どこまで可能?戸建てとマンションのリフォーム
増築や改築には一定の制限やルールが設けられており、何でも好き勝手に建てられる訳ではありません。建物の安全性や快適性を損なわないよう、リフォームで「できること」と「できないこと」を、戸建て住宅とマンション別にそれぞれ解説します。
【戸建て】増築は面積と高さの上限に注意
建ぺい率・容積率や高さ制限の範囲で増築を行う
日本の住宅は、都市計画法や建築基準法といった法律によって、建物の規模に一定の制限が設けられています。なぜなら、みんなが勝手に大小さまざまな家を建ててしまうと日照や風通しが悪くなったり、街並みがゴチャゴチャな印象になったりするため、法律で制限することで建物の大体のサイズを定めているのです。
リフォームで増築をしたいときは、こういった法律の制限を超えないように、建ぺい率や容積率、建物の高さ制限などに注意する必要があります。
・建ぺい率・容積率を超える増築はできない
敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合を「建ぺい率」、敷地面積に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合を「容積率」といいます。
建ぺい率と容積率は用途地域ごとに上限が定められており、これによって建築できる建物のサイズが決まってきます。
たとえば、敷地面積が100m²で、その地域の建ぺい率50%、容積率80%の場合、建物面積50m²、延べ床面積80m²を超えて増築することはできません。
・建物の高さ制限を超える増築はできない
建物の面積に加えて、高さの制限もあります。たとえば用途地域が第1種・第2種低層住居専用地域の場合、建物の高さが10mまたは12mを超えてはならないとする絶対高さ制限が適用されます。このほかにも道路斜線制限、北側斜線制限などの制限があり、適用される制限によって、増築可能な高さや屋根の形状などが決まってきます。
【戸建て】間取り変更がしやすい構造・工法は?
木造軸組工法や軽量鉄骨造は大胆に間取り変更できる
部屋と部屋の間仕切り壁を取り払って広い1部屋にする、1つの部屋を2部屋に分ける…など、間取り変更をともなうリフォームは、建物の構造・工法によって、できることとできないことがあります。
昔からある木造軸組工法や、軽量鉄骨造などは、比較的自由に間取り変更ができる構造・工法です。一方で、木造のツーバイフォー工法や木質パネル工法の家は構造的に、間取り変更に制約がある場合が多いでしょう。
・木造軸組工法
間取り変更のしやすさ…◎(大がかりな変更も可能)
日本の戸建て住宅の中で、最も多く採用されている工法。木の柱や梁を組み合わせて建物の骨組みとし、床・壁・屋根などを取り付けます。
柱や梁など「線」で支える構造のため、壁の移動や撤去がしやすく、間取り変更の自由度が高いといえます。
・木造ツーバイフォー工法
間取り変更のしやすさ…△(変更に制約がある)
「ツーバイフォー」と呼ばれる2インチ×4インチの木材でつくったパネルを箱のように組んで床・壁・屋根を構成します。
床・壁・天井の「面」で支えることから、構造上どうしても動かせない壁が多く、思いどおりに間取りを変更できない可能性があります。
・木質パネル工法
間取り変更のしやすさ…△(変更に制約がある)
木質系パネルでつくった床・壁・天井などの部材を工場生産して、現場で組み立てる工法。上記の木造ツーバイフォー工法と同じく「面」で荷重を支えるため、壁の移動や撤去が難しいなど、間取りの変更には制約が生じます。
・軽量鉄骨造
間取り変更のしやすさ…〇(比較的変更しやすい)
プレハブ工法とも。薄い鋼材(軽量鉄骨)の柱や梁で骨組みをつくり、補強として丸い鋼材(ブレース)を筋交いに入れます。壁を取り払って、広々とした空間や大きな開口をつくるなど大胆な間取り変更が可能ですが、構造上ブレースを抜くことはできません。
・鉄筋コンクリートラーメン構造
間取り変更のしやすさ…〇(比較的変更しやすい)
鉄筋コンクリートの柱や梁で建物を支える構造です。室内に柱や梁の出っ張りが目立ちますが、間取りの変更の自由度は比較的高く、壁を取り払って開口を広くとったり、大空間をつくるなど比較的容易に間取りの変更が可能です。
・鉄筋コンクリート壁式構造
間取り変更のしやすさ…△(変更に制約がある)
鉄筋コンクリートでつくった壁と床を構造体とします。柱や梁の出っ張りがなく、室内がすっきりした印象になりますが、構造壁を動かすことができないので、間取りの変更に制約が出る可能性があります。
ちょこっとメモ!
10m²以上の増築は建築申請が必要。準防火地域、防火地域の増改築も申請を
建物を新築する際や、一定規模の増築や改築を行う際には、その建物が都市計画法や建築基準法に適合していることを自治体に確認してもらうために「確認申請」を行わなければなりません。
増築や改築で確認申請が必要になるのは、「10㎡以上の増築工事」と「準防火地域、防火地域の増築・改築工事」のケース。なお、マンション専有部分の改築リフォームの場合は、確認申請は不要です。
確認申請は、増築や改築を依頼する業者に手続きを代行してもらうのが一般的です。自分の家の増築や改築に確認申請が必要かどうか、必要な場合は費用なども依頼先に確かめておきましょう。
【マンション】改築できるのは専有部分だけ
構造壁以外なら取り払って間取り変更できる
マンションには共用部分と専有部分があり、リフォームができるのは専有部分に限られます。また、床面積を増やす増築はできませんが、構造壁以外の壁を取り払うことができるため、間取りを変更する改築は可能です。
・専有部分とは?
部屋の内側の居住スペースをはじめ、床・壁・天井の仕上げ材の下側、設備や配線、配管が専有部分となり、リフォームで手を加えることができます。
・リフォーム不可の共用部分とは?
基本的に、専有部分以外の場所はすべて共用部分となります。玄関ドアのように、室内側のみ塗り替えがOKとなるものもあるので、リフォームできる部分とそうでない部分を確認した上で計画を立てましょう。
【リフォーム時に注意したい共用部分】
□玄関ドア…取り換えはできませんが、室内側を塗装することは可能。
□サッシ…取り換えはできませんが、内窓の取り付けは可能。
□ベランダ…避難経路となるため、リフォームをしたり、大きなものを置いたりすることは不可。
・管理規約の確認も忘れずに
マンションによっては、専有部分であってもリフォームできない箇所や使ってはいけない素材があるなど、リフォームの禁止事項が定められていることも。また、工事の時間帯や材料の搬入方法、管理組合への届け出方法といったルールもあるので、リフォームの前には必ず管理規約に目を通しておきましょう。
まとめると…
不満解消のためにできることは? 依頼先とよりよい解決策を見つけよう
既存の住宅に手を加える増築や改築では、「できること」と「できないこと」を知ることは大切。とはいえ、できないことばかりに気を取られて、本来の目的である「今住んでいる家の不満を解消する」ことを見失わないよう注意しましょう。
たとえ希望する変更ができないと判明しても、住まいの不満を解消する解決策は一つではないかも知れません。工事依頼先とよく相談して、よりよい解決策を見つけてください。
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最終更新日 2024年10月30日
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