これからのローン金利の動向は?
この3月、日銀がマイナス金利政策を解除すると発表しました。政策解除の影響は経済の隅々に及び、私たちの身近な暮らしでは、住宅ローンの金利が上昇する可能性もありそうです。住宅ローンの金利にまつわるこれまでの経緯と、今後金利が上昇した場合の影響を見ていきます。
そもそも金利はどうやって決まる?
固定は「長期金利」、変動は「短期金利」が基準となっている
銀行の店頭やWEBサイトには住宅ローンの金利が表示されており、その数値も銀行ごとにまちまちですが、各銀行が金利を設定する際には基準があることをご存じでしょうか?
・固定金利の基準は「長期金利」
固定金利を設定する基準となるのが、10年物国債に代表される「長期金利」です。
長期金利は市場の需給バランスをはじめ、景気や物価などさまざまな要素と連動して金利が変動します。
・変動金利の基準は「短期金利」
変動金利を設定する基準となるのが「短期金利」です。
短期金利は政策金利とも呼ばれ、日銀の金融政策によって金利が変動します。
・固定金利の基準は「長期金利」
上記の基準にもとづいて、各銀行が設定した住宅ローンの金利のことを「店頭金利(基準金利)」といいます。
実際に貸すときは店頭金利ではなく、店頭金利から借り手1人1人の返済能力などに応じて優遇幅を差し引いた「適用金利」となります。
金利水準にかかわる日銀の金融政策とは
景況に応じた金融政策が金利の上げ下げに影響する
住宅ローンの金利を知る上で、長期金利や短期金利に影響を及ぼす日銀の金融政策を見逃すことはできません。そもそも現在の日本が低金利となった背景には、日銀のマイナス金利政策を含む大規模な金融緩和政策があります。
・変動金利を引き下げた「マイナス金利政策」
2016年1月、日銀は長引く不況を食い止めるための政策として「マイナス金利政策」を導入しました。
マイナス金利政策とは、民間銀行が中央銀行(日銀)に預けている預金の一部にマイナス0.1%の金利をかける仕組みのこと。預金金利がマイナスになると、預金者である民間銀行が金利を支払わなければならないため、そのお金を企業や個人の貸し出しに回すようになります。こうして銀行の貸出金利が下がり、住宅ローンでは特に変動金利の引き下げが進みました。
・「長短金利操作」で固定金利・変動金利を引き下げ
続いて同年9月に、日銀は「長短金利政策(イールドカーブ・コントロール)」も導入しました。
イールドカーブ・コントロールは短期金利をマイナスにしながら、国債の金利を操作することで長期金利を0%程度に抑えるというものです。この政策によって長期金利と短期金利が下がり、それに連動する形で住宅ローンの固定金利と変動金利の水準も一段と低下するようになったのです。
・2024年3月にマイナス金利政策の解除が決定
日銀の大規模な金融政策によって住宅ローンの金利は歴史的な低水準となりましたが、2024年3月には国内の賃金や物価が上がる見通しが立ったとして、日銀はマイナス金利政策の解除を決定。同時に長短金利政策の撤廃も決めました。
マイナス金利政策の解除後は預金利子の引き上げが予想される一方で、住宅ローンの金利が上昇する可能性も考えられます。
ちょこっとメモ!
住宅ローンの固定金利は上昇の兆し。2023年の金利は年1%台後半が多い
マイナス金利政策の解除が大きな注目を集める一方で、住宅ローンの固定金利は2022年頃から上昇傾向が見られます。
日銀は2024年3月に長短金利政策の撤廃を決めましたが、その前段階として、2021年にこれまで0%程度に抑えてきた長期金利の変動幅の上限を0.25%、0.5%と徐々に引き上げ、2023年には1%としました。
長期金利の引き上げを受けて、各銀行も住宅ローンの固定金利を引き上げつつあります。長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を利用して返済期間21年~35年で新たに借りる場合、2022年1月時点では金利が年1%台前半という銀行が多かったのですが、2023年1月以降は年1%台後半が多くなっています。
変動金利もマイナス金利解除後は上昇か
すぐには大きく上昇しないが、ゆくゆくは上がる可能性も
住宅ローンの固定金利は2022年頃から上昇傾向にありますが、変動金利のほうは2024年3月時点では依然として超低金利が続いています。
しかしながら、この3月に日銀がマイナス金利政策を解除すると発表したことで、今後は変動金利も上昇する可能性が出てきました。変動金利の引き上げはマイナス金利政策の解除直後からではなく、日銀が追加的に利上げを行うタイミングで上昇すると考えられるため、すぐに変動金利が大幅に上昇する訳ではないでしょう。ただ、住宅ローン利用者の7割以上が変動金利を選択していることから、実際に変動金利が上がると家計に影響が出るかも知れません。
まとめると…
誰にも予測できない金利の動向。だからこそ、今後上昇するリスクを念頭に
住宅ローンの金利は経済や物価の情勢などにも左右されるため、これから金利がどのように動くかを正確に予測することはできません。けれども、マイナス金利政策の解除を控えた今、これまでの超低金利時代が長く続くとは考えないほうがよさそうです。次のページでは、実際に金利が上昇する局面で住宅ローンを選ぶときのポイントを紹介していきます。
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最終更新日 2024年10月30日
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