【専門家執筆】電気自動車に必要な設備とその費用は?
このところ急激に増加しつつある電気自動車(EV)。EUでは今後、すべての自動車を電気自動車にする意向が発表され、地球温暖化防止や環境汚染防止、さらにはエネルギー多様化により電気自動車には大きな役割が見込まれています。例えば、中国の深圳市には電気自動車のメーカーであるBYDがあります。そこではなんと、公共バスのほとんどが電気自動車、タクシーも約63%が電気自動車であり、当然ながら充電ポストも充実しています。そんな深圳市では、2020年までには公共タクシーがすべてEV(電気自動車)化になるとのことで、世界でも電気自動車の導入率は最大規模の都市と言われています。日本でも電気自動車の普及は進んでおり、公共の充電スポットは10,000箇所以上あります
(参照:GoGoEV|http://ev.gogo.gs/)
しかしながら、充電は時間がかかるため、やはり自宅に充電設備があるといいですよね。将来の電気自動車の普及を見込んで、これからの住まいには電気自動車の充電設備が必要となるでしょう。ここでは自宅に充電設備を設ける場合をみていきましょう。
一戸建ての場合
まず、一戸建ての場合をみてみましょう。電気自動車への充電は充電電流が大きいため、既存の幹線および分電盤の変更が必要になります。既存の住まいに充電設備を設置する場合の施工方法として、代表的なものを挙げると次のようになります。
1.既存分電盤の分岐回路として増設する
2.既存分電盤の手前に回路増設して家の中にコンセント設置する
3.既存分電盤の手前に回路増設して家の外にコンセント設置する
それぞれの施工方法は家屋の状況に異なるので、電気工事業者に相談する必要があります。標準的な工事費用としてはおおむね6万円程度で、ブレーカーの増設や幹線の引き込みし直しの工事があると追加費用がかかります。また、ケーブル付きの普通充電器を設置した場合では、20万円以上の施工費がかかります。
充電設備の設置条件としては、20A以上の配線があること、専用のブレーカー容量は20A以上で専用回路とすることなどがあります。充電時には単相AC200Vで15Aの電力(消費電力3,000W)を長時間(4時間~8時間程度)にわたり使用しますので、必要な電力量を考慮して契約アンペア数の見直しや主幹ブレーカーの容量を確認する必要があります。
加えて、一戸建てに充電設備を整備すると、災害時の非常用電源として活用できます。例えば、電気自動車の駆動用バッテリーから電力を取り出して家庭用の電源として利用することが可能であり、停電になった際でも大型家電が利用でき、フル充電の場合であれば約1日は普段の生活が可能と言われています。
電気自動車の車種によっても充電などの条件等が異なりますので、自動車メーカーと電力会社にはよく確認しましょう。
マンションの場合
次にマンションの場合をみていきましょう。マンションの場合には、分譲のタイプと賃貸専用のタイプがあります。一戸建てのように住民が単独で施工できるものではないので、手続き等に面倒な点があります。
分譲の場合ではマンションの理事会に要望し、管理組合での決議が必要です。その際には施工費用の負担や充電器の利用時の費用なども議論しなくてはいけません。
したがって、マンションそれぞれの区分オーナーがこうした施工や費用負担の条件を承諾しないと実現が難しいと思われます。また、賃貸マンションの場合では、入居者がマンションのオーナーに要望する必要があります。
設置の費用負担は全額オーナー負担になるので、こちらも難しい可能性があります。いずれも、既存のマンションでは設置には難しい問題がありますが、マンション建設の当初から利用時の費用負担も含めた設置計画をしておけば、将来的には価値のあるマンションの1つになりますね。
まとめ
ここまで電気自動車に必要な設備などを見てきました。今後の普及が見込まれる電気自動車ですが、充電設備の普及が進めば急速に増加する可能性があります。そうなった際には、充電可能な住まいがあるといいですね。国を挙げて地球温暖化防止と環境汚染防止、さらには脱石油社会や低酸素社会の実現に一役買うための電気自動車ですから、一層の普及と充実感が近い時代となりそうです。
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