【専門家執筆】夫婦で住宅ローンを活用する4つの方法メリット・デメリットを解説

2018年10月17日

【専門家執筆】夫婦で住宅ローンを活用する4つの方法メリット・メリットを解説

住宅ローンを組むには、大きく分けて4つの方法があります。単純に夫(妻)が単独で組む方法が1つ。それ以外に夫婦で組む方法として「連帯保証型」、「連帯債務型」、「ペアローン」の3つがあります。単独では収入が不足して融資希望額に届かない場合も、夫婦で住宅ローンを組めば収入を合算することにより購入できる物件の選択肢を広げることができます。ただし、それぞれの方法にメリットもあれば、デメリットや利用できる条件がありますので、目先の「借りやすさ」だけでなく、それぞれの仕組みをよく理解して選ぶことが大切です。

夫婦で住宅ローンを組む方法/メリット・デメリット

【単独債務】
夫(妻)が単独で債務者となって住宅ローンを組む方法で、所有権も債務者の単独名義になります。夫婦のうち一方が専業主婦(夫)の場合などはこのケースになります。団体信用生命保険(以下、団信)に加入しておけば、債務者が万が一に亡くなっても、残された妻(夫)にローンは残りません。

【連帯保証型】
夫(妻)が債務者となり、もう一方が連帯保証人となる方法です。この場合、収入合算ができるので融資可能額が大きくなります。但し、収入合算できる金額は金融機関によって異なり、収入合算者の収入の2分の1までなど制限がある場合もあります。また、債務者はあくまで1人なので、住宅ローン控除が受けられるのも、団信に加入できるのも、債務者のみとなります。もし、債務者が亡くなれば、収入合算者にはローンは残りませんが、収入合算者が亡くなった場合、債務者にはそのままローンが残ります。

【連帯債務型】
連帯債務型は夫(妻)が主債務者となり、もう一方が連帯債務者となる方法です。つまり2人とも債務者になるのが連帯保証型との違いです。この場合、夫婦ともに住宅ローン控除を受けることができます。フラット35の場合、収入合算で住宅ローンを組む場合はこの連帯債務型になります(一部の民間金融機関でも連帯債務型の取り扱いがあります)。尚、団信は基本的に主債務者しか加入することができませんが、フラット35の場合は連帯債務者である夫婦2人で加入する「デュエット(夫婦連生団信)」を選択することができます。

【ペアローン】
ペアローンは、夫婦それぞれが主債務者となって個別に住宅ローンを組む方法です。つまり連帯保証型、連帯債務型とは違って契約が2本になります。この場合も住宅ローン控除はそれぞれが自分のローンについて受けることができますし、団信もそれぞれが加入することができます。ただし、一方が亡くなってしまった場合、団信で免除されるのは亡くなった本人の住宅ローンのみなので、残された相手は自分の住宅ローンに関しては返済し続けることになります。また2本の住宅ローンを組むことになるので、その分契約時の諸費用が多く掛かります。

選ぶときの注意点

このように住宅ローンの組み方も色々ですが、長期固定金利型の住宅ローンであるフラット35の場合はペアローンを組むことはできず、また収入合算する場合は連帯債務型になります。逆に民間金融機関の住宅ローンは、連帯債務型が少なく、連帯保証型かペアローンが主な選択肢となります。

その上で契約形態を選ぶときにポイントとなるのが「住宅ローン控除」と「団信」です。

まず「住宅ローン控除」に関してですが、連帯債務型、ペアローンは夫婦ともに住宅ローン控除を受けられるのに対して、連帯保証型は債務者となる一方のみしか住宅ローン控除を受けられません。住宅ローン控除とは住宅ローン残高の1%が10年間にわたって所得税から控除される仕組みですが、そもそも借入額に対して債務者の所得税が少ない場合は1人では控除の枠を使いきれないことがあります。この点は連帯保証型のデメリットです。

次に「団信」ですが、フラット35の連帯債務型で「デュエット(夫婦連生団信)」に加入した場合は、夫婦のどちらか一方が亡くなった場合、残りの住宅ローン全額が弁済されます。またペアローンの場合は夫婦それぞれが自分の債務について団信に加入するので、一方が亡くなった場合、残るのは自分自身の債務のみです。

注意が必要なのは連帯保証型や連帯債務型でデュエットに加入しない場合です。これらの場合、債務者(主債務者)が亡くなってしまうと、団信で残りの住宅ローン全額が弁済されますが、収入合算者が亡くなっても住宅ローンはそのまま全額残ります。収入合算者の収入も見込んで住宅ローンを組む場合はこういうリスクがあることも認識して無理のない金額で住宅ローンを組むか、民間の生命保険を活用してリスクに備える必要があります。

まとめ

住宅ローンの大原則は「借りられる額」ではなく「安心して返せる額」で借りることですが、その借り方にもこのように複数の選択肢があります。マイホームは人生最大の買い物で返済は長い道のりになりますので、夫婦でよく話し合って自分たちに合った方法を選んでください。
執筆者プロフィール

長尾 真一様

長尾 真一
長尾 真一(ファイナンシャルプランナー)
教育資金、老後資金、万が一に備える保険など、生活に関わるお金の不安を解消し、未来に希望を持って暮らしていくためのお手伝いをする生活設計のコンシェルジュ。 確定拠出年金の専門家FPとして、中小企業のDC導入支援や投資教育講師として年間80回以上セミナー講師を務めているほか、高等学校や大学、専門学校等での講演活動にも注力しており、進学資金計画やキャリアプランに関する講演を数多く行っている。これまでの延べ聴講者数は1万人を超える。 趣味は航空会社のマイルやホテルのポイントなどを効率的に貯めてお得に旅をすること。

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