ではどれくらいの期間がかかる?
販売活動期間は1~3カ月を目標に行われることが多いですが、不動産によっては時間がかかる場合もあります。
Step.3 引渡し
・Step.3ではどれくらいの期間がかかる?
売買契約の成立から不動産の引渡しまで、買主の住宅ローンの手続きや引越しの日程などにもよりますが、大体1カ月程度かかることが多いでしょう。
Step.1 売却準備
(1)情報を整理・収集する
まずは、不動産を売却するにあたって必要な情報を整理・収集していきましょう。
・売却の目的は?
「子どもが生まれて今の住まいが手狭になった」「転勤が決まったので自宅を売却して引っ越したい」など、不動産を売却する目的を明確にしておくと、売却時の具体的な条件やスケジュールの目途を立てやすくなります。
また、売却の目的と併せて「いつまでに売却したいか」「住宅ローンの残債」「買い替え用の資金の有無」「売却希望価格」「転居先」についても整理しておきましょう。
・自分の不動産の相場は?
今ある不動産がいくら程度で売れるのか、不動産売却のポータルサイトや折り込みチラシなどを見て、周辺地域の似たような物件の売り出し情報から相場をチェックします。
ただし、ポータルサイトや折り込みチラシに出ている価格は実際の取引価格ではないため、下記の方法で実際の成約価格も確認しておくことをおすすめします。
・過去の取引事例は?
不動産の売却では、売り出し価格から値引き交渉を経て成約に至るケースが少なくありません。そこで、「土地総合情報システム」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」など公的機関が提供する情報提供サイトで、実際の成約価格を調べてみましょう。地域、物件の種類、築年数といった条件を絞り込んで似たような物件の成約価格を比較することで、値引き交渉を有利に進めやすくなります。
- (参考)国土交通省「土地総合情報システム」
- https://www.land.mlit.go.jp/webland/
- (参考)不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
- http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
(2)簡易査定を受ける
売却時の目的や条件、不動産の相場がクリアになったら、不動産会社に査定を依頼します。
査定は無料ですので複数社に依頼して査定結果を比較し、どのくらいの金額で売却できそうか相場をつかんでみましょう。
査定には「簡易査定」と「訪問査定」の2つがあり、簡易査定では現地を訪問せずに立地や築年数、周辺の売り出し事例や成約事例などを参考にして、査定金額を見積もります。
直接物件を見ないため大まかな査定となってしまいますが、自宅のパソコンやスマートフォンから無料で手軽に行えて、スピーディに査定結果が分かるメリットがあります。
(3)訪問査定を受ける
訪問査定は、不動産会社の担当者が直接現地を訪問して、建物や敷地の状態、周辺環境なども含めてさまざまな角度から不動産の査定を行うものです。査定項目が多岐にわたる分、結果が出るまで1週間~10日間ほど要しますが、簡易査定よりも精度の高い査定金額が分かります。また、査定時に権利証や売買契約書など(※下記参照)があると、より正確な査定につながるので用意しておきましょう。
※訪問査定時に用意しておくとよいものは…
(戸建て・マンション共通)…権利証、売買契約書、住宅ローンの残高証明
(戸建ての場合)…土地の測量図
(マンションの場合)…分譲時のパンフレット
査定時に担当者との相性もチェックする
訪問査定は不動産の査定額を知るだけでなく、不動産会社の担当者と直に相談できるチャンスでもあります。実際に売却を依頼することになれば担当者と長いお付き合いになりますから、査定時に売却プランなどについて相談や質問をして、フィーリングの合う相手を見極めるとよいでしょう。
査定時に質問しておきたいことは…
・なぜ、この査定金額になったのですか(査定金額の根拠)
・売却を依頼した場合、どのような手法で買い手を探しますか
・販売状況の報告はどのように行われますか
・契約手続きについてどこまでサポートしてもらえますか
(4)媒介契約を結ぶ
不動産の売却を委託したい会社が見つかったら、その会社と「媒介契約」を結びます。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つのタイプがあり、それぞれ次のような特徴があります。
・一般媒介契約
売主が複数の会社と同時に媒介契約を結び、売却仲介を依頼する方法です。依頼を受けた複数の会社は、買い手を探して売買を成立させるために販売活動を行いますが、売主が自ら買い手を見つけて直接取引することも可能です。
「一般媒介契約」を結んだ会社にはレインズ(※下記参照)への登録義務がなく、販売活動の報告義務もありません。
・専任媒介契約
売主が1社を選んで媒介契約を結び、売却仲介を依頼する方法です。上記の「一般媒介契約」とは異なり、「専任媒介契約」では販売活動を行えるのは1社のみ。ただし売主が自ら買い手を見つけて直接取引することも可能です。
「専任媒介契約」を結んだ会社は、媒介契約の締結から7日以内に物件情報をレインズに登録し、広く買い手を探します。また、2週間に1回以上のペースで売主に販売活動を報告します。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の会社との契約 | ○ できる | × できない | × できない |
売主が見つけた相手との取引 | ○ できる | ○ できる | × できない |
レインズへの登録 | 登録義務はない | 媒介契約締結から7日以内 | 媒介契約締結から5日以内 |
販売活動の報告 | 報告義務はない | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
契約の有効期間 | 法令上の制限はないが 行政の指導は3カ月以内 |
3カ月以内 | 3カ月以内 |
ちょこっとメモ!
レインズ(指定流通機構)とは?
国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営する、不動産情報のオンライン検索システムを「レインズ」と言います。
最新の物件情報や取引事例などをオンラインで素早く検索できるため、全国の買い手に向けて不動産をアピールすることができます。
まとめると…
自分に合った契約タイプを選ぶには
不動産の売買を1社におまかせする「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」なら、会社は自社だけで取り扱う物件として、広告などで積極的に売り出してくれる可能性が高まります。一方で、複数の会社におまかせする「一般媒介契約」は、会社間の競争を高めることで買い手へ発信するチャンスが広がります。
最終的には市場の傾向や売り出し時期など総合的に判断する必要がありますが、「この担当者にお願いしたい」という会社に出合えたら「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」を選び、「いろんな担当者の目線で買い手を見つけてもらいたい」と思ったら「一般媒介契約」を選ぶ手もあります。
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