2,011年の東日本大震災と、その後の原発事故に伴う電力不足などの影響で、住まいの省エネ性と耐震性への取り組みに大きな関心が寄せられるようになりました。
「省エネ性と耐震性を高める」というと、新築や、大がかり工事でなければ無理と思っている人もいらっしゃいますが、リフォームでも地球に優しく、地震も強い住まいを作りあげることが可能です。
私たちが暮らす現代の日本の住宅において、「省エネ」も「耐震性」も忘れてはいけないテーマ。けれども実際には「どこから手をつけて良いか分からない」などの理由で、特に何もしていない......という人も多いのではないのでしょうか。
そんな時こそ、今ある住まいに手を加えて、省エネ住宅や耐震住宅にステップアップさせるリフォームの出番です。住まいの省エネ性が高まれば、居住空間が便利になるだけではなく、家計もお得になります。また、耐震性にすぐれた住まいは、いざと言う時の安心に繋がり、家族の暮らしをさらに快適にしてくれることでしょう。
新築と同様に、省エネ性や耐震性に配慮したリフォームを行うと、さまざまな税の優遇措置が用意されています。これらの制度を上手く利用しながら、賢くリフォームを行いましょう。
- 夏の暑さ、冬の寒さが気になる
- 月々の水光熱費の出費を抑えたい
- 地震から家族を守りたい
省エネ住宅の定義はいろいろありますが、分かりやすくまとめると「限りある資源を無駄使いしないために工夫をこらした家」です。電気を生みだす元となる化石燃料や、飲用や生活用に欠かせない水は、この「限りある資源」に該当します。特に化石燃料は発電の際、地球温暖化の原因となるCO2を排出するため、電気の使用量を減らしたり、太陽エネルギーを電気に変える太陽光発電システムを設置したりすることが、省エネに繋がるという訳です。
実は、家庭で使用する電気の4分の1はエアコンが占めていると言われています。住まいの暑さ、寒さを緩和して、エアコンの効率を高めるだけでも、省エネに貢献できます。
住まいの中で、熱の出入りが最も多いと言われるのは「窓」。冬には室内の約50%もの熱が、窓を通じて外に逃げてしまうのですから、熱の流出量のすごさがお分かりいただけるのではないでしょうか。室内の熱の流出を防ぐためには、熱を伝えにくい複層ガラス(二重ガラス)などの取り付けが有効です。
冬の暖かさを逃がさない家は、同時に夏の暑さの侵入も防いでくれます。冬は暖かく、夏は涼しい住まいで冷暖房の効率をアップさせて、省エネ効果を高めましょう。
従来の住宅の多くで採用されている内断熱工法は、経年によって断熱材が劣化し、断熱効果が落ちてきます。これによって、住まい全体の断熱効果が下がり、冬は寒く、夏は暑いという悪循環を引き起こしてしまいます。
そこでリフォームによって壁の断熱材の入れ替えが必要になるのですが、この工事は壁を剥がすなど大がかりな工事になるため、壁の改修工事と併せて行うと良いでしょう。また、断熱機能もある遮熱塗料を屋根や外壁に塗って、冬の寒さと夏の暑さを和らげるという方法もあります。
太陽の光を集めて発電した電気を家庭で使用し、余った分(余剰電力)は電力会社に買い取って貰える太陽光発電システム。スレート、瓦、金属など、屋根材を問わず搭載することができるので、リフォームでも簡単に導入することができます。
太陽光発電は、メーカーや日照時間、立地条件、屋根の向きなどによって発電量に差が出るため、各メーカーの年間予想発電量の目安などを参考にすると良いでしょう。ただし、設置にあたっては屋根の耐荷重などを事前に調べる必要があります。
住まいの耐震性が気になったら、まずは専門家の耐震診断を受けてみましょう。自治体の担当窓口に問い合わせると、耐震診断を行っている地域の工務店や建築設計事務所を紹介してくれます。
日本建築防災協会による「木造建築の耐震診断と耐震補強」のガイドラインによれば、診断方法には非破壊調査の「一般診断法」と、より詳細な破壊調査を含む「精密診断法」の2種類があり、通常は前者の一般診断法が用いられる場合が殆どです。
耐震診断そのものは有料ですが、各自治体で耐震診断に補助金を設けているところがありますので、ぜひ問い合わせてみましょう。また、自治体が主催する「耐震診断相談会」といった催しで、図面を持参すると無料で簡易の耐震診断が受けられるケースもあります。
住まいの築年数や劣化の状態はさまざまであり、それによって耐震リフォームの方法も変わってきますが、以下に代表的な工事を挙げてみました。耐震診断の結果を踏まえて、劣化の具合や予算を見ながらどの工事を優先すべきか、専門家と相談を行ってください。
基礎にヒビ割れがあれば補修をして、地震による家屋の倒壊を防ぎます。気を付けたいのは、築年数の古い住宅で、基礎に鉄筋がない「無筋基礎」の場合です。無筋基礎であれば、コンクリートを打ち増すなどの方法で基礎を有筋化する必要があります。
屋根に日本瓦などの重い材料を使用していると、重みで家が倒壊したり、地震の揺れで瓦が落下したりする可能性があるため、軽量で地震に強い屋根材に取り替える方法があります。
壁の強度が十分でない場合は、その部分に筋かいを入れたり、耐震パネルを取り付けたりして耐力を強化します。また、壁の量が少ない場合は耐力壁を増やして家全体のバランスを整えます。
木造住宅の土台、床下は、築年数の経過とともにシロアリや腐朽菌による被害で腐食し、耐久性が下がるケースがみられます。腐ってしまった土台をすべて取り除き、防腐・防蟻処理を施した木材を新たに交換しましょう。
古い設備や故障した部分を修繕するリフォームとは異なり、省エネ性・耐震性に関するリフォームは、工事後の快適さが思い描きにくいために後回しになりがちですが、実は住み心地や暮らしの安全に直結します。ほかのリフォームを行う際に、省エネリフォーム、耐震リフォームも同時にできないか検討してはいかがでしょうか。
耐震性については、住まいだけではなく今住んでいる地盤の良し悪しも大きく影響します。
一般的に台地・段丘、自然堤防、扇状地といった地形は地盤が良好とされていますが、溺れ谷、後背湿地、埋立地などの地形は地盤が弱く、地震が起きると特に激しい揺れや、液状化現象をはじめとする地盤災害が起こる可能性も指摘されています。
これらの地形については、国土地理院ホームページの「土地条件図」で閲覧することもできるので参考にしてみてください。
- 国土地理院ホームページ「土地条件図」
- http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/lc_index.html
- ※左下の「電子国土で見る土地条件図」→「印刷図の閲覧はコチラ」→「2万5千分1土地条件図」から調べたい地域を選択
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