鍋料理の始まりやブームの変遷について 鍋の歴史
私たちが普段食べている鍋料理は、いつ、どのようにして誕生したのでしょうか。
鍋料理の歴史を振り返ってみましょう。
古代~
山や海の幸を煮炊きして調理
鍋料理の起源は古く、縄文~弥生時代には食べ物を入れた土器を火にかけて煮炊きをする習慣がありました。
食べ物に火を通せば、そのままでは硬くて食べられないものもやわらかくなって食べやすくなり、栄養の吸収率も高まります。山海の幸に恵まれた日本では、旬の食べ物を煮炊きすることで旨みや栄養を上手にとっていたのでしょう。
ただし、これらの煮炊き料理はほとんどの場合、調理後に取り分けられて1人ひとりに運ばれるスタイルであったため、現在のように食卓で一つの鍋を囲む鍋料理とは別物でした。
江戸時代~
小鍋が流行し、鍋料理専門店も誕生!
江戸時代になると、都市部では小鍋を七輪の火にかけて煮込みながら味わう「小鍋仕立て」の料理が登場し、1人鍋をつつく習慣が始まりました。
さらに人口の増加により外食産業も発達し、鍋料理を扱う専門店もあらわれるようになりました。当時は肉食が禁止されていましたが、「薬食い」として「ぼたん(イノシシ)鍋」「もみじ(シカ)鍋」を提供する獣肉店や、湯豆腐、ドジョウ鍋、ねぎま鍋など特定の鍋料理の看板を掲げる店もあり、美味しいもの好きの江戸っ子たちに愛されていたようです。
ちなみに享和元年(1801年)にはドジョウ鍋で有名な「駒形どぜう」が、天保元年(1830年)にはアンコウ鍋の「いせ源」が開店するなど、現在に残る名店が誕生しています。
おでんの始まりは豆腐の田楽
現在でも人気の鍋料理、おでんが誕生したのも江戸時代です。
もともと豆腐に串を刺して、甘い味噌などをつけて焼く「田楽(でんがく)」という料理があり、これが江戸時代になって、豆腐を醤油だし汁で煮込む「煮込み田楽」となりました。次第に豆腐の串を外して、こんにゃくや里芋などを加えて煮込むようになり、現在のような「おでん」の形になりました。
明治時代~
文明開化から起こった牛鍋ブーム
明治維新後に欧米の文明が入ってくると、それまで仏教の戒律により禁止されていた肉食が推奨されるようになりました。これによって東京や横浜に「牛鍋」を出す専門店が次々とあらわれ、庶民の間で牛鍋ブームが巻き起こります。
牛鍋とは鉄製の鍋で牛肉とネギを煮込んだ料理で、味噌または醤油仕立ての和風の味付けであったため、西洋料理に不慣れな庶民にも受け入れやすいものでした。明治4年(1871年頃)に出版された仮名垣魯文(かながきろぶん)の小説「安愚楽鍋(あぐらなべ)」では、牛鍋屋で欧米文明について談義する人々の様子が描かれており、当時の関心の高さがうかがえます。
家族で一つの鍋を囲むスタイルに
欧米文化の影響で、日本の家庭の食卓にも変化があらわれました。
古代より日本では1人ひとりの膳で食事をとる「銘々膳(めいめいぜん)」が一般的でしたが、欧米のダイニングテーブルのように家族でちゃぶ台を囲んで食べるようになり、鍋料理も小鍋でいただく1人鍋から、一つの大きな鍋を家族で囲むようになりました。
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最終更新日 2024年10月30日
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