あなたの家は大丈夫?これだけは知っておきたい耐震性能
地震大国である我が国では、いつどのエリアで大地震が起きてしまっても不思議ではありません。いざという時のために住まいが準備すべきことはどんなことなのでしょうか?災害から生命と資産を守るためには、建物の耐震性能を高めることが必要です。今回は、耐震について知っておきたい基礎知識をご説明します。
耐震構造、免震構造、制震構造の違いとは
【耐震構造】建築基準法では、地震によって建物が倒壊しない為の最低の基準が定められています。建築基準法は過去に発生した地震を参考にして建物の構造別に、揺れに対して踏ん張って耐える工法が示されています。これが一般に云われる耐震構造です。言い換えると建築基準法を遵守している建物は全て耐震構造であり、取り立てて特別な構造という訳ではありません。
【制震構造】地震によって建物が変形した場合、建物はダメージを受けます。建物は揺れが収まれば元に戻る復元力を持っていますが、一定限界を超えた力が加わると元には戻らなくなり、それよりも大きな力が加わると倒壊に至ります。一定限界を超えた時点で、建物の動きにブレーキを掛けてそれ以上建物が変形しないように、サスペンションの役目を果たす装置を耐震構造に付加した構造が制震構造です。
【免震構造】耐震構造・制震構造は地震に対して踏ん張る構造ですが、免震構造は地震の力を建物に伝えない構造です。基礎と上部構造部との間に免震装置を設け、基礎は地震と同じ様に揺れても免震装置より上の上部構造まで地震力が伝わらないようにする構造です。免震構造には、ゴム免震・滑り免震・転がり免震の種類があり上部構造部の構造の違いにより使い分けされます。
耐震等級とは
平成12年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の、住宅性能表示制度と言う制度の中に耐震等級は規定されています。住宅性能表示制度は建築基準法と異なり最低の基準を定めるのではなく、性能を等級分けしてグレードごとに表現する事を目指した制度です。数値で表現できる9項目の性能の中に耐震等級があります。その事により一般の消費者は住宅の性能を等級で表現するだけで希望の性能を施工者に伝える事が出来る様になりました。単に「地震に強い家」と云うのではなく、耐震等級3の家が欲しいと言えば、それだけで耐震等級3の家を手に入れる事が出来る様になりました。注文住宅に限らず分譲住宅を購入する際にも買う前に、その住宅の耐震等級が幾つであるかを購入の判断材料に出来るようになりました。耐震等級には1・2・3の区分けがあり、耐震等級1は建築基準法同等程度、耐震等級2は建築基準法の1.25倍の強度、耐震等級3は建築基準法の1.5倍の強度を持つとされています。また耐震等級は設計者や施工者が勝手に等級を決める事は出来ません。第三者機関の評価を受ける事により第三者機関が等級を決定するのです。
耐震等級が高ければ安全?
同じ間取り、同じ外観、同じ地盤条件の家が並んで建っていて、一方が耐震等級1でもう一方が耐震等級3の家であったとすると、耐震等級3の家が安全な家であるという事が出来ます。但し実際の地震ではその様な同一条件の元で地震が発生している訳ではありません。平成28年4月に発生した熊本地震では、耐震等級1の家が倒壊を免れたにも関わらず、耐震等級2の家が倒壊して大きな話題となり混乱を招きました。これは建物の形状や地盤条件が異なる事に起因します。それでも、耐震等級の高等級を取得しようと思えば、建築基準法では規定されない様々な構造的評価を受けなければならず、その評価を受ける事によりより客観的に構造の優位性が証明されるのですから、経験や直感に頼るよりも安全性が高いと言えます。
耐震性能が高い住宅の特徴、見分け方は?
耐震性能は地盤の強度に大きく左右されます。新築する際は地盤調査を行い建物の重量に耐えられる地盤であるか確認しましょう。中古住宅など既に建っている不動産の場合は、周辺の状況や建物の基礎周りに構造に起因するひび割れなどが無いか専門家に見てもらいアドバイスを受けましょう。
建物の形状によっても耐震性能は大きく変化します。平面形状がL型や凸型凹方の家は、建物の部位により揺れ方が大きく変化しますので正方形の家に比べ地震に弱いです。立面的に二階の壁が一階の壁の上に乗っていない家も構造的に不安定です。一階に大きなリビングがあったり、一階の壁量が少なかったりする家も危険です。外観で北面と南面又は東面と西面を比較して壁の量が極端に異なれば、地震で家が揺れた際に歪な揺れ方をしてしまい危険です。
まとめ
性能的には免震構造・制震構造・耐震構造の順で地震に強い家と云えますが、それに比例して費用も高くついてしまいます。耐震構造でも、耐震等級の高等級を目指せば地震に強い家を造る事は可能です。高等級を目指せばこれも費用が高くなるのではと思いがちですが特別な費用を掛けなくても、平面的に正方形に近く、一階と二階の壁が重なっていて、一階の壁量が多く、壁量のバランスが取れていれば耐震性能は向上します。間取りを決める際は構造の専門家のアドバイスを受ける様にしましょう。