【専門家執筆】地鎮祭の当日の流れと準備、知っておくべきマナー
建物を新築する際に執り行われる地鎮祭。最近は建売り住宅や中古住宅の流通も多いため、あまり見かけない光景になりつつあります。住まい手とつくり手が一同に建設地に集まる機会はそう多くないので、この機会を活用して、建物の配置を確認する「地縄確認」や近隣住民への「挨拶まわり」などをすることもあるため、その意義が分かりにくくなっていますが、そもそも地鎮祭とはどんなものなのかご紹介していきます。
地鎮祭とは
土地の神様を祭り、その土地に建築することの許しを得て、工事の無事を祈願するとともに、建物の繁盛を祈願するものです。
準備するもの
大規模な工事の場合には紅白幕など大掛かりな用意をしなければなりませんが、戸建住宅の地鎮祭の儀式に使われる祭壇や飾り、榊、砂、縄など、ほとんどは神職が用意してくれます。本来なら施主と施工会社で用意すべきお供え物ですが、海の幸、山の幸、野の幸まで神職が持ってきてくれる場合もあります。施主が用意するのは米、塩、水を各1合(180cc)ずつ、施工者が酒1升を準備するのが一般的です。どこまでを誰が用意するかは明確に決まっていないため、事前に相談し確認しましょう。
地鎮祭の流れ
儀式を執り行うにあたり、神棚に向かって右側に施主と家族、左側に施工会社、設計者といった工事関係者が並びます。大規模な工事の場合には椅子が用意されますが、戸建住宅では一般的に立ったまま執り行われます。
1.跋(しゅうばつ)の儀: 神職がお祓いをして祭壇、土地、参列者を浄めます。参列者は頭を下げてお祓いを受けます。
2.降神の儀: 神様を祭壇にお迎えします。
3.献饌(けんせん): 神様にお供え物を差し上げます。
4.祝詞奏上(のりとそうじょう): 神職が祈りの言葉を読み上げます。
5.切麻教米(きりぬささんまい): 神職が土地を浄めるために紙を撒きます。
6.地鎮の儀: 青竹や笹の挿してある砂山をその土地に見立て、設計者、施主、施工会社の3者でならし、神職が「鎮め物」をするまでを儀式にしたものです。まず、「刈り初め」で設計者が鎌を持ち、笹を刈ります。次に「穿ち初め」で施主が鋤で砂をならし、最後に「土均」で施工者が鍬で砂をならします。それぞれが「えい、えい、えい」とかけ声をかけながら行います。その後に神職が鎮め物を砂の中に納めます。この鎮め物は地鎮祭のあと、施工者に手渡し、工事の適当な時期に地中に納めてもらいます。神棚の下、あるいは建物の中心の位置の地面に納めるのが一般的です。
7.玉串奉奠(たまぐしそうじょう): ヌサと言われる紙のついた榊(さかき)の小枝を神様にお供えします。施主、家族、設計者、施工者、の順に参列者全員が1人ずつお供えしていきます。自分の番が来たら、玉串を手に、祭壇に一歩進みでて一礼します。根元を自分に向けて持ち、額に近づけて祈念します。玉串を時計回りにして根元を祭壇に向けてお納めします。一歩下がって二礼二拍手一礼して次の人と交代します。
8.撤饌(てっせん): お供え物を下げます。
9.昇神の儀: 神様にお帰りいただきます。
10.直会(なおらい)の儀: お神酒を盃やコップに注ぎ参列者全員で頂きます。
地鎮祭が終わると、お供えしていた塩、酒、米は土地の四方の土の上に撒きます。海の幸、山の幸などは施主が頂いて帰ります。
マナー
「服装」
規模が大きな建物ではスーツなどの正装が望ましいとされていますが、個人住宅の場合にはあまりかしこまらなくても大丈夫です。服装は気持ちの表れでもありますが、地鎮祭は屋外の土の上で、夏ならば炎天下の元、冬ならば吹きさらしの風の中で執り行われます。まずは体調を崩さないよう気候にあわせた無理のない服装で参列しましょう。
「挨拶まわり」
冒頭でも書きましたが、挨拶まわりは地鎮祭のあとに必ずするべきものではありません。施工者であれば工事着工の前に、施主であれば入居の直前に挨拶できれば大丈夫ですが、遠方などで何度も現地に足を運ぶ機会が取れない場合には地鎮祭後がちょうど良いタイミングなのです。「工事期間」と「施工者の連絡先」などを書いた紙と一緒にタオルや菓子などを渡すことで、工事中のクレームが大きくなるのを防ぎ、入居後の近隣関係も感じよくスタートが切れるというものです。
「御礼」
神職への御礼として初穂料を支払います。のしには「御初穂料」「御玉串料」などと書きます。個人住宅の相場は2〜5万円です。神職が自分の車などで来る場合に別途「お車代」として5千円〜1万円を渡すこともあります。
まとめ
地鎮祭というと、なんだか着工前のお祭りのようですが、本来は家を建てることに怪我や問題がつきものだけれども、神様にお許しいただくことで少しでも安心・安全を得ようというおごそかな儀式です。施主、設計者、工事関係者が一同に建設地に集まる機会はそう多くありません。これから始まる工事の期間中お互いが心を合わせて取り組めるよう、気持ちよく式にのぞみたいものです。
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