【専門家監修】中古住宅の瑕疵保険とは?必要性や費用について
中古住宅は築年数やメンテナンスによっては、購入してから思わぬ瑕疵が発見されることもあります。そのような場合の対策として「瑕疵保険」について知っておきたいという人もいるのではないでしょうか。この記事では、瑕疵の概要や費用、加入した物件を購入することで得られるメリットやチェックしておきたい内容などについて解説していきます。
1.中古住宅の瑕疵保険とは?費用は?
「瑕疵保険」とは、中古住宅を購入した後で隠れた不具合により何らかのトラブルが起こったときに支給される保険金のことです。新築物件には、建物が完成してから10年間不具合などを保証する「瑕疵担保」があります。「瑕疵担保」は義務化されているため、購入者の意思に関係なく付帯してくるものですが、中古物件には瑕疵について保証するものがありません。そのため、購入してから建物に問題が発見されれば、購入者は自費で改修作業をすることになります。「瑕疵保険」はそのような状況において購入者の負担にならないよう保護してくれます。万が一購入した中古住宅で隠れた不具合が発見されても、修理代金が保険金でカバーされるという点がメリットです。
ただし、建物のトラブルといっても何でも対応してもらえるわけではありません。建物においての瑕疵とは、建物自体に大きなダメージを与える構造上の欠陥のことです。例えば、耐震性に影響しやすい基礎や土台、柱、壁などで、他には屋根や外壁など雨漏りにつながる箇所なども対象となります。「瑕疵保険」の加入料金は6〜7万円程度が相場で、料金の中には建物の検査料も含まれています。実際に瑕疵の対象となる条件や料金は商品ごとに異なるため確認しておきましょう。
2.新築/リフォーム住宅を対象とする瑕疵保険
前述したように、新築物件には「瑕疵担保」がはじめから付帯しています。これは住宅瑕疵担保履行法によって住宅事業者に保険の加入が義務づけられているためです。中古住宅やリフォームにおいても、万が一不具合が発生したときに活用できる「瑕疵保険制度」が2010年より開始されました。「瑕疵保険」の付保は任意ですが、一戸建て住宅だけでなくマンションも対象となっており、中古で建物を購入する際は瑕疵保険が付保されているか確認しましょう。リフォームにおいては、リフォーム会社が倒産した場合でも施主に直接支払われるため安心です。
3.瑕疵保険のメリットと付保されない時のリスク
瑕疵保険のメリット
中古住宅は、築年数に応じてさまざまな箇所の傷みが出やすくなります。実際には使われている素材や構造、前の所有者の使い方などで左右されますが、新築時に比べれば不具合は増えてきます。特に構造部分など見えない箇所の不具合は内覧ではなかなか発見できません。中古住宅を購入してから何らかの不具合が発見されるケースは多いといえます。「瑕疵保険」が付保されていれば、万が一建物に隠れた不具合が見つかったときでも保険の契約者(宅建業者や検査業者)に請求すれば、瑕疵保険の保険金で改修できるのがメリットです。
「瑕疵保険」は事前に建物の検査を受けておき、その後で保証金額と保証期間が選ばれます。あらかじめ建物の状況を把握している物件を購入できるのはメリットといえるでしょう。さらに、「瑕疵保険」が付保されていれば、通常より長く住宅ローン控除の対象になるのもメリットの一つです。通常、住宅ローン控除は鉄骨造マンションなどの耐火建築物の場合で築25年以内、木造と軽量鉄骨造なら築20年以内のものしか対象になりませんが、瑕疵保険が2年以内に締結されている場合は、築年数に関わらず住宅ローン控除の対象となります。
瑕疵保険が付保されないことで想定されるリスク
「瑕疵保険」が付保されていないと、建物が引き渡された後に何らかの不具合が見つかってもすべて自己負担で改修するしかありません。不動産会社が独自の「瑕疵保証」などを設定していなければ、すべて自費でまかなう可能性は高いといえます。瑕疵の状態によっては費用が予想以上にふくらむこともあり、金額によっては金融機関から融資を受けなければならなくなる人も出てくるでしょう。また、売主にかけあったところで、建物の改修に応じてくれないのが一般的です。
瑕疵保険が付保されることのデメリット
瑕疵保険が付保されるためには、建物の検査が必要になります。通常、中古物件の価格が安いのは、隠れた不具合や瑕疵があるという前提で売買されるからです。検査によって建物の状態が明らかになることで、価格が高くなってしまう可能性があるのです。
4.「インスペクション」とは?
中古住宅の状態を調査する方法の一つに「インスペクション」があります。「インスペクション」を依頼すると、建物の劣化した部分や不具合などを調べ、補修が必要な箇所や工事を行う時期などを客観的に判断してくれます。「インスペクション」は、建築士など建物の設計や施工の専門知識を持つ人しか行うことはできません。建物の調査は目視で行うのが一般的ですが、特殊な機材を使用するケースもあります。
中古住宅を売買するうえでは、見つかった不具合を売主と買主で共有することができます。買主側にとっては、将来的なリフォームについて具体的に検討したり、そのための資金準備をしたりする時などに役立ちます。「インスペクション」は、建物の見えない部分を専門家が調査してくれるという点では安心できますが、資料として受け取るだけに過ぎません。「瑕疵保険」の加入についてはあらかじめ「インスペクション」を受けることが条件ですが、結果に対して保証や保険がつくわけではないため注意しましょう。ただし、必要な補修を行わなければ、保険をつけることはできません。
5.保証の対象は必ずチェック!
「瑕疵保険」が付保されていれば、中古住宅の隠れた不具合を修繕するための保険金が支給されるため、安心感があります。ただし、メリットが多いだけに失敗のないよう事前にきちんとチェックしておく必要があります。まず、もっとも注意しておきたいのは、「瑕疵保険」が付保されるタイミングです。住宅ローン減税の対象となるのが「瑕疵保険」のメリットですが、住宅ローン減税を受けるには建物の引き渡し前に付保されている必要があります。所有権が売主から買主へ移動した後は対象外なので注意しましょう。
ただし最近は、買主が瑕疵保険の付保を依頼すれば、購入前の検査が不合格であっても、購入後に改修することを条件に、瑕疵保険が付保できるという仕組みもあります。この場合には住宅ローン減税の対象になるので、検討してみましょう。
また保証の対象についても十分な確認が必要です。前述したように「瑕疵保険」は建物の不具合やトラブルであればすべて対象になるわけではありません。建物に重大な影響を与えかねない箇所の隠れた不具合が対象です。雨水の侵入を防止する箇所や構造耐力上で問題になる箇所に限定されており、例えばシロアリなどの被害は特約がなければ除外されます。ただし、商品によって対象範囲に細かい違いがあるため、必ずチェックしておくことが重要です。
瑕疵保険で安心して住宅を購入できる
中古住宅は新築よりも手頃な費用で購入できるというメリットがあります。しかし、その反面で経年劣化など不具合が起こりやすいという問題も出てきます。購入後に何らかのトラブルが発生すれば改修が必要になり、規模によっては費用が大きくなるかもしれません。そのような心配は「瑕疵保険」で回避できます。万が一の不具合に備えておける「瑕疵保険」の付保された物件を検討してはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール
- 青野 泰弘
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ファイナンシャルプランナー・行政書士
1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。