【専門家執筆】電力の自由化から約一年!現状と今後の展望
電力の自由化がされてから約一年経つ今、改めて電力の自由化について考えてみましょう。
電力の自由化とは
これまで家庭用や商店向けの電気は、大規模な工場やオフィスビルでは電力会社を自由に選べるものと異なり、例えば東京電力とか関西電力といった各地域の電力会社だけしか販売されませんでした。
つまり、電気をどこかの会社からか、自由に選んで買うかということはできませんでした。ところが、東日本大震災の福島原発の事故をきっかけに電力供給の独占には無理が生じ、家庭用の電気も自由に選択できるようにしようとのことで、平成28年4月1日以降法律の改正により電気の小売業への参入が全面自由化になりました。
これで家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できる環境になったわけです。法律改正による「電力自由化」以降は、現在の電力会社だけでなく、新たに参入する電力会社からも電気を契約できるようになり、選べる電力事業会社は380社ぐらいになっています。
電気代はどのくらい安くなるの?
電力の小売全面自由化により、様々な事業者が電気の小売市場に参入しており、電気の小売事業への参入者が増えることで競争が活性化し、様々な料金メニューやサービスが登場して実質的には安価になったケースがあるようです。
例えば、電気とガス、電気と携帯電話などの組み合わせによるセット割引や、ポイントサービス、さらには家庭の省エネ診断サービスなどがあります。
また、再生可能エネルギーを中心に電気を供給する事業者からの電気の購入や、現在の居住エリア外で発電された電気の購入も可能です。
例えば、都会に住んでいても、生まれ故郷で発電した電気を選べるなど、その組み合わせはざまざまです。
したがって、各小売業者から自分の電力使用に見合ったものを検討して選択していく必要があります。
この点は各社各様ですから、安易に電気料金が安くなったからというだけではなく、トータルでシュミュレーションをしておく必要があるでしょう。
ただ、今後の注意点としては、2020年に電力の小売料金の規制が撤廃される予定になっているため、例えば、値上げに関する規制がなくなると長期的に見た場合に料金が下がるとは断定できません。
先行して電力自由化を行ったイギリスのように、電気料金が2倍になったというケースもあり、今後の課題にはなるでしょう。
電力の自由化のメリットとデメリット
電力の自由化のメリットは、小売の全面自由化によって複数の会社の中から電力を選ぶことができるため、料金や発電方法など消費者側の選択の幅が広がっています。
また、会社側も選ばれる立場になるため、提携や新サービスを企画し、ポイント制度やセット販売による割引などが現に多くあります。
例えば、ガス会社では、電力供給してもらえばガス料金もセットで割引しますよというものです。
逆に、デメリットとしては、品質等の低い事業者が参入してしまう点です。
小売市場への参入が自由化することで発電体力や技術力の低い企業も多く参入することも想定されます。
例えば、競争が激化しコスト減のために各設備を削減していった結果、災害時などに十分な対応ができない企業も現れてくるかもしれません。
オール電化の導入の導入例
オール電化は電力会社が開発したもので、その目的は電力の負荷を平準化し、昼間時の電力使用を大きくて抑え発電設備の投資も抑制したいというものでした。
これには、原発の電力コストが安価であるため深夜でも電力供給ができるという前提でしたので、原発が停止してしまうと火力発電所を稼働させて電力供給をせざるをえなくなりました。
そのため、原発停止以降、電力会社はオール電化の電気料金は値上げする格好になってしまったのです。
したがって、過去のオール電力タイプの電気料金の方が安価になるという妙な現象が起きています。
安易に電力自由化だからといって、他社に乗り換えるとかえって電気料金が高くなるという場合もありますので注意が必要でしょう。
オール電化を導入して起きやすいトラブル
オール電化は深夜電力を利用して給湯などを行うので、昼間に在宅時間が長く電力使用が多い場合には、オール電化の安価な電気料金の恩恵が受けにくいものです。
オール電化を勧められて住宅を建てたが、電気料金が以前よりも高くなったという話も聞きますが、これは昼間の在宅時間が長いため、その時間帯で電力使用が多いと電気料金は高くなりがちです。
したがって、電気料金が安くなるといってもそこに住む人の生活パターンを考慮しておかないとオール電化の恩恵は受けにくいということが言えます。
まとめ
電力自由化になったから我が家も電気料金を安価しようと思ったら、各電力事業会社の料金プランを比較しておくことが重要でしょう。
最近では、料金の比較サイトもいくつか出始めていますので、それぞれの家庭の実情にあったプランを選択してはと思います。
また、オール電化の場合には、自由化だから電力事業会社を変えるとかえって料金が高くなるケースがあります。
したがって、こちらの場合もよくサービス内容などを確認して選択されることをお勧めいたします。
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