【専門家執筆】不動産の節税対策~不動産売却時~

2017年8月7日

多くの人にとって一生でもっとも高い買い物となる不動産。不動産売買は動く金額が大きいだけに、それに付随する税金の額も大きいです。
3回に渡って、購入時、保有期間中、売却時の段階ごとに不動産に関わる様々な税金について解説します。第1回では不動産を購入するときに負担する税金についてを
第2回では不動産保有期間中にかかる税金とその節税方法について解説しました。
最後の第3回では、不動産を売却するときの税金について学びましょう!

不動産売却時にかかる税金を解説

 不動産を売却した場合、課税される可能性があるのは譲渡所得税と住民税です。売却したことにより生じた所得(儲け)がある場合、その所得に対して一定の税率を乗じることで税額が計算されます。
個人に対する課税は、原則として給与や年金、事業といったその人に帰属する所得を合算して課税がされます。しかし、譲渡所得については他の所得と合算をせず、別個のものとして課税されます(分離課税とも呼ばれます)。譲渡による所得を個別に把握すると共に、仮に譲渡により損失が生じていたとしても、他の譲渡所得から差し引くことはできますが、給与や事業といった他の所得から差し引くことができません。ただし、後述する特例も用意されています。

 確認をしなければならないのが、長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分です。売却した不動産の所有期間に応じて区分されます。

長期譲渡所得:譲渡年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
短期譲渡所得:譲渡年の1月1日において所有期間が5年以下であるもの

 なお、相続・贈与により取得した不動産については、被相続人や贈与者が取得した時点から所有期間を計算することになります(一部には例外があります)。

 譲渡所得は、以下のような計算式で計算されます。

 課税譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)

取得費:不動産を購入したときに支出した金額です。土地建物の本体価額の他、一部の付随費用(仲介手数料や登録免許税など)も含まれます。ただし、建物部分については、購入時点の価額ではなく、所有期間に応じた減価相当額を差し引いて計算されます。
なお、購入時の取得費が不明の場合には、譲渡金額の5%で計算することができます。相続や贈与により取得した場合、取得費が不明であることが多いので、この規定を使用することになります。実際には、5%で計算をすると損をしてしまうことが多いです。購入時点での契約書類について、しっかりと管理をしておいた方が良いでしょう。
譲渡費用:譲渡時にかかる仲介手数料や印紙税などが該当します。売却に係る抵当権抹消費用は含まれません。

 課税譲渡所得金額が計算されたら、そこに税率を乗じます。長期譲渡所得の場合には20%(所得税が15%、住民税が5%)、短期譲渡所得の場合には39%(所得税が30%、住民税が9%)です。所得税については、平成49年までは復興特別所得税が別にかかります(所得税額の2.1%)。

【税金の種類別】節税(優遇措置)とその方法について

 大きく分けると、所得(儲け)があったか損失があったかにより、それぞれ特例が用意されています。

・所得があった場合
 譲渡した物件が居住用不動産に該当する場合には「居住用不動産の3,000万円特別控除」という規定が用意されています。つまり課税譲渡所得金額が3,000万円以下であれば、この特例を適用することで課税所得がゼロ円になります。
 また10年超所有する居住用不動産を譲渡した場合には、軽減税率が用意されています。本来は20%である税率について、6,000万円以下の部分については14%(所得税が10%、住民税が4%)の税率が適用されます。また、この軽減税率は上記の3,000万円特別控除と重複適用が可能です。
 更に、居住用不動産の買い替えをした場合には、譲渡物件に関する譲渡所得について課税の繰り延べ(先延ばし)をすることが可能です。この規定については、3,000万円特別控除や軽減税率との重複適用はありません。
 なお、近年の空き家増加を踏まえて空き家を譲渡した場合の特別控除も用意されました。

・損失があった場合
 既に説明した通り、本来は譲渡の結果生じた損失は他の所得と関係なく切り捨てられることになります。しかし、居住用不動産の譲渡をして損失が生じた(譲渡価額 < 取得費+譲渡費用)場合、生じた損失について他の所得(給与や年金、事業など)から差し引く(通算する)ことができる特例が用意されています。
譲渡をしただけの場合には「譲渡物件に係る住宅ローンが残っている状態(オーバーローン)」であることが必要です。居住用不動産の買い替えをした場合には、住宅ローンが残っていなくても適用できます。また、単年で通算できない場合には、一定の要件に該当することで翌年以降に繰り越すことも可能です。

 所得、損失、どちらが生じた場合でも、各種特例の適用には様々な条件が設定されています。例えば親族間での売買については各種特例が適用できません。それに譲渡年の前後数年間に渡り、各種特例の適用について制限が加わります。適用期限が定められているものもあります。
そして、特例の適用を受けるには確定申告の手続をすることが必須です。

まとめ

・譲渡物件の所有期間はどれくらいか?
・譲渡価額 - (取得費+譲渡費用) - 特別控除 =課税譲渡所得金額
・取得費は、購入時の契約資料があればそれを確認する。わからない場合には5%で計算するしかないが、損をしてしまうことが多い。
・所有期間に応じて税率を乗じる。
・譲渡所得がある場合には各種特別控除が使えることがある。
・譲渡損失がある場合、基本は切り捨てだが、譲渡した物件が居住用不動産の場合には他の所得と通算できる場合がある。

 上記のように、譲渡所得は確認しなければならないポイントが沢山あります。実際に譲渡をする前に、自分のケースではどこに該当してどんな特例が活用できるのか?といった点についてしっかりと確認しておくことが大切です。

【著者プロフィール】

高橋 昌也様

高橋 昌也(税理士) 高橋昌也税理士・FP事務所
2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。
その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、
商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。
[保有資格]
AFP、税理士、商工会議所認定ビジネス法務エキスパート

 


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