【専門家執筆】寒いマンションと暖かいマンションの見極め方
暖かいマンションを選ぶとき、まず思い浮かぶのは日当たりの良さではないでしょうか。しかし、建物の性能に差が出てきた現在では、ほかにもっと重要なポイントがあるのです。それは「断熱性能」ですが、実際に寒いマンションか暖かいマンションかは見た目ではなかなか判断が難しいですね。ではどのように見極めれば良いのでしょうか。
断熱方法や断熱材の種類、厚さ、施工箇所をチェック
マンション全体の断熱性能については、「外気に面した部分の断熱方法がどんな仕様となっているか」をまず確認しましょう。外気に面した部分とは次の部位となります。
・外壁
・屋根
・1階床とガレージや外部の通路上にある住居の床など
・窓や玄関ドア
外壁は北海道などの寒冷地を除いて、一般的なマンションでは鉄筋コンクリートの内側から断熱施工されていて、その上に石膏ボードを張り付けてクロスなどの内装仕上げをしています。
屋根は外壁と同じ方法か、鉄筋コンクリート屋根の上(外側)に断熱材を敷く、または両方のいずれかです。1階床とガレージや通路上にある住居の床でも、屋根と同じように鉄筋コンクリートの内外で断熱材を施工しています。いずれの場合も住居内部から熱が逃げないように、そして外から熱が伝わりにくくするのが目的です。
次に、窓と玄関ドアの断熱性能です。窓や玄関ドアは外壁に比べて厚さも薄く部材の性質上、熱が内部から逃げやすく、外から入りやすい部分と言えるのです。
断熱材がどこに施工され、仕様がどの程度であるのか、そして窓や玄関ドアの断熱性能がどの程度かで暖かいマンションかどうかが決まってきます。次にチェックすべきポイントを挙げてみましょう。
ポイント1:住宅性能表示制度をチェック
少し堅苦しいのですが、住宅性能表示制度の説明をします。これは住宅の品質確保の推進などに関する法律(品確法)に基づく制度で、2000年4月1日に施行されました。消費者が安心して質の良い住宅を購入できるためにつくられた制度です。同時に瑕疵担保責任期間(施工業者が漏水と基本構造部分の責任を持つ期間)を10年とすることのほか、トラブルをなるべく早く容易に解決する処理機関の整備もされました。住宅性能表示制度では、設計段階と建設段階で審査が有り、10の基準(※)をクリアしているかチェックされます。その中の1つに温熱環境があります。これは省エネルギーがどれだけなされているか、という基準であって同時に建物の断熱性能と言い換えても良いでしょう。
断熱材の種類や厚さ、施工箇所ではなかなか判断が難しいと思われますので、こちらの制度の中で温熱環境が等級4をクリアしていることが目安となります。
(※)構造の安定、音環境、光・視環境、温熱環境、空気環境、火災時の安全、劣化の軽減、維持管理・更新への配慮、防犯、高齢者などへの配慮 以上10項目
参考:国土交通省「住宅表示制度」
http://www.mlit.go.jp/common/000129267.pdf#search=%27住宅性能表示制度%27
ポイント2:窓のガラス板をチェック
窓の大きさや方位にもよりますが、窓は断熱上のウィークポイントです。それゆえにガラス板により断熱性が左右されます。なるべくペアガラス(二重ガラス)が好ましいのですが、中古マンションなどでシングル(一重)ガラスであっても、室内側に内窓を追加するなどの対策を立てる事が出来ます。ペアガラスや二重窓にすることで結露を減らすことにも役立ちます。
ポイント3:内断熱マンションと外断熱マンションをチェック
断熱の方法は内断熱と外断熱があります。内断熱とは鉄筋コンクリートの内側に断熱材を施工する方法で、発泡性のあるウレタンを吹き付けることが多く、一般的なマンションはこの内断熱を採用してきました。一方外断熱は鉄筋コンクリートの外側に断熱材を施工する方法で、欧米や北海道などの寒冷地では多く採用されてきましたが、最近では温熱環境のメリットから寒冷地以外でも多くなってきました。
鉄筋コンクリートは暖まりにくく冷めにくいという性質がありますので、夏に一度熱を溜めてしまうと冷房が効きにくく、反対に冬は暖房しても直ぐに暖まりにくいのがその理由です。それで外部の熱による影響を受けにくい外断熱工法が有利と言われています。外断熱であるかどうかも暖かいマンションを探すポイントの1つとなるでしょう。
まとめ
以上いくつか挙げましたが、ほかには住居が建物のどの位置にあるか、というポイントもあり、上下左右が住居に囲まれた位置が温熱上有利と言われています。これは外気に面した壁が少ないということと、鉄筋コンクリートの性質によるものです。
住まいを選ぶときには日当たりが注目されがちですが、今回ご紹介したポイントも参考にしていただき、暖かいマンションを見極めましょう。外見や間取りのほかにマンションの判断基準としてください。