地震保険によくある間違いをFP(ファイナンシャルプランナー)が解説!
地震保険は補償に対して保険料が高い?
地震保険の保険料は火災保険のそれに比べると割高感は拭えません。特に、マンションの火災保険の保険料はお安いですから。しかし、実際に地震発生と火災発生した場合の損害の大きさを想像してみてください。(なお、「地震が原因で発生した火災」は火災保険では補償されず、地震保険で補償されることになります)。火災保険に比べると、地震保険が高い理由がお分かりいただけると思います。
火災保険の保険料は「保険会社ごとに異なる」のに対し、地震保険の保険料は「保険会社による違いは無し」です。地震保険は地震保険法という法律に基づいた保険ですし、地震再保険制度と言って政府が(平成28年10月19日改定)11兆1,178億円もの予算を取っています(地震保険法第3条)。地震保険を販売している損害保険会社も「ノーロス・ノープロフィット」と言って、地震保険を販売しても損害保険会社の利益には繋がらない仕組みです(地震保険法第5条)。
地震保険は、「建物の実損害に対する補償」というよりも「生活再建」という側面が強く、保険金の支払い時の「損害の査定」も火災保険のそれに比べ、簡略化されています。そのため、大地震が起きた時には「もらやすい」一面もあります。
分譲マンションで地震保険は必要?
もちろん、入っておいた方が良いでしょう。分譲マンションの場合は、専有部分は所有者が、共有部分はマンション管理組合等が契約することになります。また、専有部分の中でも建物と家財(家具)は別々の契約になり、地震発生時の査定も別に行います。マンションの場合、「建物は地震による影響が無くても、家具は地震による損失があった」という話が東日本大震災の時にありました。そういった話もありますので、建物と家財両方地震保険に加入しておくことをおすすめします。免震建築や耐震等級3の建物は、地震保険の保険料が50%割引になります。
建物だけの地震保険に入っていれば安心?
先述した通り、地震保険は建物と家財の両方契約した方が安心です。そもそも、地震保険は火災保険の保険金額の半分までしか契約できません。もし、火災保険の保険金額が「建物の評価額」と同額だとしたら、地震保険は「建物の評価額の半分」の契約となります。また、地震保険の保険金には建物5,000万円、家財1,000万円という上限もありますので、建物の保険金額を少しでもカバーする、という意味も込めて、建物と家財両方を契約することをおすすめします。
地震保険の傾向として、建物に比べて家財の方がもらいやすいようです。東日本大震災や熊本地震では、家財の保険金請求に(査定を省略した)自己申告が認められるケースがありました。同じく、東日本大震災の時に、筆者の家の家財を査定に来た担当者は「普段は九州で、自動車事故の査定をやっています」という方でした。ここまでご覧いただくと、「じゃあ、逆に家財だけ、地震保険を掛けようかしら?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、先述の通り、家財の地震保険は上限が1,000万円までですので、家財だけですと保険金額が少額になってしまいますので注意が必要です。
巨大地震が起きて保険会社が潰れたら?
「巨大地震が起きたら、地震保険の保険金支払いで保険会社が潰れるのでは?」と、よく聞きます。まず、あり得ません。
地震保険は再保険制度と併せ11兆3,000億円の予算があります。この金額は大正12年に発生した関東大震災と同じ損失が生じても、地震保険の保険金が支払えるように計算された数字です。もし、この予算を超えるような保険金請求があった場合には、按分して保険金の一部をカットします(地震保険法第4条)。
地震保険の契約は保険会社によってバラつきがあります。それを、保険金支払いが一部の保険会社だけに偏らないよう、日本地震再保険という特別な会社が会社ごとに均等になるよう分散します。そのためのノーロス・ノープロフィットなのです。
このように、保険金の支払いがあっても倒産しない仕組みがありますが、それでも保険会社が破たんした場合、保険契約者保護機構が地震保険の保険金を保証しています。
地震保険金額が火災保険金額と同等分もらうことができる
先述のように、地震保険は火災保険の保険金の半分まで、かつ建物5,000万円、家財1,000万円という上限があるため、火災保険金額と同等の受取はできません。一部の保険会社では、「地震保険の上乗せ特約」的な商品を販売しており、その特約を契約すれば火災保険保険金額と同等の地震保険金額を受け取ることができるようになっています。