物件概要書とは?不動産投資における活用法を知ろう
物件概要書は、物件に関する情報がひと目でわかるようにまとめられた書類のことで、不動産投資においては非常に重要なものです。不動産投資で成功するためには、物件概要書の内容を理解することが欠かせません。物件概要書の見方をマスターしておけば、物件探しだけでなく、売主との交渉にも役立ちます。本記事では、物件概要書に何が記載されていて、どのように活用するのかを解説します。ぜひ参考にしてください。
物件概要書とは?
物件概要書とは、所在地・価格・利回り・面積・構造など、不動産物件の基本情報を記載した書類のことです。基本的には不動産会社が物件概要書を用意します。記載する情報はおおむね決まっていますが、フォーマットはバラバラです。不動産投資サイトから不動産会社に資料請求した場合、最初に送られてくるのがこの物件概要書です。つまり、収益物件を手に入れるための最初のステップが、物件概要書をチェックすることなのです。
物件概要書に掲載されている情報
物件概要書には、おおむね以下の内容が記載されています。
・物件の基本情報
・土地に関する情報
・建物に関する情報
物件の基本情報とは、物件の所在地や、価格、利回り、最寄り駅などです。価格には「売主が希望する売買価格」が記載されているので、基本的には交渉可能だと覚えておきましょう。なお、土地だけの場合は消費税はかかりませんが、建物部分には消費税が課税されます。価格表示は税込でするのが一般的ですが、まれに税別で表示されていることがあるので確認が必要です。
土地に関する情報とは、土地面積や接道状況、権利、地目、用途地域、建ぺい率、容積率などです。土地面積は平米数または坪数で表記されます。1坪が約3.3平米なので「10坪は約33平米」と覚えておけば、物件を簡易的に評価する際に役立つでしょう。地目は「宅地」「田」など、土地の利用状況によって分類した登記上の区分です。用途区域とは、都市計画に沿って13種類に分類されたエリアのことで、建築できる建物の種類や規模、用途などが定められています。
建物に関する情報とは、構造や種類、延床面積、築年数、間取りなどを指します。構造とは建物の素材や骨組みのことで、代表的な構造は木造(W造)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)などです。種類には居宅、共同住宅、寮などというように、物件の種類が記載されています。物件の実際の使われ方が、登記簿謄本と同じかどうかを確認しておきましょう。
また、物件概要書に記載されているその他の情報に、取引形態や引渡し時期、電気・ガスなどの設備、現況などがあります。
不動産投資の物件探しや交渉に役立つ!
物件概要書は、不動産に関する基本的な情報がまとめられているので、不動産投資の物件探しや交渉に役立ちます。物件概要書があれば不動産会社は物件の詳細な情報を購入希望者に提供できますし、購入希望者も希望に合った物件を見つけやすくなるでしょう。また、物件概要書によって売主と買主が基本的な情報を共有できるため、交渉もスムーズに行えます。
投資に適した物件を探すポイント
不動産投資において利益を上げるためには、物件が本当に投資に適しているのか見極めるのが大切です。投資物件を探す際には、以下の3つの視点を持つのがよいとされています。
・物件は投資対象として適切かどうか
・賃貸物件として魅力的かどうか
・購入後に修繕する必要があるかどうか
まず、投資物件として適切かどうかを判断するために、築年数や利回り、入居率をチェックしましょう。物件概要書に記載してある利回りは「表面利回り」、つまり年間の家賃収入の総額を物件価格で割った数字であることがほとんどです。そのため、購入時・運営中の諸経費を考慮した「実質利回り」を割り出す必要があります。実質利回りの計算式は、「(年間の家賃収入-諸経費)÷(物件購入価格+購入時の諸経費)×100」です。また、物件の価値を判断する指標となる「積算価格」も知っておきましょう。積算価格が物件価格よりも高い物件は、土地や建物の資産性が高いと判断できます。積算価格の算出方法は、土地の現在価格+建物の現在価格です。積算価格の計算は複雑なので、シミュレーターサイトを使うのもいいでしょう。土地評価額が物件価格を上回る物件も、不動産投資の方法によっては資産性が高いと判断できます。ただし、老朽化などによって建物の価値が下がっているケースもあります。土地の価格が下がりにくいことを考えれば、購入後更地にして売却した場合、キャピタルゲインを得られる可能性があります。
借り手がつかず、空室になるリスクを避けるためには、物件が入居者にとって魅力的かどうかも重要です。入居者の気持ちになって、交通アクセスや間取り、設備、周辺環境などをくまなくチェックしましょう。さらに、リフォームや大規模修繕の履歴を確認し、購入後にどの程度のメンテナンスが必要なのかを知っておくのも大切です。
こんな物件には気をつけよう
投資物件とするには不適切な物件もあります。まず注意したいのは、建築基準法、都市計画法、消防法などに違反した違法建築物件です。建ぺい率(容積率)が基準を超えていないか、防災設備は設置・管理されているか、構造上の安全基準を満たしているかなどを確認しましょう。また、再建築不可物件にも注意が必要です。再建築不可物件は建築基準法に適しておらず、現存の建物を取り壊したあとは基本的に新しく建物を建てることができません。違法建築物件や再建築不可物件は、銀行からの融資が受けられないのが一般的です。さらに、空室率が高い(入居率が低い)物件も避けましょう。入居率が70パーセント未満の場合は、銀行から融資を受けるのが難しいといわれています。入居率50パーセントを切るような物件は、候補から外すのが賢明です。
物件概要書以外の情報も大切!
ここまで物件概要書について説明してきましたが、投資物件を選ぶ際には物件概要書に載っていない情報も大切です。たとえば、物件概要書に記載されている利回りは満室を想定した数字です。現状の利回りを知るためには、物件の部屋ごとの入居状況や家賃、敷金、契約日などを表にした「レントロール」をチェックしてみてください。
さらに、築年数や建物の写真だけでは老朽具合がわからず、実際のイメージがつかめないこともあります。外壁の材質や物件の管理状況によって、築年数が同じでも見た目がまったく違うケースもあるのです。そのほか、周辺の交通状況や騒音、街の雰囲気など、物件概要書ではわからないことは少なくありません。住所のイメージがよくても、町名や番地が違うだけで、立ち並ぶ店や住宅のイメージがまったく異なるケースもあるのです。そこでおすすめなのが、実際の物件を見ることです。物件選びで失敗しないためにも、そして思わぬ優良物件を逃さないためにも、物件概要書の記載内容だけで判断せず、ぜひ現地調査をしてみましょう。
物件概要書を活用して物件を探してみよう
物件概要書は、優良物件を探す手がかりになります。不動産投資で利益を上げるためには、物件概要書からその物件のイメージをつかみ、物件の価値を見極めることが大切です。そのためにおすすめなのが、多くの物件概要書に目を通し、シミュレーションを繰り返すトレーニングです。最初のうちは時間がかかりますが、慣れるにつれてすばやい判断ができるようになるでしょう。
執筆者プロフィール
- 髙野 友樹
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公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。
不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。
現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。