【専門家監修】賃貸契約の盲点!家賃以外にかかる初期費用は?費用を抑える方法も紹介

2020年10月25日

賃貸契約をする際、家賃にのみ注意すればよいと考える人がいるかもしれません。しかし、賃貸を契約する際には家賃だけではなく初期費用がかかります。もしかすると、気に入った物件でも初期費用が払えずに契約できないかもしれません。初期費用は物件によって高額になるケースもあるので、後悔しないためには具体的な内容を知っておくことが重要です。ここでは、賃貸の初期費用の内訳から抑え方までを紹介します。

初期費用は何を払うの?

初期費用の内訳は、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・火災保険料・保証料などです。また、賃貸契約とは関係ありませんが、引越し費用や家具購入費用なども発生します。

・敷金

敷金とは、家賃の不払い・原状回復のためのクリーニングなどに備えて徴収されるもので、相場は家賃1カ月分です。大家さん側からすると、保険のようなお金といえるでしょう。通常、敷金は賃貸契約を終え部屋を明け渡す際に、何もトラブルがなければそっくり返金されます。ただし、きれいに部屋を使っていたとしても返却されないケースもあるので注意してください。たとえば、関西地方特有の「敷引」という習慣。敷金と名前こそ似ていますが、敷引は返還されないお金です。礼金と似たようなものと捉えるとわかりやすいでしょう。

・礼金

礼金とは、部屋を所有する大家さんに対してお礼の意味を込めて支払うものです。敷金と異なり返還されず、家賃1カ月分が目安とされています。礼金と似た敷引を設定している物件は年々減っていますが、関西で物件を探す際は念頭に入れておいてください。また、地域によらず「償却」という文言にも注意しましょう。賃貸契約書に「敷金のうち10万円は償却される」など書かれているケースがあります。ひとたび契約を交わしてしまうと、償却分を返還しなくてよいと認めたことになります。

・前家賃

前家賃とは、入居月の翌月の家賃を前払いで支払うものです。

・仲介手数料

仲介手数料は、物件の案内や契約手続きを行った不動産会社に支払います。家賃1カ月分+消費税が上限と決められていますが、徴収先は決められていません。仮に大家さん側に全額負担してもらえれば、借主は仲介手数料を払わなくて済みます。

・火災保険料

火災保険料とは、火災保険に加入するために必要なお金です。多くの賃貸住宅では、火災保険に加入することが賃貸借契約の中で義務付けられています。1万5000~2万円が相場でしょう。

・保証料

保証料とは、借主が家賃を払えなくなった場合に備え、家賃保証会社を利用するために支払うものです。家賃の0.5~1カ月分ほどが相場で、仮に契約期間中に家賃の滞納がなかったとしても保証料は返還されません。ちなみに、保証会社の利用が義務ではない物件もあります。親や子どもなど、連帯保証人になってくれる人がいる場合は保証料を削ることも可能なので検討してもよいでしょう。

・引越し費用

引越し費用は世帯数や荷物の量、引っ越す時期、引越し先までの距離などで大きく変わります。単身者で1Kからの引越しを想定すると2万~4万円程度ですみますが、ファミリーで戸建てからの引越しを想定すると4万~15万円は必要になるでしょう。

このように、賃貸契約時には大家さんや不動産会社、各サービス会社などに対し高額な初期費用を払う必要があります。

初期費用の相場はどれくらい?

初期費用の総額は、家賃の4.5~5倍程度が相場です。国土交通省から発表されている「平成30年度住宅市場動向調査」によると、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の家賃は平均で7万7422円、共益費は4472円でした。ここから初期費用の目安を試算すると、およそ39万円ということになります。具体的な金額を知ると驚くかもしれませんが、やり方しだいで初期費用はある程度抑えられるでしょう。したがって、首都圏で暮らしはじめるのであれば、必要な初期費用は30万円程度と考えられます。

費用を抑える方法①敷金・礼金が少ない物件を選ぶ

敷金・礼金が少ない、あるいはまったく支払わなくてよい物件は首都圏を中心として増加傾向にあります。まったく敷金・礼金を支払わなければ、家賃およそ2カ月分という大きな額を節約できます。初期費用を抑えるなら有力な手段といえるでしょう。敷金・礼金が割安または無料の物件に限定して探すほか、無理のない範囲で不動産会社に値下げ交渉を行うといった方法があります。注意したいのは、退去時の修繕費用です。契約時に退去時の修繕費・ハウスクリーニング費の目安について問い合わせておくと安心できるでしょう。また、敷金・礼金がない物件には何らかの問題が潜んでいるかもしれません。日照条件・築年数・近隣住民・周囲環境などを慎重に確認しましょう。

費用を抑える方法②フリーレントの物件を探す

フリーレントとは、入居後の一定期間の家賃が無料になる物件を指します。無料期間は1~3カ月という物件が多いものですが、なかには6カ月という物件も見られます。なお、家賃は抑えられても初期費用は変わらないというケースがあるので注意しましょう。たとえば「契約の翌月分はフリーレント、ただし初期費用に含まれる前家賃は翌々月分」という場合は初期費用が変わりません。また「最初にかかる日割り家賃分のみフリーレント」という場合も、前家賃が変わらないので支払う初期費用は変わりません。フリーレントは長い目で見るとお得ですが、初期費用を抑えるためには適用条件をよく確認しましょう。特に、どの期間分がフリーレントになるのか、前家賃は契約時に支払う必要があるのかに注意してください。

費用を抑える方法③仲介手数料が不要の物件を選ぶ

仲介手数料が必要ない理由として、大家さんの全額負担という場合があります。一方で、不動産会社自身が大家さんという場合にも、借主は手数料を払わなくてすみます。借主との直接契約になるため仲介手数料は発生しませんが、入居後の家賃収入が見込めるので不動産会社は利益を確保できるということです。なお、物件を所有していなくても、家賃の0.5カ月分のように仲介手数料が割安な不動産会社もあります。

仲介手数料の安さにこだわって物件を選ぶ際は、ほかの名目でお金を要求されていないか、家賃が割高でないかなどに気をつけましょう。初期費用は仲介手数料だけではないので、全体を確認することが重要です。

慎重に選ぶことが大事

賃貸契約の初期費用について理解できたでしょうか。賃貸物件を選ぶ際は家賃が気になるものですが、初期費用も忘れずに検討しましょう。初期費用を抑えるには、敷金礼金・フリーレント・仲介手数料などにこだわりましょう。ただし、それぞれの方法にはデメリットもあるかもしれません。損をしないためには、安い理由を見きわめて慎重に物件を選ぶことが大切です。

執筆者プロフィール

髙野 友樹
髙野 友樹様

公認 不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
株式会社 髙野不動産コンサルティング 代表取締役、株式会社 アーキバンク 取締役。
不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、不動産ファンドのAM事業部マネージャーとして従事。
現在は不動産コンサルティング会社を立ち上げ、投資家や事業法人に対して不動産コンサルティングを行いながら、建築・不動産の専門家で形成される株式会社アーキバンクの取締役として、業界において革新的なサービスを開発・提供している。


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