早めの対策で負担と悩みを軽減!将来に備えてそろそろ知りたい介護の制度・お金・やるべきこと

在宅介護と施設介護、どっちを選ぶ?

2021年10月6日 更新
在宅介護と施設介護、どっちを選ぶ?

家族の介護をするときに、よく悩みとして挙げられるのが「介護を行う場所」。自宅か、それとも施設に入居するのか。施設を考えるなら、介護施設選びもしなくてはなりません。それぞれの特徴やメリット・デメリットを知って、よりよい選択をしましょう。

高齢者の希望は「在宅」が半数以上

介護の状態や家族の生活も含め検討したい

介護の状態や家族の生活も含め検討したい

内閣府の調査によると、加齢により身体機能が低下しても、今のままの自宅か、あるいは自宅を改築して在宅介護を受けたいと願う高齢者が半数以上を占めています(※)。在宅介護は、住み慣れた環境のまま生活できるメリットがありますが、要介護度や介護の状況、介護する家族の生活などから在宅では難しいことも。そのような場合は施設介護も検討しましょう。

※内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(2020年度)
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r02/zentai/pdf_index.html

要介護度が進むと増える「施設」

いずれ施設に入所する可能性も考えておく

いずれ施設に入所する可能性も考えておく

介護を受ける本人の要介護度が低いほど在宅介護が多く、要介護度が高くなるほど施設介護が多くなるというデータがあります(※)。
例え今は要介護度が低く在宅介護が可能でも、この先、要介護度が進んで介護の手が足りなくなったり、一人暮らしが困難になったりして、施設介護を選ぶことがあるかも知れません。

月額の介護費用(介護を行った場所別)

在宅 施設
支払った費用はない 4.4% 2.7%
1万円未満 8.6% 1%
1万~2万5千円未満 23.5% 4.8%
2万5千~5万円未満 15.9% 4.5%
5万~7万5千円未満 15.7% 14.7%
7万5千~10万円未満 1.8% 8.6%
10万~12万5千円未満 8.1% 16.1%
12万5千~15万円未満 0.5% 6.5%
15万円以上 5.2% 30.1%
不明 16.2% 11%
平均 4.6万円 11.8万円
※(公財)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2018年度)より作成
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/2018honshi_all.pdf

在宅介護のメリット・デメリット

経済的だが家族の負担が大きい

経済的だが家族の負担が大きい

自宅で暮らしながら、家族や外部の訪問ヘルパーの介護を受けたり、日中はデイサービスなどに通所する在宅介護には、次のようなメリット・デメリットがあります。

【メリット】住み慣れた自宅で安心して介護が受けられる

介護を受ける本人にとって、これまでの住環境を継続しながら介護を受けられるのは大きな安心といえます。家族や友人に会いたくなったらすぐ会えるなど、孤独を感じる機会も少ないでしょう。

【メリット】必要な介護を選択できる

施設での介護はサービス内容が画一的になりがちですが、在宅介護なら、ホームヘルパーによる訪問介護サービスなど自分の要介護度や状況に合ったサービスを自由に選択して利用できます。

【メリット】施設より経済的負担が小さい

在宅介護の月々の介護費用の平均は4万6000円(※)。必要なサービスを絞り込んで自由に利用できる分、施設介護よりも負担が軽減される場合が多いでしょう。ただし要介護度が進むと介護費用も増える傾向にあるため、一概に安いとは言いきれません。

【デメリット】介護する家族に負担がかかりやすい

要介護度が上がるにつれて見守りや介助にかかる時間も増えるため、介護する家族の負担が大きくなります。終わりの見えない介護の疲労やストレスから「介護うつ」になるケースや、「介護離職」を選択するケースも見られます。

【デメリット】家族だけでは対応できない状況もある

家族が献身的に介護を行っても、素人である以上、できることには限界があります。特に、本人の認知症が進んで徘徊や暴力といった症状が出るようになると、家族で対応するのは難しいでしょう。

施設介護のメリット・デメリット

介護を任せられる安心はあるが、費用もかかる

介護を任せられる安心はあるが、費用もかかる

介護が必要な高齢者が入居できる施設には、民営の介護付き有料老人ホームや、公的な介護保険施設である特別養護老人ホームなどがあります。そのメリット・デメリットは次のとおり。

【メリット】プロによる介護で緊急時も安心

介護型施設ではスタッフによる24時間介護が受けられ、万が一のときも素早く対応に当たってもらえます。介護を受ける本人も、家族だと遠慮してお願いできないようなケアも、専門知識があるプロなら気兼ねなくお願いできる利点があります。

【メリット】家族の負担が減る

介護する側の家族にとっては、夜間の排泄や認知症の見守りなど、昼夜を問わず気を抜けない介護をプロにおまかせできるので心身の負担が軽くなります。施設入居後は時間や気持ちに余裕が生まれ、家族間で良好なコミュニケーションがとれるようになったという声も聞かれます。

【メリット】出会いや刺激が生まれる

施設で生活することで家族以外と触れ合う機会が増え、レクリエーションやサークル活動が楽しみにつながります。ただし、慣れない集団生活を苦痛に感じる場合もあるので本人の性格や環境による部分が大きいでしょう。

【デメリット】在宅より経済的負担が大きい

施設介護の月々の介護費用の平均は11万8000円というデータもあり(※)、施設によって差はありますが、それでも在宅介護に比べると費用がかかります。

※(公財)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2018年度)より作成
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/2018honshi_all.pdf

【デメリット】人気施設は入居待ちが長い

介護施設の中でも「特別養護老人ホーム」などの公的施設は、比較的安価なことから人気が高く、申し込みから入居まで数ヶ月~1年以上かかるケースも見られます。入居待ちは以前より少なくなったとはいえ、「狭き門」であることに変わりはありません。

ちょこっとメモ!ちょこっとメモ!

早めの施設選びが大事なワケは? じっくり探してよい施設に入居しよう。

早めの施設選びが大事なワケは? じっくり探してよい施設に入居しよう。

人気の特別養護老人ホームは「要介護3以上」が入居の条件であることから、介護を受ける本人や家族は、要介護3になって施設選びを始めるケースが多いようです。一方で、要介護3は日常生活で全面的な介助が必要なので、本人や家族がじっくり施設を探す余裕が失われることも。その結果、焦って「どこでもいいから入所できるところに」と、本人や家族のニーズにそぐわない施設を選ぶ可能性もゼロではありません。失敗を防ぐためにも、早い段階から施設の資料などを集めて比較・検討しておきましょう。

主な高齢者施設の種類

それぞれの特徴を知って比較・検討する

それぞれの特徴を知って比較・検討する

高齢者のための住居や介護施設は次のとおり。公的施設は比較的安価ですが、民営施設の費用はまちまちで、サービスの内容も異なります。費用のほかに、入居できる要介護度の目安や、受けられる介護サービスも含めて比較・検討しましょう。

民営施設

●介護付き有料老人ホーム
・入居できる要介護度の目安…要介護1~5※施設により異なる
・入居一時金の相場…0~数千万
・月額料金の相場…10~40万円

介護保険の基準を満たし、都道府県から特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設。 施設スタッフによる介護サービスが受けられます。要介護者中心ですが、自立から入居できる施設もあります。

●住宅型有料老人ホーム
・入居できる要介護度の目安…自立~要介護5※施設により異なる
・入居一時金の相場…0~数千万円
・月額料金の相場…10~30万円

食事、清掃、洗濯などの生活支援サービスが受けられます。介護が必要になったら、外部の介護事業者と契約を交わして介護保険サービス(居宅サービス)を利用します。

●サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
・入居できる要介護度の目安…自立~要介護3※施設により異なる
・入居一時金の相場…0~数十万円(敷金、礼金など)
・月額料金の相場…10~30万円

高齢者向けの賃貸住宅で、常駐スタッフによる安否確認や生活相談サービスが受けられます。介護が必要になったら、外部の介護事業者と契約を交わして介護保険サービス(居宅サービス)を利用します。

●グループホーム
・入居できる要介護度の目安…要支援2~要介護5
・入居一時金の相場…0~数百万円
・月額料金の相場…10~30万円

認知症の高齢者が少人数で共同生活をしながら、認知症ケアの専門スタッフから生活援助や身体介護のサービスを受けます。

公的施設

●特別養護老人ホーム(特養、介護老人福祉施設)
・入居できる要介護度の目安…原則として要介護3~5
・入居一時金の相場…0円
・月額料金の相場…10~15万円

施設サービスを利用できる介護保険施設の一つ。施設スタッフによる日常生活の介護や機能訓練などが受けられます。入居一時金は不要で、月額料金も安いため人気が高く、入居待ちになる場合がほとんど。要介護度や介護の状況などから「緊急性が高い」と判断されると、入居の優先順位が上がります。

●介護老人保健施設(老健)
・入居できる要介護度の目安…要介護1~5
・入居一時金の相場…不要
・月額料金の相場…10~15万円

施設サービスを利用できる介護保険施設の一つ。看護・医学的管理の下での機能訓練を受け、在宅復帰を目指します。病気などで長期入院していた高齢者が入居することが多いでしょう。

●介護医療院
・入居できる要介護度の目安…要介護1~5
・入居一時金の相場…不要
・月額料金の相場…5~15万円

施設サービスを利用できる介護保険施設の一つ。入居の対象は病気などで長期療養が必要な高齢者で、医療・看護と、介護の両方が受けられます。

●ケアハウス(軽費老人ホーム)
・入居できる要介護度の目安…一般型:自立~要支援2 介護型:要介護1~5
・入居一時金の相場…一般型:0~30万円 介護型:0~数百万
・月額料金の相場…一般型:6~20万円 介護型:6~20万円

自立した生活に不安があり、家族からの援助が受けられない高齢者が対象の施設。「一般型」と、都道府県から特定施設入居者生活介護の指定を受けた「介護型」があります。「一般型」は、介護が必要になったら外部の介護事業者と契約を交わして介護保険サービス(居宅サービス)を利用します。「介護型」では施設スタッフによる介護サービスが受けられます。

まとめると…まとめると…

長い介護期間を幸せに過ごすために、家族間で話し合ってベターな選択を!

長い介護期間を幸せに過ごすために、家族間で話し合ってベターな選択を!

長寿大国である日本は介護にかかる期間も長く、親や配偶者を10年以上介護しているという人も少なくありません。長い介護期間を本人や家族ができるだけ幸せに過ごすためには、どこで介護を行うのがよいか、家族間で話し合ってみましょう。

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最終更新日 2024年12月02日