災害時の「命を守る行動」と「避難生活」
大規模な災害が発生した場合、ペットと一緒に暮らす飼い主はどうすればよいのでしょうか。
被災直後の行動から、ペットとの同行避難、避難生活まで、災害発生時の飼い主の行動と防災対策をチェックしましょう。
被災直後にとるべき行動は?
災害時に焦りは禁物。落ち着いて行動しよう
台風のように事前に分かる災害もありますが、地震やゲリラ豪雨による風水害などは、いつ、どこで発生するか分かりません。
自宅で、外出先で、ペットと離れ離れだったら…など、いろいろな状況下で災害が起こったときのことを普段からイメージしておくと、災害時に焦らず行動できます。
ここでは、大規模な地震が起きた場合を想定して、飼い主がとるべき行動を見ていきましょう。
状況①自宅でペットと一緒に被災したら
揺れている間は、自分を守ることを考える
ペットと自宅にいるときに地震に襲われたら、まずは自分自身の身を守ってください。揺れている間は家具の転倒や物の落下の危険があるため安全な場所に移動し、頭を保護します。
地震発生直後のペットの様子についてはSNSで話題になることも多く、過去の地震では「おびえて飼い主にくっついていた」「安全な場所に隠れていた」「緊急地震速報のサイレンでパニックになった」などの投稿が見られました。
家の中の離れた場所でペットがパニックになると不安ですが、むやみに動くと落下物に当たってケガをするかも知れません。飼い主が無事ならペットを救えるので、完全に揺れが収まってからペットの安全を確保するようにします。
状況を確認し、避難の準備を進める
揺れが収まったら、自分や家族の安否はどうか、家に危険がないかを確認し、避難経路を確保します。
ペットが怖がって隠れたり、パニックで攻撃的になっている場合は無理せず、落ち着くのを待ってください。ペットが平常心を取り戻したら、いつでも避難できるようにリードをつけるかキャリーに入れます。
続いて、テレビやラジオ、自治体のサイトなどから地震の情報を集めます。火災や倒壊の危険が迫っていたり、避難指示が出ている場合はすみやかに避難しましょう。
状況②外出先でペットと一緒に被災したら
落下物から頭を守りつつ、リードは放さない
犬の散歩中など、屋外でペットと一緒にいるときに大きな揺れを感じたら、崩れやすいブロック塀や、割れた窓ガラスや看板が落下しやすい建物のそばから離れて、頭をカバンなどで保護しましょう。
このとき、気を付けたいのがリードを絶対に手放さないこと。地震の揺れに驚いたペットがパニックになって脱走し、ケガや事故に遭う可能性もゼロではないため、リードをしっかり握ってください。
二次災害を考えて安全な場所へ
揺れが収まったら、公園などの広くて安全な場所に移動します。ただし海の近くで被災した場合は、津波を想定して急いで高台に避難してください。
避難の道中は、道路に散乱したガレキや割れたガラスでケガをしないように注意が必要です。
安全な場所でしばらく待って、状況が落ち着いたら自宅に戻りますが、帰宅が困難な場合はペットと同行避難を行いましょう。
状況③ペットが在宅、飼い主が外出先で被災したら
安全に帰宅できるまでは安全な場所にとどまる
飼い主が外出中に被災すると、場所によっては交通機関等が利用できず、帰宅が困難になる可能性もあります。
家族が家にいればペットの安否確認もできますが、そうでない場合はお留守番のペットが気がかりです。ただ、大地震では強い揺れが繰り返すおそれもあるため、安全確認ができるまでは帰宅は控えてください。
外出中でも安否確認できる備えを
外出先で帰宅困難になった場合に備えて、外出先からペットの安否を確認する方法を考えておきましょう。
おすすめは、近所の親戚や犬仲間にお願いして、緊急時に窓の外などからペットの安否を確認してもらえるようにしておくことです。停電していなければ、外出先のスマホからペットのようすをチェックできる「見守りカメラ」や、遠隔操作で給餌ができる「リモート給餌器」なども役に立ちます。
避難の判断や方法は状況を見極めて
自宅が危険な場合や、生活が難しい場合は避難先へ
避難所などに避難するか、それとも自宅にとどまるかについては、テレビやラジオ、自治体のサイトから得た情報や、自宅の状況などから判断するようにします。
【避難所などへ移動が必要な状況とは…】
- 自宅の損傷が大きい
- 余震などで自宅が倒壊するおそれがある
- 隣家の倒壊などに巻き込まれるおそれがある
- 火災・津波・液状化などの二次災害の心配がある
- 室内の状況などから、自宅での生活が難しい
- 避難指示が発令されている
【自宅にとどまるのがよい状況とは…】
- 自宅の損傷が少なく、倒壊の危険がない
- 火災・土砂災害・液状化などの危険性がない
- 自宅での生活に支障がない
自宅が安全と判断できたら、ペットも人も住み慣れた自宅で過ごしたほうがよいでしょう。 危険を感じたり、自宅で生活できない場合は避難が必要です。避難方法については、下記を参考にしながら、個々の状況に合った選択肢を選んでください。
避難方法①ペットと在宅避難をする
いつもの環境でペットと過ごせるメリットは大きい
自宅の被害が少なく、生活に大きな支障がなければ、自宅でペットと避難生活を送る「在宅避難」がベスト。自宅なら、大勢と寝起きをする避難所などよりも感染症リスクやプライバシーの問題がなく、環境の変化もないのでペットや飼い主のストレスが少なくなります。
在宅避難中、余震などの状況によっては自宅で安全に過ごすことができなくなることも考えられます。いつでもすぐに避難できるよう、ペットと人の持ち出し品を常に用意しておきましょう。
避難所で物資や情報を入手する
水や食糧などの救援物資は避難所で配布されており、在宅避難者も入手できます(ただし人用の物資が中心ですから、ペットフードなどはできる限り多めの備蓄を心がけてください)。
避難所では、獣医師会による巡回診療も定期的に行われます。このような情報は自治体のサイトや、避難所の掲示板などで告知されるので、こまめにチェックすることをおすすめします。
避難方法②ペットと避難所で過ごす
ルールとマナーを守り、周囲への配慮を心がけたい
ペットと避難所で過ごす場合は、各避難所のルールに従い、飼い主が責任を持ってペットのお世話をしましょう。
避難所によってはペット不可の場合もあるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
避難所の多くは人の居住スペースとペットの飼育スペースが分かれており、ペットはキャリーやケージ内で過ごします。避難所で使用するキャリーやケージ、ペットフード、水などは原則として飼い主が用意します。
さまざまな人が集まる避難所には、動物が苦手な人やアレルギーの人もいます。ペットの吠え声やにおい、抜け毛、排泄物などがトラブルの火種にならないよう、細心の注意を払って行動しましょう。
飼い主同士の助け合いが重要
避難所生活で忘れてはならないのが、他の飼い主との連携です。
飼い主同士で協力して飼育スペースの清掃をしたり、ペット用の救援物資の仕分けや配布を手伝うなど、お互いに助け合いながらペットの飼育環境を維持管理していきましょう。
ちょこっとメモ!
同行避難は安全を最優先。ペットの種類・頭数・連れて行く人に応じた対策を!
災害時には車を使わず、徒歩で避難するのが基本です。人が歩きやすく、ケガしにくい長袖・長ズボンの衣服やスニーカーとともに、ペットを連れて行く方法を考え、必要なグッズを備えてておきましょう。
歩いて移動する中・大型犬はリードや脚元保護の靴を装着し、小型犬や猫などはキャリーに入れて移動するのがスムーズ。キャリーは両手が空きやすいようにリュックタイプか肩掛けタイプを選び、壊れやすい扉部分をガムテープで補強しておきます。
多頭飼いの場合、災害時に1人で2頭以上を連れて歩くのは危険なので、できれば家族と手分けして運びましょう。また、病気や高齢により自力で歩けないペットがいれば、カートなどの移動手段を検討してください。
避難方法③ペットは在宅、人は避難所
ペットの生活環境を変えずに避難生活を送る
ペットは在宅のままで、飼い主が避難所からお世話に通う方法もあります。
自宅が安全で、飼い主が定期的に通えることが条件となりますが、環境の変化を嫌うペットにとっては避難所で過ごすよりストレスが少ないでしょう。
脱走やケガなどを防ぐ対策は必須
ペットを在宅にすると決めたら、自宅の安全対策を徹底します。窓や壁に破損個所があれば、そこからペットが脱走しないよう、ガムテープや段ボールなどで応急処置を。
地震で室内がぐちゃぐちゃになっていても、とりあえず一部屋だけ片付けて安全を確保すれば、ペットが安心して過ごせる場所になります。
sペットのお世話後に避難所に戻るときは、ペットの脱走防止と、空き巣防止のために、しっかりと戸締まりを行いましょう。
避難方法④ペットと車中泊をする
プライバシーが保たれた車内でペットと過ごせる
過去の災害では、自宅駐車場や避難所の敷地内で車中泊をして、ペットと避難生活を乗り切る人も多く見られました。
車中泊のメリットは、ペットと同じ空間で、プライバシーを気にせず過ごせること。避難所だとペットと離れ離れになることが多いのですが、車中泊ならペットと一緒なのでペットも飼い主も安心です。自宅の状況などによっては、昼間は在宅避難を行い、夜間は余震に備えて車で寝泊まりをすることもできます。
健康と安全には十分に配慮して
災害時の車中泊では、特にエコノミークラス症候群に注意してください。狭い車内で長時間同じ姿勢のままだと足に血栓ができて詰まり、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。予防策として、寝るときは座席に座ったままではなく、シートにタオルを敷くなどして、水平な状態を保ちましょう。
また、熱中症を防ぐために、夏場はカーエアコンを適切に使用しましょう。一方で、冬場の雪中でガソリンをかけっぱなしにすると一酸化炭素中毒の危険があるので、断熱シートを貼るなどして寒さ対策をします。
避難方法⑤ペットとテント泊をする
ペットと一緒に生活できて、プライバシー性も◎
災害時のテント泊では、自宅駐車場や避難所の敷地内などにテントを張って、ペットと寝泊まりをします。
テント泊は車中泊と同様、避難所のように周りの目を気にせず、ペットと同居できるメリットがあります。普段からペットとアウトドアでテント泊をしているなら日頃の経験を活かせますし、使い慣れた寝袋やランタンなどのアウトドア用品も避難生活に役立ちます。
寒暖差や悪天候への対策も必要
屋外のテント泊は気候や天気の影響を受けやすく、寒暖差で体調を崩したり、強風や豪雨で大変な思いをする可能性もあります。状況に応じて、雨避けのフライシートでテントを覆ったり、防寒具や毛布などで寒さ対策を行いましょう。
避難方法⑥ペットを親戚や施設などに預ける
いざというときに頼れる預け先が複数あると安心
飼い主がペットのお世話をするのが難しい場合は、ペットを一時的に預かってもらう方法も検討しましょう。
遠方に住んでいる親戚や知人で、ペットの飼育経験がある人がいれば、平常時にお願いしておくと災害時に頼ることができます。また、かかりつけのペットホテルや動物病院に預かってもらえるなら、避難所で過ごすよりペットのストレスも少ないです。
特に大型犬や危険な動物などは避難所に受け入れてもらえない可能性があるので、そのようなペットを飼っている場合は普段から預け先を探し、複数の候補を見つけておくと安心です。
まとめると…
さまざまな状況を想定して備えよう。日頃の準備と対策がペットと飼い主を守る
ひとたび大規模な災害が発生すると、ペットや飼い主を取り巻く環境は一変し、ふたたび日常を取り戻すまでに長い時間がかかります。
ペットと自身の安全を守るためにも、災害が起きるかも知れない状況について、あらゆる可能性を普段から想定し、準備や対策を進めていきましょう。
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最終更新日 2024年12月02日
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