2017年4月20日 更新
自宅で消費したエネルギーより、多くのエネルギーを発電することでエネルギー消費量の収支をゼロ以下にするZEH。ZEHで生活すると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
住宅の高断熱化によって室温が外気の影響を受けにくくなるため、エアコンの効率がよくなり、「夏は涼しく、冬は暖かい」快適な室内環境で過ごせるようになります。
また、部屋ごとの温度差が少ないことも特徴です。一般的な日本の木造住宅は部屋ごとに温度差があるケースが多く、冬場に暖かいリビングからトイレや浴室に移動すると、血圧が急変動する「ヒートショック」による健康被害が起こりやすくなりますが、ZEHなら家の中の温度を一定に保ちやすいので、ヒートショックのリスクを低減できます。
消費エネルギー量の収支をゼロ以下にするということは、光熱費の大幅な節約にもつながります。
日中は太陽光発電システムで創エネした電気を使い、余った電気を家庭用蓄電池に充電して、雨の日などに使用します。電気が足りない時だけ電力会社の電気を買うシステムになるため、光熱費が抑えられます。
さらに発電して使い切れなかった電気(余剰電力)は、電力会社に買い取ってもらえる制度もあります。光熱費の節約に加えて、電気を売った金額までお財布に入るのですから、家計に優しいですね。
2011年に起きた東日本大震災では、地震後の電力不足により、大勢の人が節電を意識するようになりました。ところがこの時「暑いけれどエアコンを使わない」などと我慢しすぎて体調を崩してしまうケースもあり、厚生労働省が「決して無理な節電をせず、適度に扇風機やエアコンを使用するように」と、熱中症予防を呼びかけるまでになりました。
省エネは大切ですが、「我慢の節電」は体によくないですし、長続きしにくいものです。
ZEHは住宅の高断熱化によりエアコンの効率が向上し、短時間で室温が涼しく(または暖かく)なります。また、高効率給湯器をはじめとする省エネ性の高いエコ設備、機器を使用することで快適な室内環境を保ち、無理なく省エネが実現できます。
ZEHや長期優良住宅など、いわゆる「高性能住宅」の普及が進むにつれて、住宅の価値をはかる目安の一つに「住宅の性能」が挙げられるようになってきました。2016年からスタートした「建築物省エネルギー性能表示制度(通称:BELS(ベルス)」は、住宅などの省エネ性能を星1つ(★)から星5つ(★★★★★)の5段階で評価する第三者認証制度です。
BELSでは、一般的な省エネ基準をクリアした住宅が星2つで評価されるのに対して、ZEHは現時点で最高ランクの星5つの評価となります。もちろんBELSだけで住宅の価値が決まる訳ではありませんが、もしも将来、住宅を売却することになった場合、住宅の「価格」「築年数」「立地」などの条件と並んで「BELSの星の数」がポイントになる可能性があり、ZEHかそうでない住宅かによって売却価格に差が出ることも考えられます。
これからは「住宅の資産価値を上げたいからZEHを選ぶ」という人が増えるかも知れませんね。
エネルギーの自給自足が可能なZEHなら、例え地震や台風などの災害で停電が起こっても、家庭用蓄電池を非常用電源として利用して最低限の電気をまかなえます。
また、停電が長期間にわたる場合でも、日中は太陽光発電した電気を使い、余った電気は「蓄エネ」して、夜間に使用できるので安心です。
ZEHの主な「創エネ」設備である太陽光発電システムや家庭用燃料電池(エネファーム)は、石油や石炭などの化石燃料とは違って、発電時にCO2を排出しない地球に優しい発電方法です。
化石燃料を燃やすと発生するCO2は地球温暖化の原因の一つともいわれており、現在、世界中でCO2排出を削減する取り組みが続いています。ZEHは、エネルギーを「自家発電、自家消費」することで、火力発電時に排出されるCO2の削減に貢献します。
月々の光熱費がお得になるなど家計に優しいイメージのZEHですが、確かにランニングコストは一般的な住宅に比べて割安であるものの、住宅の断熱性を高める仕様、高性能な設備や機器を導入すると初期コストが高くなってしまうのは事実。設備や機器の数、建物の大きさなどによって差はありますが、住宅をZEH仕様にするには250~300万くらい追加費用がかかるというデータもあります。
自治体によっては、特定の設備や機器に補助金が出るところもあるので、窓口に問い合わせてみましょう。
ZEHの設計では、家庭でのエネルギー消費量を上回る「創エネ」のために太陽光パネルを搭載する屋根の勾配・向き・位置を調整したり、建物の断熱性を高めるために窓の大きさやドアの位置などまで細かく計算したりする必要があります。また、家庭用蓄電池や高効率給湯器などを屋外に設置する場合に、置き場所によっては外観の見栄えが悪くなることもあります。
そのため、間取りや外観にこだわりがある人ほど、ZEHのさまざまな制約に戸惑うことがあるかも知れません。
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