伝統的な「木造軸組工法」とは

国土の約7割を森林が占める日本では、昔から豊富な木に恵まれ、木材を使った家づくりが行われてきました。そんな日本の自然や気候に合うよう、工夫や改良を重ねた建築方法が「木造軸組工法」。現在でも、新築住宅の半数以上がこの工法で建築されています。
木造軸組工法(在来工法)とは
豊富な木材で骨組みをつくる伝統的な工法

木の柱や梁などを組み合わせて、建物の骨組みとする建築方法です。屋根など真上からの重みを骨組みで受け止め、さらに柱と柱の間に筋交いと呼ばれる補強材を入れることで横からの力に抵抗します。
木造軸組工法は日本の社寺建築に見られる伝統的な工法をベースに、金物を用いて堅固な躯体を組むなど時代に合わせた建築技術を取り入れて発展を続けてきました。同じ木造でも、ツーバイフォー工法やプレハブ工法などの新しい工法より以前から存在したという意味で、「在来工法」とも呼ばれています。
木造軸組工法の特徴
開口部の大きさや間取りのオーダーが容易
木造軸組工法を検討する際に、知っておきたいメリット・デメリットは次のとおりです。
メリット
開口部を大きくとれる

柱や梁などで支えるため、開口部を大きくとることができます。同じ木造でも、壁で支える構造のツーバイフォー工法は開口部の大きさや位置の制限がありますが、木造軸組工法なら大小の開口部を取り入れやすく、窓からの眺望や通風、採光にこだわった家づくりも可能です。
間取りの自由度が高い

木造軸組工法は間取りの自由度が高く、開口部の大きさや位置のほかに「壁を取り払って広い空間にする」「中庭をつくる」といった要望も、強度や耐震性を損なわない範囲で実現できます。また、入居後の間取りの変更や増改築、減築も比較的容易なので、家族構成やライフスタイルの変化に柔軟に対応できます。
木のすぐれた調湿性

木には、空気中の湿度が高いときには水分を吸収して、逆に湿度が低いときには水分を放出して、適度な湿度に保つ調湿作用があります。木材をふんだんに使った木造軸組工法は、夏はじめじめと蒸し暑く、逆に冬は乾燥しやすい日本の気候に適した建築方法といえます。
デメリット
仕上がりに差が出る可能性も

大工さんが手作業で木材を図面通りに1本ずつ加工し、現場で組み立てる木造軸組工法では、仕上がりが大工さんの技術や経験に左右される可能性があります。
近年は、あらかじめ工場で部材を機械加工するプレカットが主流になりつつあり、安定した加工品質の部材を生産できるようになりましたが、ベテランの大工さんが木の個性を見極めて活かす加工に比べると仕上がりの精度は劣ります。
ちょこっとメモ!
建物の地震対策もアップデート!地震から我が家を守るには

地震大国である日本では、大地震のたびに建築基準法が見直され、建物の地震対策を強化してきた経緯があります。もちろん木造住宅も、筋交いや金物で躯体を堅固にして倒壊を防ぐ「耐震工法」や、揺れを吸収する装置で建物への被害を抑える「制震工法」など、さまざまな対策が登場しています。地震はいつ、どこで発生するか分からないため、家づくりの段階からしっかりと対策を考えておきたいものですね。
和風住宅をつくる「真壁づくり」
柱や梁を見せると「真壁」、壁で囲むと「大壁」に

木造軸組工法は、さらに「真壁(しんかべ)づくり」と「大壁(おおかべ)づくり」の2種類に分けられます。
真壁づくりは、神社や古民家のように柱や梁を露出させる建築方法で、昔ながらの和風住宅にあたるのはこちらのタイプ。柱と柱の間は土壁で下地をつくり、塗り壁や壁紙で仕上げます。
大壁づくりは、柱や梁をすっぽりと壁で囲んでしまう建築方法で、洋風やモダンな雰囲気の住宅で用いられています。
真壁づくりの特徴
木の温かみや空間の広がりを体感できる
和風住宅をつくる「真壁づくり」には、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
木の風合いと温もり

柱や梁を露出させることで木の風合いと温もりのある雰囲気に仕上がり、年月を重ねると、木肌の色に味わいが増す経年美化が楽しめます。柱や梁が空間のアクセントとなって、奥行やメリハリを感じられるのも特徴です。
室内に広がりが出る

大壁工法のように柱を壁で囲むことがないため、壁の厚みは柱サイズよりも薄くなり、その分、室内のスペースが広くなります。また、天井も高くなるので部屋全体にのびのびとした開放感が生まれます。
ナチュラルなテイストの住宅などにも

伝統的な和風住宅はもちろん、露出させる柱や梁の樹種や壁色とのコーディネート次第で、木の質感を生かしたナチュラルテイストや、和モダン、北欧風など、さまざまな雰囲気に仕上げることもできます。設計・デザインを手掛ける住宅会社や設計事務所によって得意なテイストやデザインがあるので、気に入った住宅の画像などを見せて、施工が可能かどうか問い合わせてみましょう。
デメリット
断熱材を入れるスペースが狭い

柱や梁を壁で囲まないためスペースの広がりや解放感は高まりますが、壁の厚みが薄くなることで断熱材を入れるスペースが狭くなります。真壁づくりの断熱材を検討するときは、断熱性能を見極めて選ぶようにしましょう。
まとめると…
理想の家を実現する工法は?工法の特徴をしっかりチェック!

ここでは、木材を使った昔ながらの建築方法である木造軸組工法と、木造軸組工法の中でも、和風住宅に適した真壁づくりについて紹介しました。どの工法にもメリット・デメリットが存在するため、好みのテイストや間取りはもちろん、将来の住みやすさなども考えて総合的に判断しましょう。
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最終更新日 2025年4月1日
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