不動産投資の減価償却とは?メリットや注意点を解説!

2021年7月30日

不動産投資には一定程度の節税効果があります。それを可能にしているのが減価償却という仕組みです。国によって厳格なルールが定められている減価償却を利用することで、不動産投資によって得られた所得に対する税負担を軽減することが期待できます。今回の記事では、不動産投資による減価償却のメリットとともに、減価償却費の計算方法や利用するうえでの注意点などを解説します。

不動産投資における減価償却とは

減価償却とは、長期間の使用が見込まれる資産の購入費用を分割して計上する会計処理方法のことです。たとえば、不動産や自動車、内装設備といった資産は、時間の経過によってその価値が減少していきます。そのため、こういった資産は減価償却資産と呼ばれて購入時に全額を経費とせず、それぞれの資産ごとに定められた法定耐用年数に従って経費として計上することが決められています。つまり、減価償却を利用することで、実際の出費を伴うことなく経費として計上できるというわけです。その結果として、資金繰りをプラスに働かせることが可能になります。なお、不動産投資では物件の取得費用を減価償却できます。

減価償却費の計算方法は?

不動産投資の減価償却には主に3つの計算方法があります。

・定額法
・定率法
・簡便法

定額法は毎年一定の額を計上する方法です。計算式は「取得価額×定額法の償却率=減価償却限度額」となります。なお、平成10年4月1日以降に取得した建物の計算方法は定額法のみです。定率法は、帳簿価格に一定の償却率を掛けて計上する方法です。計算式は「取得価額−(前年末までの償却額の合計)×定率法の償却率=減価償却限度額」となります。なお、定率法を選択する場合は、その年の確定申告期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要です。

簡便法は中古物件を取得した場合の計算方法です。計算式は、法定耐用年数を超えている場合と超えていない場合で異なります。法定耐用年数を超えている場合は「法定耐用年数×20%=耐用年数」で、超えていない場合は「法定耐用年数−築年数+築年数×20%=耐用年数」です。

減価償却で重要な法定耐用年数とは

法定耐用年数とは、取得した物件の資産価値が消滅するまでの期間のことです。財務省令によって定められていて、減価償却資産の種類ごとに区分された一覧表が公表されています。不動産投資の減価償却資産である建物の耐用年数は、構造によって11〜50年までに分けられています。たとえば、木造・合成樹脂造の住宅用なら22年ですが、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅用は47年と2倍以上に設定されています。なお、定額法と定率法による減価償却は、法定耐用年数が終了するまでの期間は経費計上が可能です。

ただし、土地の購入費用は減価償却できません。土地の資産価値は年数によって評価されるわけではなく、公示地価や路線価などを基準に決定されています。そのため、時間経過によって資産価値が減少していく減価償却からは除外されているのです。

不動産投資で減価償却をするメリット!

不動産投資の減価償却には、主に3つのメリットがあります。

・購入費以外の支出がなくても経費にできる
・所得税の節税効果
・損益通算による節税

不動産投資では分割で経費計上できる減価償却の利用によって、物件の購入費用以外の支出がなくても経費を発生させることができます。この仕組みによって法定耐用年数の期間中は所得税の節税が可能になります。また、不動産投資で物件を購入した場合、建物の購入費以外にも損害保険料や修繕費といった出費が発生します。ところが、不動産投資ではこういった出費よりも運用益が下回って赤字になるといったケースも少なくありません。このような事態に陥った場合に減価償却を利用することで、損失額を減少させることができます。

それを可能にしているのが損益通算という制度です。損益通算では、不動産投資を行っている給与所得者が損失を計上した場合に、その年の給与所得と不動産投資の損失額を相殺することができます。給与所得が黒字であれば、その所得額から不動産投資の赤字分が控除されるため、当該年度の課税金額を減額させることが可能になるのです。損益通算は確定申告で行いますが、給与所得者の場合は年末調整で納税額が決定済みのため、控除された分の金額が後日還付されることになります。なお、損益通算を行っても赤字が解消できない場合には繰越控除という制度を利用して、損失を最長で3年間繰り越して給与所得と相殺させることも可能です。

減価償却を利用した節税が向いているケース

減価償却を利用した節税が向いているのは、次の3つの条件に該当する物件を購入した場合です。

・木造・軽量鉄骨の場合
・法定耐用年数切れの場合
・高収入の人が築古の木造物件を取得した場合

木造・軽量鉄骨の法定耐用年数はそれぞれ22年と27年で、47年の鉄筋コンクリート造などよりもかなり短く設定されています。そのため、同じ価格や減価償却期間であったとしても、鉄筋コンクリート造などよりも多額の減価償却費を計上することが可能です。また、法定耐用年数切れの物件には、「法定耐用年数の20%」に相当する年数が適用されるため、償却期間が短くなります。木造は4年、軽量鉄骨では5年で償却が可能です。

なお、減価償却では高収入の人が築古の木造住宅を購入する場合において節税効果が最も高くなります。これは、木造の耐用年数が22年と短く設定されていることによって、減価償却費が大きくなるためです。

減価償却による節税で注意したいこと

減価償却費を利用して節税に活かすためには、次の3点に注意する必要があります。

・譲渡した際の税金が高くなる可能性
・節税効果は一時的
・白色申告では損益通算や繰越控除ができない

所有していた物件を譲渡(売却)すると、その所得に対して譲渡税が発生します。減価償却は節税効果のある制度ですが、譲渡税に関しては高くなる可能性があるため注意が必要です。減価償却によって譲渡税が高くなるのは、建物の会計上の価値(簿価)と売却額との差が売却益とみなされるからです。その結果、売却額によっては譲渡所得が増加することになり、支払う譲渡税が高くなる可能性があるのです。また、法定耐用年数による減価償却期間が終了すると、翌年からは取得した建物の購入費用を経費計上できなくなります。そのため、減価償却による節税効果は一時的なものであることを理解しておくことが大切です。

個人事業主の確定申告方法には、白色申告と青色申告があります。白色申告のメリットは、青色申告と比べて簡易な帳簿で申告できることです。ただし、白色申告では青色申告で可能な損益通算と繰越控除ができません。白色申告には手間を削減できる反面、こういったデメリットがあることも知っておく必要があります。

出口戦略を立てて減価償却しよう!

不動産投資では減価償却という仕組みを利用することで、節税という大きなメリットが得られます。とはいえ、減価償却の節税効果も永遠ではありません。法定耐用年数による減価償却期間が終了すれば、節税どころか所有物件を売却した場合には増税になる可能性もあります。また、物件が売却できなかったり、管理・修繕費用がかさむことも考えられます。そのため、不動産投資を行うのであれば、出口戦略も考えておくことが大切です。

執筆者プロフィール

髙野 友樹
髙野 友樹様

公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。
不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。
現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。


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