【専門家監修】新築アパート利回り目安を解説!利回りは上げられる?

2021年10月30日

アパート経営を始めるにあたり注意したいのが利回りです。投資額に対する収益の割合を利回りといいます。アパート経営の利回りは、新築・中古、立地、間取りなどで異なます。どれくらいを目安にすればよいのでしょうか。新築アパートの利回りの目安を示すとともに、新築と中古の利回りの比較、新築アパートの建設費、利回りを高くする方法などを解説いたします。

新築アパートの利回りの目安はどのくらい?

新築アパートの表面利回りは次の計算式で求められます。

・表面利回り=年間賃料÷(土地代金+建築費)×100

ただし、これは表面利回りです。諸経費を考慮していないため、正確性はそれほど高くありません。正確性を重視したい場合は、年間賃料から固定資産税・損害保険料・管理委託料などを差し引いて求める実質利回りを利用しなければなりません。新築アパートにおける実質利回りの目安は5%程度です。実質利回りが5%以上あれば安心と言えそうですが、空室が発生すると想定通りの賃料収入は得られません。したがって、物件を選ぶときは、利回りだけでなく空室リスクも考慮する必要があります。ちなみに、空室リスクが低い物件でも、利回り3%程度は欲しいところです。

新築と中古では利回りが有利なのはどちら?

投資用アパートの選択肢は、新築と中古に分かれます。双方にメリット・デメリットがあるため、利回り面でどちらが有利ということはできません。それぞれの特徴を理解したうえで選択することが重要です。

新築アパートは、家賃を高く設定できるうえに空室リスクも低いため、年間賃料収入を大きくできる傾向があります。また、建物が新しいため、中古アパートほどの修繕費もかかりません。建築費を抑えられれば、利回りを高くできる可能性があります。毎月のローンの返済額を抑えやすい点も魅力です。中古アパートに比べ、金利の優遇を受けやすく、返済期間を長くとれます。

中古アパートは、新築アパートに比べて物件購入価格を抑えやすい傾向があります。空室率を下げて管理費や修繕費などの諸経費を抑えられれば、利回りは高くなるでしょう。ただし、年間賃料収入が少ないため新築アパートと同程度の経費がかかると、利回りが低くなるだけでなく税引き前キャッシュフローも減ってしまいます。また、新築アパートよりも融資の条件が悪くなりやすい点にも注意が必要です。新築アパートに比べると、難易度はやや高いと言えるかもしれません。

新築アパートの建築費用の相場は?

新築アパートの利回りと深く関わっているのが建築費用です。このことは、利回りの計算式を考えればわかります(表面利回り=年間賃料収入÷総投下資本)。建築費用が高くなると、利回りは下がります。同じ条件で利回りを高くしたい場合、家賃も高くしなければなりません。しかし、設定した家賃が周辺物件の相場を超えると、空室リスクが高くなってしまいます。アパートを新築する場合、建築費用を慎重に検討することが必要です。

アパートの建築費用の相場は構造で異なります。木造の相場は75~100万円/坪程度、軽量鉄骨造の相場は85~105万円/坪程度、鉄筋コンクリート造の相場は90~120万円/坪程度です。構造計算費用、地盤改良等の費用が上乗せされるため、3階建ての坪単価は、2階建てより5~10%程度高くなります。

すでにアパート建築用の土地を所有している場合、土地購入費用がかからないため利回り面では有利です。相場に沿った建築費用であれば、適正な利回りに落ち着くでしょう。とはいえ、1億円前後の投資になるケースもあるため、金融機関から融資を受ける場合も十分な自己資金が必要です。自己資金の目安は、建築費用の10~30%程度といわれています。

新築アパートの利回りを上げるには?

新築アパートの利回りは、いくつかの方法で上げられます。基本の方法と言えるのが、アパートの建築費用を抑えることです。アパートの建築費用は、複数の建築業者から見積もりを取って比較することで抑えられます。利回りだけを考えると、もっともリーズナブルな建築業者を選ぶことが重要です。

間取りを工夫することでも、利回りを上げられる可能性があります。1部屋の間取りを小さくすることで賃料単価を上げられるからです。賃貸物件の場合、面積が倍になっても家賃は倍になりません。したがって、1部屋の間取りを小さくして部屋数を増やすことで年間賃料収入を増やせる可能性があります。

間取りを小さくすることで、基本的には、単身者がターゲットになる点も魅力です。戸建てや分譲マンションと競争する必要がなくなり、住宅ローン返済額などを気にせず家賃を設定できます。ただし、居住者の入れ替わりが頻繁になり、原状回復工事や入居者募集の費用が増えるというデメリットも考えられます。

以上のほかでは、競合物件にはない付加価値をプラスすることも有効です。入居者のニーズにマッチしている付加価値をプラスすることで、賃料を上げられる可能性があります。具体的には、ペット可、防音、宅配ボックス、インターネット無料などが考えられます。

中古アパートのメリットとは?

中古アパートには、新築アパートと異なるメリットがあります。最も大きなメリットは、物件価格が安いため初期費用を抑えられることです。ただし、リノベーションなどをすると、初期費用は高くなります。すでに入居者がいるため、購入直後から賃料収入を得られる点も魅力です。購入する中古アパートによっては、入居者募集活動を行わなくても安定した賃料収入を得られます。

新築アパートより出口戦略を描きやすいこともメリットと言えるでしょう。出口戦略を描きやすい理由は、資産価値の下落率が緩やかだからです。大きな差損は生じにくいため、売却を含めた出口戦略を描けます。新築アパートに比べて賃料が下落しにくい点も見逃せません。アパートの賃料は、築15~20年頃からほぼ横ばいになります。築20年を超えると大幅な賃料下落はほとんど起こりません。したがって、安心してアパート経営を行えます。

以上のほかでは、短期間で大きな節税効果を得られる点もメリットとして挙げられます。中古アパートは耐用年数が短いため、1年間の減価償却費が高額になります。

知識をもって適切な判断を!

新築アパートの利回りは、実質利回りで5%が目安です。具体的な利回りは、年間賃料や諸経費、建築費などで異なります。投資用アパートには、中古物件もあります。新築と中古はメリット・デメリットが異なるため、どちらが有利と言うことはできません。正しい知識をもって、適切な判断を下すことが重要です。まずは、不動産投資のプロに相談するところから始めてみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

髙野 友樹
髙野 友樹様

公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。
不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。
現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。


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