2018年9月5日 更新
高齢や病気になると、手足の力が弱まり、転倒などの事故が起こりやすくなります。家の中にある危険を知り、事故を未然に防ぐ環境づくりを心がけましょう。
内閣府の「高齢社会白書」(2016年版)によると、高齢者の事故が発生した場所は8割近くが「住宅」となっています。高齢者にとって安心できる場所であるはずの家も、事故の危険が潜んでいるのです。
住宅内の事故発生場所で最も多いのが本人の個室やリビングなどの「居室」で、全体の45.0%を占めています。続いて「階段」(18.7%)、「台所・食堂」(17.0%)となっています。
(内閣府「高齢社会白書」(2016年版)より)
家の中で事故が起きる具体的なキッカケは次のとおりです。
- 居室(本人の個室やリビングなど)
一日の大半を過ごす個室やリビングなどは、事故の割合が最も多くなります。床に置いてある物、滑りやすい床材など、若い人なら特に気にならないようなものでも、高齢者には事故の引き金となることもあります。
居室での危険とは…
- 転倒の危険
- ・部屋と廊下の間のわずかな段差につまずく
- ・電気コードに足をとられる
- ・コタツ布団や座布団を踏んで足がもつれる
- ・家具の出っ張りに足が引っかかる
- ・フローリングなど滑りやすい床材で足が滑る
- ・床に置いた新聞紙やレジ袋で足が滑る
- 着衣着火(※)の危険
- ・仏壇の線香やローソクの火が衣服に燃え移る
※火を使った作業中に、衣服の袖などに火が燃え移ること
居室での危険を防ぐには…
つまずきなどによる転倒を防ぐために、床にいろいろと物を置くのは控えましょう。足が引っかかりやすい電気コードは壁を這わせるか、コードカバーなどを利用して足元の邪魔にならないようにします。また、フローリングなど滑りやすい床材の場合は、滑り止め靴下を履くか、滑りにくい床材やカーペットへの変更などを検討してください。
仏壇の線香やローソクについては、火を使わない電池式のものがあります。仏具店やホームセンターなどでチェックしてみましょう。
- 階段
階段では、上がる時よりも降りる時に事故が起こりやすく、骨折などの重いケガにつながるケースも少なくありません。
階段での危険とは…
- 転倒の危険
- ・階段の上り下りで滑って転落する
- ・階段の段鼻(※)につまずく
- ・暗くて足元が見えず、足を踏み外す
※段鼻とは…階段の足を乗せる部分(踏み面)の先端部分のこと
階段での危険を防ぐには…
階段に手すりを設置して、手すりに沿って上り下りするようにしましょう。階段の足を乗せる部分(踏み面)に滑り止めを取り付けたり、滑り止め靴下を履いたりするのもおすすめです。
また、足元が暗いと足を踏み外す原因となるため、照明を明るくするか、センサー式の足元灯を設置しましょう。
- 台所・食堂
キッチンやダイニングでは、物につまずいて転倒する危険や、火を使った調理による火傷や火災、食事中に食べ物を喉に詰まらせる窒息などの危険があります。
台所・食堂での危険とは…
- ケガ・転倒の危険
- ・調理中に、包丁などの調理器具でケガをする
- ・コンロの火や、熱いお湯などに触れて火傷をする
- ・床に置いている家電や調理器具につまずく
- 火災・着衣着火の危険
- ・コンロの火を点けっぱなしにして火災が起こる
- ・コンロの火が衣服に燃え移る
- 窒息の危険
- ・食事中に食べ物を喉に詰まらせる
台所・食堂での危険を防ぐには…
つまずきなどによる転倒を防ぐために、床にいろいろと物を置くのは控え、安全な動線を確保してください。調理中の火元からの火災を防ぐためには、火を使わないIHクッキングヒーターや、安全機能が充実しているガスコンロを導入する方法があります。ただし使い慣れたコンロがよいと考える高齢者もいるので、よく話し合ってみましょう。
- 浴室
浴室で多い事故には、洗い場での転倒や浴槽内の溺死などがありますが、ほかにも冬場に暖かい部屋から寒い浴室に移動する際の急激な温度変化によって、血圧が急上昇・急降下する「ヒートショック」で意識障害や心筋梗塞などが起こるおそれもあります。
浴室での危険とは…
- 転倒の危険
- ・濡れた床で滑る
- ・脱衣洗面所と浴室の間でつまずく
- ・浴室の縁に手をついた時に、滑ってバランスを崩す
- ・浴槽の縁をまたごうとしてバランスを崩す
- ・ヒートショックによる意識障害などで転倒する
- 溺死の危険
- ・入浴中に溺れる
浴室での危険を回避するには…
浴室での滑り事故を防止するために、浴室の床に滑り止めマットを敷き、浴槽の縁には滑り止めシールを貼りましょう。
また、浴室の出入り口付近や、浴槽まわりの壁に手すりを取り付けます。手すりで身体を支えることで、浴室に出入りしたり立ち上がったりした時の転倒防止に役立ちます。
ヒートショックによる事故を防ぐには、入浴の前に浴室や脱衣所をしっかりと暖めておくことが大事です。浴室暖房乾燥機の取り付けは大規模リフォームなどでない限り難しいですが、浴室が最も冷える一番風呂を避け、脱衣所にヒーターを取り付けるなどの工夫を行いましょう。
介護保険制度の「住宅改修」サービスを利用すれば、自宅に手すりを取り付けるなどの改修工事を行う際、介護を受けている人1人につき生涯20万円を上限として、改修費用の原則9割が給付されます。
改修費用は20万円までなら分割が可能で、要介護度が3段階以上上がった時や転居した場合には再度給付の対象となります。
- 介護保険が使える改修とは?
介護保険の対象となるのは、次の6種類の工事に限られます。
- (1)手すりの取り付け(浴室、トイレ、階段、廊下など)
- (2)段差を解消するためのスロープの設置
- (3)滑りにくい床材に変更
- (4)通常の扉を引き戸などに取り替え
- (5)和式便器を洋式便器に取り替え
- (6)上記に関連する付帯工事
- 給付を受けるには事前申請が必要です
介護保険の「住宅改修」サービスを利用するには、事前に申請を行い、審査を受ける必要があります。具体的に次のような流れに沿って手続きを進めていきますが、市町村によって手続きが異なる場合もあるので、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。
- ケアマネジャーに住宅改修について相談する
- 施工業者に工事の見積りを依頼する
- 自治体の窓口に申請書や工事の見積書など必要書類を提出する
- 審査
- 審査に通ったら工事スタート
- 完成後、自治体の窓口に改修費用の領収書など必要書類を提出する
- 住宅改修費の給付
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