ある日突然、介護に直面したら…
65歳以上の5~6人に1人が介護を受けている現在(※)。
「介護なんて先の話では?」と考える人も多いですが、介護は決して他人事ではなく、私たちにとって身近な問題です。ある日突然、家族の介護に直面したらどうすればよいのでしょうか。
- ※厚生労働省「2018年度 介護保険事業状況報告」
- https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/18/index.html
介護が必要になるタイミングは?
突然の入院、認知症の重症化…などのキッカケがある
突然、脳卒中などで入院して介護に直面することもあれば、ちょっとしたケガから気持ちがふさぎ込み認知症が進行したり、じょじょに体力が衰えて日常生活が困難になったり…と、介護が必要になるタイミングはさまざま。
厚生労働省の調査(※)によると、介護のキッカケとして最も多いのが「認知症」(17.6%)で、次いで「脳血管疾患(脳卒中)」(16.1%)、「高齢による衰弱」(12.8%)となっています。
65歳以上の介護のキッカケは?
1位 | 認知症 | 17.6% |
---|---|---|
2位 | 脳血管疾患(脳卒中) | 16.1% |
3位 | 高齢による衰弱 | 12.8% |
4位 | 骨折・転倒 | 12.5% |
5位 | 関節疾患 | 10.8% |
誰でも年齢を重ねるにつれて、認知症や脳卒中のリスクは高まります。特に認知症は初期症状を分かりにくく、本人や周りも気付かないうちに徘徊や暴力といった症状があらわれ、認知症と診断されるケースも少なくありません。「まだまだ元気だから」と油断せず、病気のサインを見逃さないようにしましょう。
- ※「2019年 国民生活基礎調査」より作成
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
どこに相談できる?
地域包括支援センターや役場の窓口に問い合わせを
いざ介護が始まると、まず何をすればよいのか、何が必要なのか分からずに困ってしまうケースも。そんなときに頼りになるのが「地域包括支援センター」です。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを地域でサポートするために設立された機関で、介護・保健・福祉の専門職が「高齢者や家族からの相談の受付」「介護予防マネジメント」「高齢者の権利擁護」「包括的・継続的マネジメント」を行っています。
また、自治体の役場の窓口でも介護保険の相談や申請を受け付けています。
「介護保険」って何?
40歳以上が加入し、社会で介護を支え合う仕組み
「介護保険」は、介護を必要とする本人ができる限り在宅で自立した生活を送れるように、適切な介護サービスを受けられる制度です。40歳以上の人が加入していますが、介護保険サービスを利用できるのは原則として65歳からです。ただし40~64歳の人でも、要件を満たせば介護保険サービスを利用できます。
介護保険を利用する第一歩は?
そのままでは利用できないので役場で申請を行う
介護保険に加入しているからといって、そのまますぐに介護保険サービスを利用することはできません。まずは本人、または家族・親族が役場の窓口か地域包括支援センターへ出向き、「要介護認定」の申請手続きを行いましょう。申請書は窓口でもらうか、自治体のWEBサイトからダウンロードできます。
【申請に必要なもの】※詳細は自治体の担当者にご確認ください。
・申請書
・介護保険被保険者証
・印鑑
申請からサービス利用までの流れ
まずは窓口へ! 調査を経て要介護度が判定される
申請は自治体の役場で受け付けていますが、地域包括支援センターに相談すると、申請書の記入のサポートや、申請の代行までお願いできます。
(1)基本チェックリストの記入
介護の相談で窓口を訪れると、介護を受けたい本人の健康状態や、日常生活の基本動作をはかる「基本チェックリスト」の記入を求められます。必ず本人が「はい」「いいえ」で回答しましょう。
↓
(2)要介護認定の申請
介護保険サービスを利用するのに必要な「要介護認定」の申請を行います。
↓
(3)訪問調査
介護を受けたい本人の自宅や入院先の病院などに自治体の調査委員が訪問し、聞き取り調査が行われます。 同時に、自治体から依頼を受けて、かかりつけ医が本人の心身の状況について記した意見書を作成します。
↓
(4)認定結果の通知
自治体が、聞き取り調査の内容やかかりつけ医による意見書をもとに必要な介護の程度(要介護度)を判定し、その結果を記した通知書を本人に通知します。
↓
(5)ケアプランの作成依頼
認定結果の通知書に記された要介護度にもとづいたケアプラン(必要な介護サービスを利用するための計画書)を作成します。介護を受ける本人や家族が作成してもよいのですが、プロに依頼したほうが安心です。
「要支援1・2」の認定なら、地域包括支援センターでケアプランを立ててもらいます。
「要介護1~5」の認定なら、地域のケアマネジャーを探してケアプランを立ててもらいます。ケアマネジャーについては、後ほど詳しく紹介します。
↓
要介護度別の状態の目安
要介護度 | 状態の目安 |
---|---|
要支援1 | 排泄、入浴など日常生活のほとんどのことを自分でできるが、身の回りの世話の一部に支援が必要。 |
要支援2 | 排泄、入浴など日常生活のほとんどのことを自分でできるが、身の回りの世話に何らかの支援が必要。 |
要介護1 | 立ち上がりや歩行が不安定であることがあり、排泄、入浴など日常生活の一部で介護が必要。 |
要介護2 | 立ち上がりや歩行が自力では難しいことが多く、排泄、入浴など日常生活で何らかの介護が必要。 |
要介護3 | 立ち上がりや歩行が自力では難しく、排泄や入浴、衣服の着脱などで全面的な介護が必要。 |
要介護4 | 日常生活の多くで全面的な介護が必要。 |
要介護5 | 日常生活の全般で全面的な介護が必要。 |
(6)サービス利用開始
本人と家族がケアプランに納得したら、それぞれの介護サービスを提供する事業者と契約を交わし、介護保険サービスの利用が始まります。
どんなサービスが利用できる?
在宅なら訪問型・通所型・短期入所型・その他のサービスが
介護保険サービスを大きく分けると、在宅で利用できるサービス(居宅サービス)と、保険介護施設で利用できるサービス(施設サービス)があります。
このうち、在宅で利用できるサービスは「訪問型」「通所型」「短期入所型」「その他」のサービスに分けられます。利用者の状態や、家庭で介護にあたる家族の生活によって必要なサービスはさまざまですから、ケアマネジャーと相談して、目的に合ったケアプランを立ててもらいましょう。
主な介護保険サービス
ちょこっとメモ!
ケアマネジャーってどんな人? ― 本人と家族に寄り添う介護の専門職
介護保険サービスを利用する上で、欠かせない存在が「ケアマネジャー(介護支援専門員)」です。ケアマネジャーの多くは医療や福祉のキャリアを持ち、介護を受ける本人や家族の希望を聞き取りながらケアプランを作成したり、本人とサービス事業者をつなぐ橋渡し役として連絡や調整を行ったりします。ケアマネジャーに対する報酬は介護保険から支払われるため、本人の自己負担はありません。
ケアマネジャーをどうやって探す?
実際に話してみて、対応がよく知識のある人に依頼する
ケアマネジャーは、地域の「居宅介護支援事業所」に所属しています。認定結果の通知書に事業所のリストが同封されているので、自宅近所の事業所か、身の回りに介護を受けている人の口コミで評判がよい事業所などに電話で問い合わせましょう。
ケアマネジャーは、これから始まる介護を一緒になって支えてくれるパートナーです。電話や対面で話し合って、「相談しやすい」「親身になって対応してくれる」「知識や情報が豊富」と感じたケアマネジャーと契約しましょう(契約後にケアマネジャーを変更することもできます)。
まとめると…
介護保険は「申請主義」。必要なときに行動する準備を整えて!
介護の中心となる介護保険は「申請主義」といって、介護を受けたい本人や家族が窓口で申請しなければ利用することができません。いつ、どのように始まるか分からない介護だからこそ、必要なときにサッと行動できる準備を整えておきましょう。お住まいの自治体の地域包括支援センターなど、介護について相談できる窓口も確認してみてください。
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最終更新日 2024年12月02日
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