【専門家監修】アパート一棟買いで多い失敗は?対処法と成功のコツ

2021年5月30日

まとまった資金があるならアパートの一棟買いは大きな利益につながる投資だといえます。ただし、一棟買いにはリスクもつきまといます。特に、不動産投資についての知識やノウハウを十分には持ち合わせていない人は失敗しやすいでしょう。この記事では、アパート一棟買いでよくある失敗例や解決策、成功に必要なポイントなどを解説していきます。

失敗例1.利回りが低い物件を購入

投資において重要なポイントのひとつが「利回り」です。利回りとは投資金額に対する利益の割合のことを指します。アパートを一棟買いした場合は、家賃収入が購入額に見合っているかどうかの基準となります。利回りが低い物件を選んでしまうと収益が伸びません。それだけでなく、家賃を引き下げたり設備投資をしたりすることも難しくなっていきます。その結果、周辺に建ったライバル物件よりも条件が悪くなってしまい、ますます入居者が増えないという悪循環が生まれます。

利回りにはさまざまな種類があり、アパート一棟買いで注目したいのは「実質利回り」です。すなわち、年間の家賃収入に空き室の割合も考慮し、維持管理費や不動産購入費なども計算に入れた利回りのことです。物件の購入額に対する家賃収入を割合にした表面利回りが高い値であったとしても、高収入になるとは限りません。アパートを購入する際にはデータをしっかり収集しましょう。

失敗例2.勧められた物件をそのまま購入

不動産会社や知人からアパートを紹介されたとき、立地条件や利回り、建物の状態などを確認せずに買ってしまうと失敗につながります。不動産会社によっては「利益が出る物件」ではなく「売りたい物件」を優先的に勧めてきます。こうしたアパートが不良物件だった場合、高額で買い取っても利益にはつながりにくいでしょう。逆に、維持管理費が高く損をしてしまう可能性すら出てきます。

また、アパートを売るために誇張した営業をしてくる悪徳業者も少なくありません。購入してから「話が違う」と思っても、手遅れになってしまうことがあります。不動産会社や知人の話を無条件に信じるのではなく、自分で実態を調べるようにしましょう。過去のデータ収集や利回り計算を行ったうえで、本当に投資に見合う利益が期待できる物件かを見抜くことが大事です。

失敗例3.入れ替わりが激しい物件を購入

入居者がすぐに変わるアパートも要注意です。なぜなら、賃貸経営で成功するためにはできるだけ入居者に長く住んでもらわなければならないからです。契約期間が長くなるほど、オーナーに入ってくる家賃収入は安定します。逆に、短期間で入居者が頻繁に入れ替わっていると収入が途絶えかねません。それどころか、入居者募集の宣伝費や原状回復のコストで出費ばかりがかさんでいきます。空き室リスクも大きくなるので収益性は下がり、アパート経営が立ち行かなくなるのです。

そうならないよう、アパート一棟買いでは入居者の回転率にも注目が必要。あまりにも入れ替わりが激しい物件は避けるようにしましょう。さらに、ファミリー層が住みたいと思う地域のアパートを選ぶのがコツです。ファミリー層はひとつの物件に長く留まる傾向が顕著です。投資家としては計算しやすく、安心して入居してもらえるターゲットだといえます。

失敗例4.浴室とトイレが一緒の物件を購入

アパート一棟買いでは部屋の特徴にも目を向けましょう。たとえば、浴室とトイレが一緒になっている物件は入居者から敬遠され、空室になりやすくなる傾向があります。こうした部屋は衛生面でのイメージが悪く、入居者が使用していくうえでも不便です。水回りのスペースが狭くなるのを嫌う人もいます。特殊な工事をしないとウォシュレットや温水便座もつけられません。その結果、物件を検索したり内覧したりする段階で敬遠する入居者は多く、投資に失敗する原因になりやすいのです。こうした物件でも家賃を下げれば集客できることはあります。あるいは、別の設備を加えて価値を高める方法もあるでしょう。ただ、いずれにせよオーナーの投資額が大きくなって収益性は低下します。

どうしても浴室とトイレが一緒の物件を選ぶのであれば、最低限の条件として立地条件のいいアパートを絞り込みます。駅や公共施設に近いアパートであれば、多少の欠点に妥協してくれる場合があるかもしれません。

失敗例5.修繕されていない築古物件を購入

築古物件を買うときも注意しましょう。建てられてから時間が経ったアパートは各所が老朽化し始めます。それにもかかわらず修繕がなされていないと、購入後にオーナーが自費で修繕を繰り返さなければなりません。修繕を繰り返しているうち、当初想定していたコストを上回ってしまう危険が出てきます。アパート一棟買いでは部屋や設備が多い分、修繕費は非常に高くなることもあります。これらの費用はそのままオーナー自身の負担になってしまうのです。

「利回りが良ければ築古物件でも問題ない」と考える人もいるでしょう。しかし、修繕箇所が増えると利回りが数%下がることも珍しくありません。そうならないよう、アパート選びでは10年以上修繕されていない物件を除外するのがコツです。また、購入後の修繕費も考慮しておくようにしましょう。

アパート一棟買いを成功させるコツ

まず、「立地条件」をチェックします。公共交通機関や都市部に近かったり、大型商業施設が周囲にあったりすると入居者は増加します。そうなると自然に空室率は下がるので、家賃収入も安定しやすくなるのです。次に、古すぎない範囲で「中古物件を優先して購入する」のもひとつの方法です。新築物件はデータが少ないので収益の予想を立てるのに苦労します。逆に、中古物件は集客の傾向がはっきりしているのでマーケティングしやすいといえます。

「ライバルのリサーチ」も欠かさず行いましょう。周辺の似た物件より家賃を低くしたり、設備を充実させたりして競争力をつけていきます。ライバルにないPRポイントがあれば入居者の注目を集められます。そして、「リフォーム・リノベーションの費用も考えておく」ことが大事です。アパートはいつか老朽化するため、その際の修繕費用まで含めて投資額を決定することが肝心です。

失敗例を押さえて慎重に物件を選ぼう!

大きな投資となるアパート一棟買いはどうしても不安になるものです。そこで、よくある失敗例を調べてから対策を練っていくことが肝要。物件選びから賃貸経営にいたるまで、過去の失敗をなぞらないよう工夫することです。ここで紹介した失敗事例や注意点を参考にしながら、理想のアパートを見つけて経営を成功させましょう。

執筆者プロフィール

髙野 友樹
髙野 友樹様

公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。
不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。
現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。


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