【専門家執筆】2018年のマンション市場動向について
2019年の10月に実施される消費税増税や、2020年に開催される東京オリンピックなど、2019年から2020年にかけて、不動産市況に影響を与える要素は少なくありません。その中で、マンション市場の動向はどうなのでしょうか。
2019年の不動産市況はミニバブルとも言われていますが、2018年のマンション市場はどういった内容だったのか、過去5年来の状況と比較しながら見ていきたいと思います。
そして、過去の市場動向を踏まえて、2019年のマンション市場について考えてみましょう。
首都圏のマンション市場動向
不動産経済研究所の「2018年の全国マンション市場動向」によると、この1年で販売された民間マンションは8万256戸で前年に比べて3.7%増、中でも、首都圏では約3万7千戸あまりで前年比3.4%増という数値です。
発売戸数は2年連続で増加したものの、3年連続3万戸台で、4,5年前の4万戸以上の数値にはならず、数値的には伸び悩みの感があります。
特に、東京都区部、都下、神奈川県での発売戸数は対前年比ではマイナスとなっており、価格的には高値感が強く、供給数が減少する傾向が見られます。
また、2018年の価格動向では、東京都区部の平均価格が7,142万円、都下では平均価格が5,235万円となっています。都内の動向は、昨年と比較すると上昇ペースでは鈍化していますが、未だに価格上昇が続いています。
次に、中古マンションの市場を見てみます。鈍化しているものの上昇が続いている新築のマンション価格に連られて、中古マンションの成約価格も上昇傾向が続いています。
例えば、(公財)東日本不動産流通機構による2018年6月における首都圏の中古マンション成約件数は前年同月比よりややダウンの0.5%ダウン、成約価格は前年同月比でプラス5%となっています。
また、成約価格は3,320万円で前年同月比のプラス5%の上昇で推移しています。
上記から、マンション価格の動向を見ると新築・中古に限らず上昇傾向が続いていることが分かります。また、新築に関しては高値感が強く、一般のサラリーマンでは手が届かない現状です。
そのため、中古への購入意欲が強くなり、結果的に中古マンション市場における価格が上昇しているという状況です。
参考:不動産経済研究所「全国マンション市場動向2018」
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/363/z2018.pdf
参考:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/358/s2018.pdf
参考:公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2018年6月度」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_201806_summary.pdf
過去5年間のマンション市場動向
首都圏のマンション市場を過去5年間で遡ってみると、2013年には前年比23.8%増という年もありましたが、2014年から2016年までの間は対前年比マイナスが続いています。
その後の2017年、18年はややプラスの伸び率になったものの、供給戸数は減少傾向にあります。
これに対して、首都圏のマンション価格の推移は2013年以降、ほぼ毎年上昇しています。
ここ5年では2017年がピークでしたが、翌18年には若干ながら価格は下がっております。
ただ、東京都区部は高値止まり、都下は値上がり傾向となっており、首都圏の中でも東京都内だけは価格上昇が続いている状況です。
こうして見ると、首都圏のマンション市場は供給数が減っているにも関わらず価格的には上昇傾向にあるエリアが存在しております。
また、マンション業界の好調を示す新規物件の契約率は、昨年の12月では50%を割り込んでいたり、完成在庫の戸数も増加傾向にあったりするのを見ると、今後のマンション市場は厳しい局面も出て来る可能性があります。
今後の見通し
2019年の10月には消費増税の実施が予定されていますが、その影響でマンション価格がやや落ち込む可能性があり、2020年に入ってから消費税増税の影響が強まるのではないかと言われています。
また、先ほども述べたように、ここ1,2年の傾向として、都内の新築マンションは価格が高すぎて一般のサラリーマンでは手の届かない価格になっています。その反動で、埼玉県や千葉県といった都心部周辺の需要が高まり、新築マンションの供給が2桁を超える勢いです。
併せて、都心では値ごろ感のある中古マンションが引き続き需要があると言えます。
中古マンションの取引の中で、個人間の売買であれば消費税は課税対象外となります。増税後、新築マンションよりも中古マンションのほうが割安と感じられるでしょう。
したがって、築浅の中古物件や人気エリアの物件は、条件次第では取引が活発になるケースもあるでしょう。
また、現状では都心の新築マンションは高値の価格が続いており、このまま高値が続けば需要が減少する可能性があります。
現に完成在庫が増えている傾向はこういったマンション市場を反映したものと言えるでしょう。
その結果、価格を下げてでも完成在庫を減らすという傾向になりつつあります。
特に、東京オリンピックの選手村は、その利用後にマンションとして販売する価格も概ね出始めてしまっています。そのため、選手村予定地の近辺にある豊洲や東雲などの湾岸エリアでは、今後、大幅な価格下落も考えられ、価格動向には注意が必要でしょう。
まとめ
今まで見てきたように、首都圏のマンション市場は好調とも言えますが、価格的には既にピークを過ぎており、いつ反落してもおかしくない状況です。
こうした背景から、マンションを売りたいと思っている人にとっては、高値で売却する時期としてはいい時期ですが、買いたいと思っている人にとっては、価格的に下がるかどうかを見極める時期でしょう。
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