注文住宅の特徴と、業者選びのポイント
注文住宅といえば「自由な家づくり」のイメージがありますが、依頼する業者や住宅商品によっては、思いどおりのオーダーができないことも。注文住宅のメリット・デメリットを把握したうえで、依頼先の特徴や、工法などの知識を押さえましょう。
注文住宅の主な特徴は?
設計の自由度が高く、自分好みの家を建てられる
土地と建物をセットで購入する建売住宅とは違って、注文住宅は、先に土地を取得して、その土地の上に家づくりをします。
一から家を建てられるので、工法や材料、必要な設備を選択したり、外観や内観を好みのデザインにできるのが特徴。間取りについても、家族構成やライフスタイルに合わせて住みやすい間取りを実現できます。
このように比較的自由に家を建てられる注文住宅ですが、自由度の高さゆえに打ち合わせなどに時間がかかり、必要な手順も建売住宅より多くなります。特に土地探しから始める場合は、入居までの期間が1年~1年半くらいかかると考えておきましょう。
注文住宅のメリット
- ・工法や材料、設備などを選べる
- ・自分好みのデザインにできる
- ・希望を反映した間取りを採用できる
- ・建築工事中の工程や状態を確認できる
注文住宅のデメリット
- ・土地を取得していない場合は土地探しも必要
- ・打ち合わせなどの時間と手間がかかる
- ・完成まで日当たりや風通しなどを確認できない
注文住宅はこんな人におすすめです
- ・すでに土地を取得している
- ・取り入れたい材料、設備、デザインなどがある
- ・時間や手間がかかっても、こだわりの家をつくりたい
- ・家づくりの業者を選びたい
注文住宅の「ありがちな誤解」
誤った知識のままだと、不満や後悔につながるかも
人生の中で家づくりを経験する機会はそう多くないので、「注文住宅はこういうもの」というイメージが先行しがち。注文住宅でよくある誤解と、実際の対応についてチェックしましょう。
誤解①:「建売住宅よりもコストがかかる」
実際は…工夫次第でコストを抑えられます!
建売住宅では規格化された材料や設備などを大量に仕入れてコストダウンをはかる一方で、注文住宅では材料や設備などを一つ一つ選んで取り寄せるため、トータルのコストが高くなる傾向があります。
とはいえ、自由度の高さを活かしてリーズナブルな材料や設備を選べば、コストを抑えて家を建てることが可能。打ち合わせの際にプランナーに相談すれば、上手なコストダウンのコツなどを教えてもらえるので、こだわりたい部分にはお金をかけて、節約したいところは節約するなど、予算やこだわりに応じた家づくりを行えます。
なお、近年はローコストを売りにした注文住宅も増えており、建売住宅に近い価格帯の注文住宅も見られます。コスト重視で注文住宅を建てるなら、ローコスト住宅の取り扱い業者を探してみるのも一考です。
誤解②:「何でも自由に決められる」
実際は…業者によって自由度が変わるので注意!
何でも自由に決められるイメージのある注文住宅ですが、家を建てる土地や建物は「都市計画法」「建築基準法」などの法律によって、建築可能な条件やサイズが決まっています。また、地域によっては外観の色やデザインなどが制限されることもあります。
加えて、依頼する業者によっても家づくりの自由度が変わってきます。
住宅建築を手がけるハウスメーカーや工務店は、それぞれ採用する工法が異なりますが、たとえば2×4工法や木質パネル工法の場合、構造上必要な壁を取り払うことができないので、壁のない大空間や壁一面の窓といった希望に対応しづらいなど、間取りの自由度はどうしても低くなってしまいます。
希望のミスマッチを防ぐには、業者選びの段階で、その業者が得意とする工法や設計デザインなどを考慮したうえで検討することが大切です。どうしても譲れないこだわりがある場合は、実現可能かどうか早めに問い合わせておきましょう。
家づくりの「業者」の特徴を知る
各業者のメリット・デメリットをチェック!
家づくりを依頼する業者は、「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」の3つ。
いずれもメリット・デメリットがあるので、各業者の特徴や家づくりに対する考え方を理解した上で、自分たちに合う依頼先を見つけましょう。
ハウスメーカー
土地探しから設計、施工、アフターサービスまでワンストップで行います。全国に展開する大手企業が多く、豊富な実績やノウハウを生かして規格化した住宅商品を提供しています。
ハウスメーカーの家づくりは、一からつくりあげるというより、コンセプトやデザインが気に入った住宅商品を選んで、標準仕様の間取りパターンに変更を加えたり、必要な設備を選んだりしてプランを組むスタイル。規格品を組み合わせてつくるため工務店や設計事務所よりも自由度は低いですが、工場で部材を大量生産することで品質にムラがなく、工期も比較的短くて済みます。
ハウスメーカーのメリット
- ・展示場やカタログを見て好みの住宅商品を選べる
- ・仕上がりの品質が均一で工期も短い
- ・大手企業の安心感がある
- ・土地探しからアフターサービスまで窓口を一本化できる
ハウスメーカーのデメリット
- ・細かい要望に対応してもらえないなど、設計自由度は低め
- ・広告宣伝費が高額のため、住宅価格も割高になることが多い
- ・標準仕様からのオプション追加が高くつく
ハウスメーカーはこんな人におすすめです
- ・大手のマニュアル化されたサービスを受けたい
- ・一から考えるより、決まった選択肢の中からプランを選びたい
工務店
家の設計、施工、管理までを行う工務店。多くが地元密着の中小企業ですが、近年は広い地域で店舗を多数展開する企業もあります。
木造軸組工法(木材を組み上げる日本の伝統的な工法)を得意とする業者が多く、細かな要望にも対応しやすいなど、設計の自由度は高め。一方で、最新技術や斬新なデザインの提案力が弱いこともあるため、施工例をチェックして、希望するデザインやテイストの住宅を手掛けているかどうかが、自分に合った工務店を見つけるポイントとなります。
大々的に広告宣伝を行わない分、ハウスメーカーよりも費用は割安です。
工務店のメリット
- ・設計自由度が比較的高く、細かい要望に対応してもらえる
- ・予算に合わせた材料や設備など、コスト面の融通が利きやすい
- ・職人さんとの距離が近い
- ・地元密着なので入居後も相談しやすい
工務店のデメリット
- ・斬新なデザイン提案が苦手なことがある
- ・広告宣伝が少ないため、自分でHPやチラシ、施工現場などを見て探す必要がある
- ・業者によってはアフターサービスに注力していないことも
工務店はこんな人におすすめ
- ・コストを抑えながら、自由度の高い家づくりがしたい
- ・地元の業者に家づくりを依頼したい
設計事務所
設計事務所では主に建物の設計と管理を手がけ、建物を施工することはありません。そのため、実際の施工は工務店が行います。
家づくりの工法や、材料、設備、デザインの制限はなく、建築家が建て主と話し合いながらオンリーワンの家づくりを実現します。また、予算が限られていたり、変形地や狭小地といった土地の制約があっても、独創的なアイデアで対応しやすいのも特徴です。
注意したい点としては、自社施工ではないので工期が長くなります。また設計事務所ごとに設計やデザインの傾向が異なるため、自分たちのつくりたい家に合うかどうかを考えてから依頼するようにしましょう。
設計事務所のメリット
- ・自由度が高く、オンリーワンの家づくりができる
- ・変形地などの難条件にも柔軟に対応してもらえる
- ・斬新なアイデアも期待できる
- ・建て主の立場に立って施工を管理してくれる
設計事務所のデメリット
- ・デザイン、材料、設備などにこだわるとコストが高くなりがち
- ・工期が長い
- ・オンリーワンなので、完成後をイメージしにくい
設計事務所はこんな人におすすめ
- ・じっくりと時間をかけて唯一無二の家をつくりたい
- ・予算や土地などの制約がある
家づくりの「工法」の特徴を知る
工法の違いが、コストや間取りに影響する
家づくりの工法は、建物の骨組みとなる構造材によって「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」の3つに大別されます。
業者によって採用する工法や、工法の得手・不得手があるため、自分たちの理想に近い家づくりができる工法の業者を選びましょう。
木造
木材は日本の戸建て住宅で最も多く採用されており、断熱性・調湿性・耐火性にすぐれています。
他の材質より安価で、軽量なので地盤工事や基礎工事が比較的安く済むなど、建築コストを比較的抑えやすいのも特徴です。
【木造の主な工法と特徴】
・木造軸組工法
昔ながらの伝統的な工法で、木材の柱や梁で建物の骨組みをつくります。
柱や梁で建物を支えるので広い開口をとりやすく、間取りの自由度が高い工法です。将来の増改築にも対応しやすいでしょう。
・2×4工法
2インチ×4インチの木材の枠組みに合板を張り、床・壁・天井を構成したものを工場で生産し、現地で組み立てる工法です。
面で支える構造のため地震に強いですが、壁のない大空間がつくりにくいなど間取りの自由度は低く、増改築の対応も難しいことがあります。
・木質パネル工法
木製パネルでつくった床・壁・天井を現地で組み立てます。
2×4工法と同様、工場生産なので品質が安定しており工期も短めですが、間取りの自由度は低くなります。また、変形地や狭小地での対応も難しいことがあります。
鉄骨造
頑丈で加工しやすい鋼材の柱や梁で建物を支えます。
戸建て住宅で多く用いられているのは、厚さ6㎜未満の「軽量鉄骨」と呼ばれる鋼材。木造よりも強度や耐震性が高く、工場生産のため材質も均一です。
【軽量鉄骨造の特徴】
軽量鉄骨造は部材を工場生産するため、品質にバラつきがなく、工期も短いです。ただし、施工の際に大型トラックやクレーン車が入るスペースが必要になるため、土地や道路の制限が多い変形地や狭小地などでは対応が難しいこともあります。
鉄筋コンクリート造
コンクリートと鉄が一体となった鉄筋コンクリートを使用します。
鉄筋コンクリート造は、耐震性・耐火性・耐久性にすぐれており、高層ビルなどに用いられます。戸建て住宅での採用は少数です。
【鉄筋コンクリート造の特徴】
鉄筋コンクリートの壁と床で構成する壁式構造は、柱や梁の出っ張りがなく、室内がスッキリとした印象になります。
現地施工なので変形地や狭小地にも対応可能ですが、工期が長く、木造や鉄骨造よりも建築コストがかかります。
まとめると…
「できる・できない」の範囲を確認。無理なく満足度の高い家づくりを!
建売住宅よりも自由度が高いとされる注文住宅ですが、一口に注文住宅といっても何でも自由に決められる訳ではなく、特に依頼する業者によって「できること」と「できないこと」の範囲は大きく異なります。
単に「自由度の高さ」を求めるのではなく、自分たちが住みたい家についてよく考えたうえで、希望を叶える業者を選びたいものですね。次のページでは、家づくりの希望を具体化するプランニングと、材料選びのポイントを紹介していきます。
【関連記事】
- 理想のマイホームを手に入れるための「物件見学」のチェックポイント
- 注文住宅の「土地選び」のポイント
- 後悔しない! 二世帯住宅を建てるポイント
- 不動産広告の「省エネ性能ラベル」とは?
- 住宅ローンを借りる前に知っておきたい「金利」の話
- お気に入りの部屋をつくるインテリアの選び方
- オーダーメイド住宅で理想の家づくり
- 新築・増改築のときに気を付けたい法律のポイントは?
- 日差しと風、快適な室温のある住み心地のよい家づくり
- 土地を購入する前に知っておきたい法令上の制限について
- 狭小地・変形地に家を建てる
- 「増築」「改築」で住みづらさや不満を解消!
- 万一の災害時に、自分や家族の安全を守る「“災害に強い家”に住みたい!」
- 残された家や土地をスムーズに受け継ぐ「不動産相続の基礎知識」
- 建物の構造が違えば、性能や住み心地も変わる!「木造」と「鉄骨造」、選ぶならどっち?
- 平屋を検討する際に知っておきたいメリット・デメリット!『平屋の家』に住みたい!
- おしゃれで居心地のよい空間をつくる、住まいのカラーコーディネート
- 省エネ住宅なら少ないエネルギー消費で室内環境が快適!
コラムを探す
新着コラム
最終更新日 2024年10月30日
- 購入を検討している物件を現地でチェックする「物件見学」は、家探しの重要なステップの一つ。物件見学時にきちんと確認したいポイントを押さえて、家選びを成功させましょう!
- 災害は、ある日突然やってきます。いざというときにペットと自分を守れるように、飼い主さんができる「日頃の備え」と「災害時の行動」を学んでいきましょう。
- 注文住宅を建てる上で、大切にしたいのが「土地選び」。土地選びで失敗しないための準備や物件情報の見方、現地見学のチェック項目など、知っておきたいポイントをまとめました。
- 共働き家庭が主流となった今、親世帯と子世帯が同じ家に住む「二世帯住宅」を選択する人が増加中。気持ちよく暮らすための間取りから、相続時のアドバイスまで、二世帯住宅を成功に導くポイントを紹介します。
- 新築や賃貸物件の広告に、新たに掲載されるようになった「省エネ性能ラベル」。それぞれの項目の意味と見方を理解して、物件の比較・検討に役立てましょう!
- 侵入犯罪を防ぐ家のポイントや、暮らしの心構えなど、大切な我が家を守るために実践したい防犯対策を紹介します。
- 住まいの情報ナビ
- 住まい探しのコツや建物の知識
- オーダーメイド住宅で理想の家づくり
- 注文住宅の特徴と、業者選びのポイント