ペットの防災対策

平常時からの「備え」は大丈夫?

2024年10月2日 更新
平常時からの「備え」は大丈夫?

災害時に、大切なペットを守れるのは飼い主だけ。ペットの安全を確保しながら、1日でも早く日常を取り戻すためには、日頃の準備が欠かせません。
災害時に必要となる備えを知り、防災対策に活かしましょう。

備え①家の中の危険をなくす

住まいの安全を確保することが命を守る第一歩

住まいの安全を確保することが命を守る第一歩

1日の大半を家で過ごすペットにとって、住まいの安全対策は最も重要なポイントです。
飼い主の不在時に地震が発生して、倒れた家具や落下物でペットがケガをしてしまった……という事態にならないよう、家の中の危険な箇所をチェックして対策を。
室内飼いのペットはもちろん、屋外で飼っているペットの安全対策も必要です。

室内の家具やケージを固定する

阪神大震災では、亡くなった人の約8割以上が倒れた家具などの下敷きによる窒息・圧死でした。
地震発生時の転倒事故を防ぐために、家具や飼育ケージはL字金具やチェーンを使って直接壁に固定しましょう。

賃貸住宅の場合は金具やチェーンによる固定が難しいため、突っ張りポールや滑り止めマットなどを利用します。

棚の中身の落下・飛び出しを防ぐ

家具をガッチリ固定しても、地震の揺れによる中身の落下・飛び出しの危険性も。
対策としては、耐震ラッチを扉や引き出しに取り付けてロックし、棚板には滑り止めシートを敷いて食器などが動かないようにします。本棚に取り付ける落下防止ベルトなどもあります。

安全な避難場所をつくる

安全な避難場所をつくる

室内でペットを放し飼いにしている場合、家具転倒などの危険がない場所にキャリーを設置したり、ソファーの下などにスペースをつくっておくと、いざというときにペットが逃げ込めるので安心です。

普段は室内のサークルで飼育している場合や、お留守番のときだけケージを利用する場合なども、設置場所の安全を確認しましょう。

屋外の飼育場所の安全をチェック

屋外の飼育場所の安全をチェック

庭などの屋外でペットを飼育しているなら、地震の揺れによってブロック塀が倒壊したり、強風で近くの窓ガラスが飛散したりしてペットに危険が及ばないか、飼育場所の安全を確かめておきます。

また、台風などによる強い風雨が予想されるときは、あらかじめ屋内にペットを入れてあげましょう。

備え②ペットの迷子対策を行う

身元が分かるものがあれば、迷子になっても見つかりやすい

身元が分かるものがあれば、迷子になっても見つかりやすい

災害時にはペットが飼い主とはぐれて迷子になってしまうおそれもあるため、身元が分かる鑑札や首輪などを日頃から必ず装着しておきます。 どこの家のペットか判明すれば、飼い主の元に戻れる可能性が高くなります。

【犬の場合】身に着けたいもの

【犬の場合】身に着けたいもの

鑑札、狂犬病予防注射済票 「鑑札」は自治体に犬の登録を行ったときに、「狂犬病予防注射済票」は狂犬病などのワクチン接種を受けたときに交付され、どちらも飼い犬への装着が法律で義務付けられています。
もしも犬が迷子になっても、鑑札の登録番号から身元を確認できます。また、狂犬病予防注射済票がないとワクチンを接種した証明ができず、避難所に入れない可能性もあります。
迷子札、首輪 迷子札に飼い主の名前と連絡先を記載して首輪に装着するか、首輪の裏に記載します。
マイクロチップ 迷子の犬が保護されたときに、首輪などが外れていても皮下に埋め込んだマイクロチップがあれば、番号を読み取ることで身元を確認できます。
2022年6月以降にブリーダーやペットショップで購入した犬には既にマイクロチップが装着されています。マイクロチップを装着していない犬も、動物病院でマイクロチップを装着できます。
【猫の場合】身に着けたいもの

【猫の場合】身に着けたいもの

迷子札、首輪 迷子札に飼い主の名前と連絡先を記載して首輪に装着するか、首輪の裏に記載します。
マイクロチップ 迷子の猫が保護されたときに、首輪などが外れていても皮下に埋め込んだマイクロチップがあれば、番号を読み取ることで身元を確認できます。
2022年6月以降にブリーダーやペットショップで購入した猫には既にマイクロチップが装着されています。マイクロチップを装着していない猫も、動物病院でマイクロチップを装着できます。
【その他の小動物などの場合】身に着けたいもの

【その他の小動物などの場合】身に着けたいもの

脚環・耳環・マイクロチップなど小鳥やウサギなどの小動物には、脚環や耳環、マイクロチップなどを装着して、身元が分かるようにしましょう。

備え③ペットの健康管理を行う

避難所で感染症や寄生虫を広げないために必要

避難所で感染症や寄生虫を広げないために必要

避難所などでは、生活環境の変化からペットがストレスで体調を崩したり、他のペットとの接触が増えたりして感染症にかかりやすくなります。
普段からペットの健康管理を行い、感染症を防ぐことは飼い主の重要な役目です。

【犬の場合】日頃の健康管理

【犬の場合】日頃の健康管理

  • 狂犬病ワクチン(年1回の接種義務)や、各種ワクチンを接種する
  • フィラリアやノミ・ダニなどの寄生虫を駆除する
  • シャンプーやトリミングで衛生を保つ
  • 避妊・去勢手術を行う

狂犬病のワクチン接種済であることを入所の条件としている避難所もあるので、毎年必ず接種を済ませましょう。
なお、ペットホテルや動物病院に犬を預けるときも、ワクチン接種の証明(狂犬病予防注射済票など)が必要になります。

【猫の場合】日頃の健康管理

【猫の場合】日頃の健康管理

  • 各種ワクチンを接種する
  • 寄生虫を駆除する
  • 避妊・去勢手術を行う
  • 室内飼いをする

猫の場合、犬のようなワクチン接種の義務はありませんが、多くのペットが集まる避難所で感染症にかからないように、各種ワクチンを接種しておくのがおすすめ。
外飼いや半外飼いの猫は感染症や寄生虫のリスクが高く、災害時に行方不明になってしまうこともあります。猫の健康と安全を考えるなら、完全室内飼いが理想です。

備え④ペットのしつけを行う

日頃のしつけがペットと飼い主の安心につながる

日頃のしつけがペットと飼い主の安心につながる

ペットのしつけは、平常時はもちろん、災害時にペットと安全に同行避難を行い、周りに迷惑をかけずに避難生活を送るために大切なもの。
いざというときにペットと飼い主が困らないよう、日頃からトレーニングを行いましょう。

キャリーやケージなどに慣らしておく

避難所に入所したり、ペットホテルや動物病院に預けたりするときは、ペットをキャリーやケージなどに入れてお世話するのが基本。また、小型犬や猫は同行避難をするときにもキャリーが必要になるので、中に入るのを嫌がらないよう、日頃から室内にキャリーを置いて慣らしておきましょう。
犬の場合は「ハウス」のコマンドでキャリーに入るようにしつけておくと、スムーズな同行避難につながります。

飼い主以外の人や他の動物に慣らしておく

飼い主以外の人や他の動物に慣らしておく

避難所などでは、さまざまな人やペットと一緒に過ごすことになります。このとき、ペットが飼い主さん以外の人や他の動物を怖がるようだと、ストレスから暴れたり体調が悪くなったりして、避難生活が困難になるかも知れません。

ペットの人見知りを防ぐには、飼い主以外の人とペットが顔を合わせる機会をつくるとよいでしょう。
犬なら自宅に招いた知人や、散歩中に出会った他の飼い主さんや犬との触れ合いを通して社会性を身に着け、他の人や犬と会っても平常心で過ごせるようにします。猫なら知人を自宅に招いて、人に慣らしておくのがおすすめです。

さまざまな音や環境に慣らしておく

災害が発生すると、緊急車両のサイレンや大勢の話し声など、聴きなれない音を耳にするようになります。不慣れな音や環境でペットがおびえることがないよう、普段からさまざまな状況を経験しておくとベター。
犬なら帰省やキャンプで一緒に移動したりアウトドアの練習をする、猫ならキャリーで避難所までの道のりを経験するといった方法で慣らしておきましょう。

【犬の場合】基本のコマンドやトイレのしつけを行う

【犬の場合】基本のコマンドやトイレのしつけを行う

興奮した犬を落ち着けたり、犬を危険から遠ざけたいときには「マテ」や「オイデ」が有効。「フセ」「オスワリ」なども含め、平常時でも役立つ基本のコマンドです。
また、避難所などでのペットの糞尿トラブルを防ぐには、普段から決まった場所(ケージ内のペットシーツの上など)でトイレができるようにしつけておくことも大切です。

【犬の場合】無駄吠えなどの問題行動をなくす

無駄吠えや咬み癖、分離不安などの問題行動が、避難生活中のトラブルの原因となることがあります。
日頃から対策を考えるとともに、しつけのインストラクターや獣医師に相談することをおすすめします。

【犬の場合】靴や服に慣らしておく

同行避難するときに、道路に散乱したガレキや割れたガラスでペットがケガをしないように、靴を履かせて脚元を保護するとよいでしょう。また、ペットの服は暑さや寒さの対策になるほか、換毛期に毛が抜けやすい犬種(柴犬やポメラニアン、ゴールデンレトリバーなど)の場合は避難所での犬の抜け毛にまつわるトラブルの予防にもなります。
靴や服を嫌がる犬も多いので、おやつを与えながら装着させるなど、徐々に慣らしていきましょう。

備え⑤ペットの備蓄品・避難用品を用意する

安全な避難生活のために、必要なものを過不足なく備蓄しよう

安全な避難生活のために、必要なものを過不足なく備蓄しよう

避難生活で必要となるペットの備蓄品や、同行避難のときに持ち出す避難用品は、飼っているペットの種類や頭数、個々の事情(持病や健康状態など)によりまちまちです。下記のリストを参考に、避難生活でどのように過ごすかをシミュレーションしながら、必要な物を準備しましょう。
なお、一度に全部を持ち出すことは難しいため、緊急性の高い物から優先順位を付けて持ち出すようにします。

療法食、薬持病がある場合に必要。普段から余裕を持って入手し、ストックしておきます。
ペットフード、水1週間分以上の備蓄が目安。ペットの食欲が落ちたときに備えて、ドライとウェットの両方のフードを用意。
キャリー、ケージ避難時だけでなく、普段からペットが過ごすハウスとして使用できます。
予備の首輪、リード複数の首輪やリードがあると安心。ケガやトラブル防止のために、リードは伸縮しないタイプのものを。
ペットシーツ1週間分以上の備蓄が目安。普段から多めにストックしておきます。
排泄物の処理用具エチケット袋、スコップを用意。マーキング癖があるならマナーパンツ・ベルトも必要。
トイレ用品猫の場合は使い慣れた猫砂か、使用済猫砂の一部を用意しましょう。
食器使い慣れたものを用意しましょう。
身元が分かるメモ飼い主の名前と連絡先を記載します。
ペットの写真迷子になったときに備えて、全身などペットの特徴が分かる写真と、飼い主との2ショット写真(飼い主特定に役立ちます)を用意。紙焼きのほか、スマホにも写真データを保存しておきます。
ペットの健康手帳ペットホテルなどに預けるときに、ペットの健康状態が分かるメモがあれば便利。ワクチン接種状況、病歴、投薬中の薬情報、かかりつけの動物病院などを記載します。
タオルや毛布寒さから身を守ったり、ケージを毛布で覆ってペットを落ち着かせたりします。
ケア用品ウェットタオル、ブラシ、ペット用シャンプーなど、普段から使い慣れたものを用意しましょう。
お気に入りのおもちゃなどペットのにおいがついたものがあると安心です。
洗濯ネット猫の屋外診療や保護するときなどに使用します。
その他の用品ビニール袋、ガムテープ、サインペンなど。
※環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」より作成
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3009a.html

備え⑥地域の災害リスクや避難所の情報を集める

危険なエリアや避難場所が分かっていると、避難がスムーズに

危険なエリアや避難場所が分かっていると、避難がスムーズに

平常時から、自分が住んでいる地域の災害リスクや、同行避難ができる避難所の場所を調べておくと、いざというときに焦らずに済みます。

ハザードマップで災害リスクを調べる

ハザードマップとは、その地域で想定される災害の被害範囲を地図上に示したもので、洪水、津波、高潮、火山、地震などのマップがあります。

ハザードマップは、役場の窓口などで入手するか、検索サイトで「自治体名 ハザードマップ」と検索すると確認できます。災害の被害範囲のほかに、避難場所なども表示されているので、今住んでいる地域にどんな災害リスクがあるのか、どんなルートで同行避難すればよいかを調べるのに役立ちます。

同行避難ができる避難所を探す

自治体によっては、ペットと同行避難ができる避難所を平常時からサイトなどで公表していることも。たとえば東京都葛飾区が避難所でのペット飼育について定めたガイドラインによると、犬、猫、ウサギ、フェレット、小鳥、ハムスターなどの小型げっ歯類を対象として「学校避難所ごとに屋内もしくは屋外で同行避難の受け入れを行っています」(※)という記載があります。

※東京都葛飾区「避難所における動物飼育のガイドライン」(令和2年修正)より
https://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1003399/1003401/1023835.html

こうした情報をもとに避難所の候補をいくつかチェックしておくと、避難が必要になったときに素早く行動ができます。
避難時のルートもハザードマップを見ながら安全な道を確認し、災害の影響で道路が使えなくなった場合に備えて複数のルートを想定しておきましょう。

避難ルートをペットと歩いてみる

避難ルートをペットと歩いてみる

近年は、ペットと飼い主の同行避難を想定した避難訓練を実施する自治体が増えています。ペットと一緒に訓練を行うことで、実際に災害が発生したときにスムーズかつ安全に同行避難ができるようになります。
避難訓練だけでなく、犬の散歩のついでに避難ルートを歩くのもおすすめ。日頃から避難行動を意識してみましょう。

まとめると…まとめると…

日常生活の延長としての防災対策を。無理せず、できることからスタートして!

日常生活の延長としての防災対策を。無理せず、できることからスタートして!

「ペットの防災対策」というと特別な準備が必要と思われがちですが、家具類の転倒防止やハザードマップの確認など、人のための防災対策がペットのための防災対策につながるケースは多いもの。また、普段からペットの健康管理やしつけを行い、さまざまな環境に慣らしておくことも避難生活に役立ちます。
いつ、どこで起こるか分からない災害だからこそ、日常生活の延長として防災対策ができるといいですね。

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最終更新日 2024年10月2日