【専門家監修】中古住宅って耐震性はどうなの?地震に強い家選び

2020年9月20日

地震が多い日本において、住宅購入時に耐震性が気になるという人もいるのではないでしょうか。自分で新築から建てるなら耐震構造に配慮することはできます。しかし、中古住宅の場合はどこまで対応しているのかわかりにくいのが難点です。そこで、この記事では中古住宅における耐震性の確認方法や対処法、耐震以外で気をつけておきたいことなどについて紹介していきます。

1.「新耐震基準」とは?

建築確認をするうえで、1981年6月1日から導入されているのが「新耐震基準」です。つまり、これ以降に建てられた住居は「新耐震基準」を耐震性の評価軸としており、条件をクリアしているといえるでしょう。そもそも、耐震設計基準が日本で導入されたのは関東大震災がきっかけです。その後、福井地震の発生で改正が行われましたが、1978年の宮城県沖地震でさらに甚大な被害が出たことが、1981年の大規模な改正につながりました。「新耐震基準」では、それ以前の「旧耐震基準」にはなかった強度についての条件が詳しく盛り込まれています。

耐震基準は震度に応じた建物の倒壊や破損状況などを設定したもので、「旧耐震基準」では震度5強程度で倒壊しない強度であり、仮に破損があっても補修で利用可能であることが条件とされていました。しかし、「新耐震基準」は、震度6〜7程度の大規模な地震でも倒壊しない強度と大きく変化しています。さらに2000年の建築基準法改正で地盤調査の義務化や梁、柱、筋交いなどに使用する金具の素材指定など細かい項目が加わっています。「新耐震基準」は建物だけでなく、内部にいる人の安全確保も重視しているのが変更点の一つです。指定金具の使用を義務化することで構造部分の強化を図る他、耐震壁の採用とバランスを考慮した配置なども配慮されています。

2.「耐震」「免震」「制振」?地震対策構造について

地震に備えた主な構造には「耐震構造」「免震構造」「制振構造」があります。どれも住居で採用されることが多い構造で、混同しやすいかもしれません。この3つの違いについて知っておけば、中古住宅を購入する際に判断する基準にすることができます。「耐震構造」とは、地震の揺れに耐えることを基本にした構造のことです。壁材や筋交いの他に、これらに使用する金具の素材などを工夫することで地震でも倒壊しにくい工夫がされています。住居の地震対策をするうえで多いのが「耐震構造」です。

「免震構造」とは地震が起こっても揺れを感じさせない作りのことをいいます。ただし、地震が起こってもまったく揺れないということではありません。地盤と建物基礎の間に積層ゴムやベアリングなどを設置して地震の揺れを上手に流す構造になっているため、内部にいる人や物に与える影響を軽減できます。「免震構造」は高層の建物に使われることが多く、ビルやマンションなどに採用されるのが一般的です。ただし、木造の建物でも可能な構造で、一般の住居でも取り入れる人は増えつつあります。

「制振構造」は建物の構造部(柱・梁)にダンパーなどを組み合わせ、揺れたときのひずみを吸収する作りのことをいいます。強固な鉄筋コンクリート造より構造材が柔らかい木造建築などと相性が良い仕組みです。

3.中古住宅の耐震性を確かめるには

中古住宅は、前の所有者がどのような耐震対策を考えて建てたのか判断しにくい面があります。そこで、一つの判断基準として有効なのが建築時期です。説明したように、1981年6月1日より後で建築確認がされた建物の判断基準には「新耐震基準」が採用されています。「新耐震基準」は現行の耐震基準ですから、それよりも後に建てられた中古住宅なら必要な条件を満たしていると考えていいでしょう。

しかし、1981年よりも古い時期に建てられた住宅の場合、耐震がどうなっているか素人ではなかなか判断できません。築年数が古くても所有者がどこかのタイミングで耐震工事を行っている可能性もありますが、見た目ではわかりにくいものです。中古住宅の耐震性を確認したいときに知っていると心強いのが「ホームインスペクション」です。「ホームインスペクション」とは建築士など専門知識を持つ有資格者が購入者の代わりに建物を調査してくれることをいいます。

「ホームインスペクション」を実施することで、耐震性だけでなく素人では気づきにくい瑕疵についても確認が可能です。中古住宅の傷み具合を全体的に見てもらうことができ、調査の内容に応じて補修がどの程度必要かも判断してもらえます。「ホームインスペクション」にかかる費用は、目視だけなら5〜6万円前後です。さらに内部のチェックなど機材を使う場合でも、10万円程度で見てもらうことができます。ただし、建物の規模や依頼する会社によってはそれ以上かかる場合もあるため、費用についてはあらかじめ確認してから依頼しましょう。

4.耐震リフォームを行うという方法も

中古住宅の耐震補強を検討するなら、耐震リフォームを行うのも一つの選択肢です。特に1階部分がビルトインガレージになっている建物だと、駐車スペースを優先して柱がずれた位置にあったり壁が薄かったりすることもあり、大きな地震が起こったときの被害が心配されます。また、すでに地震が頻発している地域に建っている中古住宅は、見た目に問題が確認されなくても気づきにくい箇所で大きなダメージを受けているかもしれません。気になる要素があれば耐震リフォームを実施しておくと安心できます。

中古住宅を購入する前には、不動産会社に物件の図面(建築確認)の有無を確認し、設計事務所やインスペクションの建築士などに建物の耐震性を診断してもらうのがおすすめです。大規模な耐震リフォームが必要か、耐震リフォームに「省エネ」や「バリアフリー」のリフォームも組み合わせるか、といった点を判断できます。

また、耐震リフォームの会社や、耐震チェックから実施してくれたりするリフォーム会社を探すという方法もあります。耐震リフォームは対応してくれる会社やリフォーム箇所によって費用に差が出ます。費用の面で失敗を防ぐためには、はじめに見積もりを出してもらい妥当かどうかを判断することが大切です。

5.物件選びで耐震性の他に気をつけるべきこと

中古住宅は、築年数に応じてさまざまなトラブルが起こりやすいものです。購入を検討するときは、耐震だけでなく全体的に致命的な問題はないかしっかりチェックしておきましょう。例えば、シロアリやコウモリなどの被害も中古住宅に見られやすい瑕疵です。また、外壁に亀裂が入っていると内部に雨水がしみ込みやすい状態になっています。室内がカビ臭かったり外壁や天井、壁にシミが出ていたりしたら、雨漏りなどの問題が発生しているかもしれません。雨漏りは構造材(柱・梁)などを腐らせたり、断熱材の性能を落としたりする原因にもなります。

マンションは、建物一棟を居住者全員で共有しているのが特徴です。そのため、専有部分だけでなく共有部分や建物全体について注意をはらった方がいいでしょう。可能な限り、過去の改修工事や大規模な修繕についての記録を調べておくことは必要ですし、今後の修繕計画や積立金の内容を確認することも大切です。家を購入するときは、デザインや間取り、立地など目に見える部分に意識が向きやすくなります。中には水回りなど機能的な箇所のリフォームを済ませてから売りに出すケースもありますが、入居してから問題に気づくという失敗のないよう注意しましょう。

地震に強い中古住宅を慎重に選ぼう

中古住宅を購入する際、注意しておきたいことの一つに耐震性があげられます。耐震対策がされているかどうかは、建築時期を見ることで判断は可能です。しかし、自分では判断しにくい場合には専門家に調査してもらうという方法もあります。旧耐震基準の木造建築物はベタ基礎ではなく布基礎で鉄筋が入っていないことがありますし、耐震補強をされた中古住宅でも地盤が弱い状態の物件であったりしますので、ハザードマップもあわせて確認することが大切です。実際に購入してから不安を抱えることのないよう、中古住宅は耐震面をはじめ全体の傷み具合などをよく確認してから購入を決めましょう。

執筆者プロフィール

斉藤 進一
斉藤 進一様

一級建築士・福祉住環境コーディネーター
大手ゼネコンで施工管理を経験し、ハウスメーカー系工務店で設計・施工を経験。高齢者・障害者のバリアフリー住宅の専門家が当時居なかったことから2004年に「やすらぎ介護福祉設計」を創業する。


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