【専門家執筆】長持ちする家を建てるためのポイント
地震の多い日本で、耐震性を確保し、CO2排出削減に配慮した省エネルギーな家、住んでからのメンテナンスについても設計、考慮された家を造り、きちんと手入れしながら大切に長く住まう(使う)家づくりを国が進めています。長持ちする家を建てれば、一世代あたりの住宅費負担も軽減しますし、省エネルギーな家造りは光熱費の削減にもつながり、家計にもやさしい家造りとなります。一定の基準を満たし、長期優良住宅認定がなされると、税制優遇や住宅ローン(フラット35S等)金利優遇措置等も受けられます。いつまでも安心で快適に、尚かつ経済的な住まい造り、住まい選びをするために、頭に入れておきたいポイントをご説明します。
家の寿命を長くするための「長期優良住宅」という制度とは
平成20年12月に公布され、平成21年6月4日に施行された、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく、長期優良住宅認定制度です。長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅のことを長期優良住宅といいます。
家を建築する際、住まいの通信簿といえる日本住宅性能評価基準10分野35項目の中から、家(一戸建ての住宅)を長持ちさせるための必須項目というべき(劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、省エネルギー性、※バリアフリー性、※可変性)をピックアップし、それらの基準について必要等級をクリアし、さらに居住環境、住戸面積の必要事項を満たした新築住宅に対し、認定がなされる国が定めた制度です。認定を受けると、住宅ローンフラット35S等、金利の引き下げ等を受けることが可能になり、税の特例措置(所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税等軽減)を受けられます。
さらに、長期優良住宅認定申請時に、家を建ててからの維持保全計画(30年以上、10年以内ごとに)も立てる必要があります。維持保全計画とは、住まいの建築時から将来を見据えて、定期的な点検、補修等に関する計画を立てることです。
※長期優良住宅認定取得にあたり、バリアフリー性、可変性については、一戸建て住宅については必須項目ではありません。
※長期優良住宅認定制度については、増築・改築版もあります。
●国土交通省 長期優良住宅
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000006.html
住宅履歴情報「いえかるて」を使ってメンテナンスしよう
家を長く持たせるには、維持保全が大切であり、定期的な点検、補修を行ってゆくことが必要です。その際に必要になるのが、家を建てた時にハウスメーカーやビルダー、あるいは設計事務所等が作成した図面や仕様書です。図面や仕様書等も家を使い続けるのと同じ期間、長期に保管してゆかねば、適切なメンテナンスができません。具体的には、建築確認申請書類(長期優良住宅認定を受けた場合はその書類、図面も)、工事関係書類(家を建築するのに使用した図面や仕様書、途中の変更が反映されたもの)、瑕疵保険関係(住宅瑕疵担保責任保険契約付保証明書など)、維持管理計画(家の計画的な維持管理に役立つ、点検や修繕の時期および内容の目安となる情報が記載された書類)、点検・診断の調査書等(家が完成してから定期的に受けた点検や診断・調査時に作成された書類、写真、図面等)、リフォーム等の改修をしたならばその書類(リフォーム・改修工事を行った時に作成される書類、写真、図面等)を指し、これらをまとめて、住宅履歴情報と呼んでいます。
病院で記録、保管されている個人の身体についてのカルテのように、個々の家についても皆違うので、リフォームは補修など、その記録を残しておかないと、次のリフォームや点検の時に適切な対応ができなくなります。
これらの住宅履歴情報は、基本的には、住宅取得者が蓄積、活用していくものですが、図面など紙で長く保管するとなると、途中で劣化して紙が破れたり、文字などが薄くなり読めなくなったり、または、紛失してしまうということも考えられます。住宅履歴情報管理システムとは、そのような心配を払拭するサービスで、任意で有料ですが、図面や書類を、データ化保管し、インターネットを介して、必要な時に図面等を取り出したり、調査やリフォーム等の変更事項を蓄積できたりするサービスです。施工業者と共有も可能です。
自らがその家に住まなくなった時、例えば売却するようなことがあったら、その家の住宅履歴情報「いえかるて」があると、買い手も安心しますし、建物価値について適正な評価を得られます。住まいの情報を次の住まい手にきちんと引き継ぐことができ、中古住宅(既存住宅)流通の促進にもつながります。
●国土交通省 住宅履歴情報とは
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000001.html
「スケルトン・インフィル」でリフォームしやすく
家を新築しても、子供が成長し、巣立ち、夫婦2人だけになる等、ライフステージが変わり生活スタイルも変化すると、いつまでも同じ間取りでは、使い難いということが起きます。そして再び、子供が孫を連れて戻ってきて、二世帯同居になるかもしれません。
雨漏りもせず、構造骨組みはまだしっかりしているのに使い難い、家が長持ちすると、そのような問題にも直面するでしょう。
スケルトンとは、柱、梁等の構造躯体という意味で、建物の骨組みのことです。インフィルとは、建物の内部を構成する内装や設備のことを指します。家の構造躯体は、一定の耐震性能を確保しながらも、内部の間仕切りや設備が自由に変えられる家のことを、スケルトン・インフィル住宅と呼びます。長期優良住宅認定制度では、可変性と呼ばれており、一戸建ての住宅では認定を受けるための必須項目にはなっておりませんが、長持ちする家では、2世代、3世代に渡って家を使うことができますので、将来、間取りを自由に変えられるような家造りをしておくと、理想的でしょう。幾世代にも渡り、家を使うことができれば、一世代あたりの住宅費負担も軽減することになります。
まとめ
長持ちする家を建てるには、建築時にしっかり造ればいいというだけでなく、メンテナンスも含めて、将来のことも視野に入れて家を作ることが大切です。また、家を長持ちさせるためには、どのような施工方法がよいのか、何が大切なのか、素人には、判断が難しいものです。いつまでも、安心で快適に住まうための基準や制度を理解し、是非利用しましょう。
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