【専門家監修】中古マンションのリノベーションで気を付けることは?
中古マンションをリノベーションする場合、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか。中古マンションのリノベーションにはいくつかメリットがありますが、注意点も確認することが大切です。本記事では、中古マンションのリノベーションで気を付けたいことや、リノベーションに適したマンションの選び方を説明します。
中古マンションのリノベーションのメリット
中古マンションをリノベーションするメリットは、安い物件を幅広く探すことができる点などさまざまです。新築マンションや、新築戸建との違いにも触れながら紹介します。
予算面のメリットは、何といっても新築マンションよりも安く手に入ることです。マンションの価格は築年数が古くなるほど安くなります。例えば、2018年に首都圏で成立した中古マンション取引の平均価格を調べると、築5年以下では5,000万円台でしたが、築16~20年が3,000万円台、 築21~25年では2,000万円台にまで下がります。つまり、築浅と築20年以上の中古マンションでは、立地や間取りといった条件は同じでも、約2.5倍の価格差があるのです。
加えて、中古マンションは、魅力的な環境条件の物件を手に入れられる可能性があります。人気駅の近くなどの便利なエリアはすでに開発が進んでいて、土地が見つからず新しい物件を建てることが難しい場合が多いのです。一方、中古マンションであれば人気エリアや駅近など魅力的な立地の物件に出合う可能性も高くなります。
部屋が古かったり、少し気に入らない点がある場合でも、リノベーションをすれば内装や設備だけでなく、場合によっては間取りも全て新しくすることが可能です。つまり、コストパフォーマンスがよく、利便性が高いうえに、新築同様で自分好みの部屋に住むことができるのです。
中古マンションの選び方のポイント
中古マンションを選ぶ際には、失敗しないためのポイントを押さえることが大切です。ここでは、耐震性、物件・設備、管理・運営についてのチェック方法を紹介します。
耐震強度に注目して選ぶときは、建築時期を確認しましょう。耐震基準は建築年月によって異なります。大きな地震があるごとに耐震基準が大きく改訂され、築浅の物件ほど耐震性に優れた設計となっています。1981年6月以降に建てられた耐震基準の建物であれば、阪神大震災のような大地震にも被害が比較的少ないことが明らかになりました。しかし、首都直下型地震や南海トラフ地震など今後起きるのではないかと言われる地震のことも考えると、耐震強度は、より安心な物件を選ぶ大きな目安になります。
物件・設備は、まず水回りを確認しましょう。水回りに不具合があると修理が高額になる場合があるため、排水管のサビや水漏れがないかチェックすることがおすすめです。給排水設備が交換可能な構造かどうかも確認しましょう。また、換気の状態も確認するのがおすすめです。特に、リフォーム前提の古いマンションは24時間換気システムがついていない場合が多いです。さらに、窓が少なくて湿気がたまりやすい物件だと、壁などにカビが生えている場合もあります。リフォームにあたってあらかじめ確認したい点ですね。
管理・運営については、エントランスや階段などの共用部分を確認しましょう。共用部分のメンテナンスが行き届かず、きれいに掃除されていないような場合、管理に問題がある可能性があります。また、管理組合の活動状況、共用部分の修繕履歴も掲示板などで確認しましょう。築年数が古い物件では、修繕積立金が不足していたり、滞納している入居者が多い場合があります。
中古マンションを選ぶときに確認したいこと
中古マンションを選ぶときは、そこで長年生活することも見据えて確認しておきたいポイントがあります。
1つ目は、建物全体の老朽化です。何年住むかによって変わりますが、物件は建物の状態と生活プランのバランスを考えて選びましょう。特に築年数が経過している場合、外壁や屋上の防水に問題があったり、耐震基準にも満たなくなると、大規模な修繕が必要になる可能性があり、将来的に建て替えの必要が発生するかもしれません。修繕を行う場合でも、大規模工事になり、当初の修繕積立金が不足する可能性や、入居者が負担できずに修繕ができない場合もあります。
2つ目は、生活環境について確認しましょう。物件選びでは内装や価格に目が行きがちですが、数年、あるいは、数十年住み続けることも考えれば、居住環境の快適さもチェックしておきたいものです。例えば、昼と夜では周囲の雰囲気が大きく異なる場合があります。排水管の音や近隣住民の生活音、外を走る車のライトなど、昼にはわからなくても夜になると気になることがあります。そのため、時間帯を変えて何度か訪れることがおすすめです。また、人口減少時代にあって、小学校や中学校などの統廃合や、コンビニ、スーパーが今後そこにあるかどうかも検討する必要があるでしょう。
中古マンションのリノベーションの注意点
いざ中古マンションを購入して自分好みにリノベーションをする際、失敗しないためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
1つ目は、リノベーション可能な範囲の確認です。分譲マンションの場合、工事が可能なのは専有部分になりますが、この専有部分は各戸の室内壁面の内側だけと思いましょう。共用部分である通路、エントランスに手を加えることはできませんし、また、専用に使える部分であっても、外壁、ベランダ、窓、バルコニーは共用部分とされてリノベーションができない場合や、マンションの規約で工事内容に制限が生じます。
2つ目は、リノベーションの限界とコストです。リノベーションは、壁紙の張り替えやシステムキッチン導入といった工事だけではありません。場合によっては、壁を取り払って間取りを変更するような大規模な工事になることもあります。共用部の水道管や電気系統にも及ぶケースもあるでしょう。建物の構造によっては室内に壊せない壁があったり、水回りの移動が自由にできなかったりする場合もあります。工事前に管理組合との綿密な協議が必要になる可能性もあり、最悪の場合、希望通りの工事ができないことにも注意が必要です。新築マンションが値上がりした現在、中古物件を購入してリフォームするのが流行ですが、場合によっては「新築マンションを買ったほうが安く済んだ」ことにもなりかねません。
中古マンションをリノベーションしよう!
中古マンションのリノベーションには、さまざまなメリットがあります。ここで触れただけでも、価格の割安さや、立地条件のいい物件の見つけやすさ、自分好みの部屋のデザインといった特徴がありました。上手に中古マンションを選ぶには、チェックポイントを意識することが大切です。特に、耐震性や設備面、管理・運営の体制はあらかじめ確認しておくとよいでしょう。中古マンションを慎重に選んで賢くリノベーションしましょう。
執筆者プロフィール
- 中山 聡
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中山 聡(一級建築士、不動産鑑定士)
東京大学医学部を卒業後、三井住友信託銀行、近畿大学工学部、株式会社アイディーユー、早稲田大学大学院ファイナンス研究科招聘研究員、チームラボ株式会社等を経て、現在、わくわく法人rea東海北陸不動産鑑定・建築スタジオ株式会社代表取締役。執筆・著書に、『新訂 闘う!空き家術(プラチナ出版)』『空き家管理ビジネスがわかる本(同文館出版DO BOOKS)』『ビジネス図解 不動産のしくみがわかる本(同)』などがある。